WILD CAT



今まで、野良猫や、捨て猫のような生き方をしてきたあたしの人生が180度変わったのは きっと、このときから。



いつのまにか知らない間に また住む家が変わり
見たことのない美味しそうな御飯を初めて食べて
いつか憧れた綺麗な服を当たり前のように着て
周りの人間環境がガラっと変わって


けれど、心の中は昔と一向に変わらないまま


あたしはそこに立ってた。


「初めまして!です!宜しくおねがいします! 」

一見元気そうな女の子が、この桜蘭学院高等学校中等部2-Aにやって来たのは今から1年数ヶ月前の冬の事である。



□□□




一人暮らしにしては大きめのマンションの一室にその少女は住んでいた。
庶民にとっては大きすぎるマンションであって。環を始め桜蘭生には小さめのマンション。


p p p p p ...

「もう、朝?」

そう呟いて携帯のアラームをとめた。



あたしの名前は、。現在桜蘭学院高等部1年A組になりたての、多分15歳。
ちなみに、親は「財閥」の社長。須王家と並ぶくらいの名家らしいけど実感わかない。

どうしてそんな名家令嬢のあたしが一人暮らししてるかっていうのにもちゃんと理由がある。

その親とは中2の秋頃から高1になる前までを同じ家で過ごした。
けれどその間、全然理解しあう事が出来なくて、高校に入学当時にあたしは一人暮らしをすることにした。もちろん、親も出て行くことに大歓迎。すぐにマンションを手配してくれた。 

理解しあえないのは、ただひとつだけ。
あたしにとっては大きい問題で、家にとってはきっとどうでもいいこと。
それがどうも許せなかった。

お金に困って出来るだけ戻ってこないよう、最低限以上にあたしに関りたくないらしく毎月最低100万円仕送りしてくれている。 そんなにも、使い道が無いのに。


あたしが微妙な時期に編入したのも理由があるし、中2の秋から一緒に暮らした、という微妙な環境にも理由がある。

その理由を知ってるのは、家の一部の人間だけ。
もちろんその知ってる人だって、あたしの人生の極一部分だけであって。

あたしの人生なんて、絶対教えてやらない。



この1年ちょっと一緒に暮らして来てあたしを鬱陶しく思うようなっている癖に。
家出までさせる位ウザイくせに捨てない理由も知っている。それはきっと、ホスト部にはいってしまったのが一番の原因だと思う。

個人的にはさっさと捨ててもらって一人になった方が楽なんだけど・・・。
そうすれば、桜蘭をやめざるを得ない。

全ては今の弱いあたしじゃあ重すぎて言えないし
助けを求めることももちろんできやしない。

自分を救う方法なんて、誰かに気づいてもらうしかできない。


そのくせに「気づいてほしい」「助けてほしい」的態度を見せないのが原因か
残念ながら情報収集に秀でている鏡夜先輩でさえ見抜けないほどあたしの気持ちは押さえ込まれている。



結局あたしは「矛盾してる」野良猫、なんだろうなぁ。

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