仕事で日本に帰ってきたものの、実は昨日からお盆休みがあるらしく2週間休みだという。 その間に準備などを完璧にしておき、9月1日から就労開始である。 日本の町並みもここ10年ですっかり変わってしまい、知らないアーティストだらけだし好きな芸能人が結婚していたり、面影も無い姿になっていたりなど、いろいろと吃驚した。 昔住んでいた家はもう無いので、日本に来る前に手配してもらったマンションへ早速行こうと思ったのだけど、どうやら日本には真夜中につくことを知り、そんな時間から行ってもダメだろうということで初日の晩はホテルで泊まることになっていた。 数時間前に起きて早速マンションへ行くと、なんと向こうの手違いでもう1日待って欲しいと頼まれてしまい、仕方なく今夜もう1泊することになった。 なんだか出鼻をくじかれたみたいでなんだか複雑な気分だったが、まあ宿泊代は会社が払ってくれるらしいしホテルはホテルでなんだかワクワクするものがあり、まだまだあたしも子供だなと痛感してしまう。 とりあえず日本に馴染むために服を買いに行こうかな。 最初からこっちで服を買うことにしていたために、向こうから服は2着しかもってきてない。 スーツ、パジャマ。以上。もはや女として終わっている。 ずっとこの2着で居るわけにもいかないし、久しぶりに日本に帰ってきたんだから日本人らしくしたい! とりあえずスーツに着替え、カバンの中に財布と携帯が入ってるのを確認して鍵をフロントに預けて街へ出かけ、まず最初に本屋に寄ることにした。 ファッション雑誌を片っ端から読み今の流行をチェックしつつ、自分に合いそうな気に入ったファッション雑誌を数冊購入した。 もう25なんだからチャラチャラした格好じゃなくて落ち着いた感じのカジュアルな格好のほうがいいな。 この年の社会人でギャルとかはちょっと無理かな。 本に載っているショップ情報などを頼りに足を進めると、そのショップが見えてきたので早速入った。 ◇◇◇ いやあ、ちょっと買いすぎたかも。 結局ショップ5件くらいまわっちゃって・・・今月金欠決定した。 そして、こんなに大量に買ってマンションに移動する時大変ということに今気づく。 アメリカから持ってきた荷物が多くて大変だったというのに、こんな大量の服まで持って動けない!ということで宅配便でマンションに送ることにしてまあ解決。 送り状を書くときに、久しぶりにという漢字を自分で書いた気がしてそこでテンションあがった。 さて、そろそろランチでも食べに行こうかしら。 また本屋にいって、1からカフェ等を探すのも面倒くさいのでブラブラと歩いていると、カフェ探しに夢中になりすぎていたのか、誰かとぶつかってしまった。 「sorry!じゃなかった、ごめんなさい!」 そういって去ろうとしたら腕をつかまれてしまった。 え、何?と思って顔を見るとどっかで見たことのあるような・・・。 向こうも同じようなことを思っているのか、あたしの顔をまじまじと見つめる。 「お前、俺様とどこかで会ったことあるか?」と言われてしまった。 「あ!もしかして跡部君?」 よく見ればジャージ姿にテニスのラケットバックを担いでいる。 しかもこの声に俺様発言、この泣きぼくろと目の色にテニス感溢れる人は跡部君で間違いない! 「おまえ、もしかしてか?」 「うん、そだよ!立海のテニスマネージャーしてた!」 そういうと、跡部君は何も言わずあたしを見続けた。ちょっと、そんなに見られたら緊張する。 「えらい待たせてすまんな、レジ混んでてん堪忍して。って跡部何してんねんな。」 本を片手に後ろからやってきた関西弁の・・・跡部君と同じようにジャージにラケットバックを担いで丸めがねなあたりからして忍足君かな? そりゃ私がだと気づいていない忍足君が、店から出てきたら待ってくれてる跡部と知らない女が見詰め合ってたら何してんねんなって突っ込みたくもなるよね。 「忍足、この顔見覚えないか?」 「わわっ!」 跡部君は鼻で一度笑ってあたしの頭を掴んで忍足君に見せるように突き出した。 とっさのことで足がもつれたが上手く体制を立て直したあたしは凄い。 あたしの顔をまじまじ見て、何かを思い出したように「ああ、」と言う。 「もしかして、立海テニス部やったさんやっけ?」 正解という意味で「久しぶり!」と返し、跡部君はあたしの頭を放した。 「お前アメリカに行ったんじゃなかったのか?」 というふうにごもっともな質問をされて答えようとしたのだが。 ぎゅるるるる・・・という、こんな騒がしい街に居てもしっかりと聞こえる程の、なんともみっともない音が流れたので、とりあえずカフェに移動した。 恥ずかしくて笑うしかなかった。 next |