カフェなのにカツ丼を頼んだ。
跡部君や忍足君も昼ごはんがまだだったみたいで、オムライスとかお洒落なのを頼んでいたのだから、あたしの口からカツ丼セットって聞いたときには何こいつって顔をされた。
これならファミレスに行けばよかったと思ったが跡部君にファミレスは似合わないな。


よくよく考えたらあたしはただの立海テニス部マネージャーだし向こうは氷帝の選手だし、面識や数回の会話はあるものそんな仲が良いってわけでもなかったな。ほぼただ顔見知りだよ、顔見知り。
あ、でもジロー君とか向日君とかは仲良かったなあ。元気かなあ。

こうやって3人でご飯なんて初めて食べるというかまともに話すのも初めて。なんだか不思議な感じ。ていうかよくこの人たちあたしのこと覚えてたな。
にしても10年も経つとこんなに大人っぽくなるのか。あたしも変わったのだろうか?自分では全くわかんない。


「で、なんで今日本おるん?」
「仕事がね、転勤なったの。それで昨日の夜中帰国したばっかり。」
「へえー。」

それだけかよ!と突っ込みたくなったが、ちょうど良いところに店員さんがカツ丼とオムライス二つを運んできてくれた。久しぶりのカツ丼と味噌汁に胸がときめく!


「それよりお二人さんはテニスプレーヤーにでもなったの?テニス感満載の格好してるけど。」
「いいや、俺も忍足も昨日から盆休みだ。俺たちも社会人なんだが久しぶりにテニスしたくなってな。」
「一緒一緒、あたしも昨日から二週間休みー。」

早速、頂きます!とカツ丼にがっついた。二人揃ってあたしをニヤリと見ていることに気がついて箸を止めた。
「・・・何?」

なんだかいやな予感がするんだけど、気のせい?帰ってもいい?無理よねえ・・・。
だって、ニヤリって笑みなんか常識で考えて変でしょ!

「跡部、俺ええこと思いついてんけど。」
「ああそうだな、俺も同じこと考えたぜ。」

普通に怖いんですけど!全く何考えてるか想像がつかないところが怖い!



「おい、お前明日から二日間・・・時間あるか?」
「うん、あるけど・・・。」

「じゃあ決定だ、合宿に参加しろ。」
「Oh!」

合宿とかゆう懐かしい響きに普通に驚いてしまったではないか!

「合宿?何の合宿?全くあたしが誘われる意味がわかんないんだけど。」
とめてた箸を動かして、味噌汁をズズズと啜る。
やっぱこの出汁がたまんないね。わかめ最高だと思うよ、たとえこれがインスタントでも。

「明日から二日間、テニス部で集るんだ。メンバーは俺らが中3の頃の氷帝レギュラーと立海レギュラーだ。ちなみに全員。」
「oh!really?!」
本当に?!という意味だ。え、あの時のメンバーが集るって、もしかして精市も来るってことだよね?全員っていってたし!

「どうだ?行く気になっただろ?お前も立海の奴らに会いたいんじゃねえのか?」
「うん!もちろん行く!あたしが行くってことはマネージャ業的なことするわけ?」
「あぁ、だが中には結婚してる奴もいて家族を連れてくる奴がいる。」
「へえ!そっか・・・そうだよね、25歳だもん結婚してる年だもんね・・・!凄いね、結婚だなんて!あたし最後に会ったの中3だもん、皆が大人になったとこ想像できない!」

誰が結婚したんだろう!仁王君とか絶対してそう!子供とかいたら遊びたいな!ていうよりも皆の結婚式行きたかったなー。

「それで、だ。多分テニスを知らない家族ばっかりだ。そこでお前が率先してほしいんだ。」
といわれ、思い切り頷いた。あの頃に戻れる気持ちになれるなら、なんだってするってば!

「当たり前じゃん!選手をサポートするのはあたしの役目だったし!皆に会えるしなんだか中学戻ったときみたいで楽しみ!」
「ほんま俺らも楽しみやわ。」

やっばい!今からワクワクしてきた!ジャージ買いに行かなきゃ!

「あ、集合場所とかってどこになるの?」
うっかり肝心なことを聞き忘れるところだった。

「3年のときに一度合宿しただろ?俺様の別荘で。」
「あー、懐かしいね、したした。」
「あそこだ。明日の朝10:00までに来い。各自集合でお前の部屋はまだ決まって無いから明日向こうで言う。」
「了解ー!ね、あたしが行くことは内緒にしててね!吃驚させたいから!」
そういうと二人は小さく笑って頷いた。

とりあえず二人と連絡先を交換し、今日は二人ともこれから用事があるようでその場でサヨウナラ。そして跡部君、ごちそうさまでした。
嬉しすぎてスキップしそうだったのを必死で抑えた。


明日、精市に会えると思うと心臓が破裂しそうなほど緊張する。



next