部屋で化粧をして目の腫れや泣いた感をごまかした。
こんなんじゃ何が理由で泣いたかなんて精市にも、まだ会ってない仁王たちにもバレバレだ。
とりあえず、平常心を保たないと、辛い。
選手をサポートするあたしが泣いてたら話になら無いから、いつも笑顔というのがあたしのモットーだった。
今もテニス合宿なんだから一緒。あたしはずっと笑ってなきゃ、


ふと目に入ったものは持ってきていたノートパソコン。
この数日間、パソコンを一切開いてなくって、メールチェックを忘れていた。
いざ開いてみれば、アメリカの友人達からのメールが大量に届いていて、内容を読んだりデジカメの写真が添付されていたりなど、気を紛らわすのには最適だ。



全員のメールを返信し終えたところで、ちょうど部屋がノックされた。
「あ、俺やで。」と、イントネーションからして忍足君だね。

「いま行きますー。」

一度鏡で顔をチェックすると、目の腫れは既に引いておりこれなら大丈夫だと安心して笑顔でドアを開けた。


「どうしたの?」
「皆揃ったからさん紹介しよ思て。跡部が呼んで来いってゆうねん。ほんまあいつ人使い荒いわあ。」
やれやれといった感じで一通り悪態をついて、ほな行こかと先に歩き出した。


皆談話室で集っているらしい。ちょっと緊張して、呼吸を整えてると「着いたで」って忍足君は立ち止まった。
ちょっと、早すぎるよ、まだ心の準備が。この扉の向こうに精市は居る。そして奥さんも、子供も。


「跡部ー連れてきたでー。」と、あたしの気持ちも知らずに扉を開けると、なんとなく整列してる人たちが居るのが見えた。
じゃ、俺先に中入るから跡部呼んだら入っておいでやーといい、向日君の横へと去っていった。
なんだか転校生になった気分。

「あぁ、すまねえな。」と忍足君に言って、既にそこに居る氷帝と立海のメンバー達に向かって「おいお前等!今日は中学3年の頃のメンバーは全員集合だったよなあ!ということで急遽昨日特別ゲストを呼んでおいたぜ、入って来い!」


ドッキドッキでドアを開けた。
「あの、あはは、どうも、お久しぶりッス。」となぜか敬語を使いへっぴり腰で中へはいって、跡部がこっちに来い、と手招きしたので彼の横へ行った。

皆の視線が凄く痛い。



「あの、今朝会った人も10年ぶりの人もお久しぶりです、昔立海のマネージャーやってました、です。
uh・・・仕事の都合で日本に転勤なって一昨日帰国しました、えへへ。」

何を言えば言いのかなんだか最後笑ってしまった。

カラン、と何かが落ちた音がした。視界の端で、精市が・・・幸村君があたしを見てラケットを落としたのだが、気づかないフリをした。
ただ、ものすごくあたし自身が内心焦っているのがわかってしまう。
だめ意識しちゃ。
あたしのことなんて、見ないでよ、


「今日と明日、マネージャーとして復帰しますが、えーっと、日本語でてこないや、とりあえずよろしく。」と言ってお辞儀をした。

じゃ!久しぶりじゃのう!」

すぐに近寄ってきてくれたのは仁王君だった。
その後ろから柳生君も「お久しぶりですね、さん。」と駆け寄ってきた。

二人ともだいぶ大人っぽくなった。
仁王君なんかは芸能人並のかっこよさだ。うわあ、久しぶりすぎてびっくり!

ちゃああん!」
そういってぎゅううと抱きつかれた。あたしのことをチャン付けで呼ぶのはただ一人。
「久しぶり、ジロー君。」
「超久しぶりだCー!うれCすぎー!」とあたしに頬擦りしているところを向日君にはがされた。


「おい、嬉しい気持ちはわかるが合宿に説明に入るぞ。」といいあたしは仁王君に引っ張られ最後尾に連れて行かれた。



最後まで幸村君はあたしのことを目を見開いてみていた。



だけどあたしはもう、そっちを見ないよ。


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