レヴィはちょっと危なかったけど勝った。相手の10年バズーカ?卑怯だよねー。 ベルは自分の血を見ちゃって狂って勝った。 久しぶりにあの狂いっぷりを見てちょっと楽しかったかもしれない。 スクアーロは・・・。 だめだった。 いろんな意味でダメだった。 あたしは馬鹿だ、スクアーロだから絶対に勝てると思って安心してたんだ。 安心してたから日に日に悪くなる体調のことを考えて部屋で寝てた。 もどってきたヴァリアーの中にスクアーロが居なくて聞いたら山本をかばってスクアーロが、犠牲となった、と。 敗者には情けはかけない、けど、あいつはなんだんかんだで一番構ってくれたしすっごい仲良かったから少しだけ寂しい。 せめてリング戦見に行けばよかった。もう会えないなんて、寂しいなあ。スクアーロを殺すのってあたしかザンザスと思ってたのに。 Mi chiamo arma. 今日は霧の守護者同士。 沢田の霧って一体誰なんだろう、こっちはマーモンでしょ? 思い当たる人が全然居ないんだけどなあ。 もうちょっとしっかりと調査すればよかったかもね。 マーモンが念写しても“CD”としか写らないんだもん、本当意味わかんない。 それよりもいつになったら宇宙が始まるの、本当きついんだけど。 この三日で乱期の前兆が段々悪化して、だんだん近付いていくのがわかる。 このままだと明日か明後日には本格的に乱期が始まるから、能力が使えない。自分の戦闘能力でしか戦えない。殺意が沸かなくなるから楽しめない。 それでも十分なんだけどね、面倒くさいじゃん。本当は源内を殺すにしても一歩も動きたくなかったんだよ。こんな体調だったら絶対短期決戦にしなきゃいけないし。サクっと終わらせなきゃ。 あたしの戦い方じゃないんだよなあ。一歩も動かずじわじわじっくり楽しむのがモットーなんだもん。 楽しくないのに殺すなんてもったいないなあ。 とりあえず重い体を起こしてヴァリアー仕様の服に着替えて応接間に行く。 皆・・・って言っても4人+1体、揃ってたけど言葉を発する気にもなれずにあたし専用のソファに倒れこんで目を閉じる。 「ししっ!しんどそーじゃん!」 そういって背もたれに両腕をついて凭れながらからかってくる。 ベルはあんなに大怪我してたのに元気そうで羨ましいなあ、本当に。 「うっさい、放っておいて。」 そういって、ベルにあっち行けと言わんばかりにうつぶせに体制を返ると、ナイフでつんつんと背中や腕をつつかれた。 最初は無視してたけどだんだんとウザくなってきて、寝転がったままそっとベルの眉間に人差し指を当てた。 「なんだよそれ。」 「あたし今機嫌すっごい悪いの。気をつけなよ、あたし指はじくだけで人間木っ端微塵にできるから。」 そういうとニヤっと大きな口をあけて笑い、余計にナイフの先でつんつんしてきたのでイラってきてソファの上に起き上がり、背もたれに片足をかけてピストル二丁構えた。 「まじ?やる?」 「別にいーけど。ベルが死ぬよ。」 「死なねぇよ、だって王子だもん。」 「おい、。」 一触即発の雰囲気でザンザスの声が聞こえてそっちを見ると何かが飛んできた。それをすかさずキャッチすると同時にベルがナイフであたしを切り裂こうとしたので頭を押さえつけた勢いでジャンプして交わしてそのままソファに座って受け取ったものを見る。 ベルも戦闘モード・・・というかジャレてるだけだったのであたしがベルよりもそっちに興味がわいたのがわかったのか私と一緒にソレを見たが、ザンザスから渡されたから特別何かかと思いきやあたし用の薬。 「ブイヨの専属薬剤師からだ。」 ブイヨのメンバーはそれぞれ体に特殊能力を抱えている分、それぞれの体に合わせた薬が配布されている。 体調が優れないのは、乱期の前兆とこれにあった。 「なんだ、つまんね。」 「うるさいなあ、あたしにはこれは超大事なんだって。」 「へぇー。」 ベルの興味は完全に無くなったようで、テラスで念写するマーモンのところへと遊びに行った。 遊ぶと言ってもまあ皮肉のいいあいとかそんなんだと思うけど。 「レヴィ、水。」 あたしが言えばレヴィはすぐに水を持ってきた。レヴィはザンザスにはめっぽう弱いけどあたしにも弱い。なぜならあたしが女であることが一つ、もう一つはやはりブイヨサイケデリックだからだ。 薬を今日の分を飲むが、この味にはいつまでたっても慣れないくらいまずい。 「ザンザス、あたし今日もパス。」 「あ?」 「体調最悪なのに幻覚なんか使われたらあたし再起不能。」 「はっ!ねえな、それは。」 「でも明日の対戦カードも気になるのよね、だからリング戦終わったくらい見計らっていくわ。」 「勝手にしろ。」 よっしゃ、と小さくガッツポーズした。あたしはボンゴレにきたときからザンザスと知り合いだ。あたし達も幼馴染になるのだろうか?幼馴染という定義がいまいちわかんないけど、小さい頃からの付き合いだ。 まあ最初はあたしが女だから、俺は9代目の実子だ、とかでカスカス言われまくってあたしを見下すザンザスに腹が立って喧嘩売って当時のあたしは能力なんて使いこなせなかったけどそれでも五分五分だったのでザンザスもあたしを認め、あたしもザンザスを認めた。 まあ認めた直後くらいにゆりかごがあったんだけどね。 普通の人よりかはあたしにはちゃんと口をきいてくれる。 「ねーえ、ザンザスの権力で宇宙戦明日にできないの?」 「できねえ。」 「ちぇっ、」 「・・・。」 □□□ 「・・・ありえないんだけど。」 あたしは今現在、並盛中学の霧のリング戦が行われている体育館の屋根の上に居た。 なんとなく感じる幻覚による空間の歪みを感じて少し気持ち悪い。 そして気持ち悪い上に腹が立っている。 ザンザスに無理矢理体育館の中につれてこられて、あたしも相手が誰かちょっと気になってたから仕方なく体育館内に居ようと思ったのに、感じた気配に懐かしさを覚えて入り口を見ると犬と千種だった。 なんでここにいるの、意味わかんない。 クローム髑髏って一体誰よ、骸に一番大切にされてた女ってあたしだと思ってたのに。 この前の再会であたしたちは縁を切られたのか切れたのか眼中にも入ってないのか、別の女の子がいた。 別に骸たちに愛感情なんていうものはこれっぽっちも無い、あるとしたら幼馴染として、被害者としての仲間意識だというのに複雑な気分だ。 昔の4人で居た頃を客観的に見てるみたいで不思議というか、彼らには私は不必要だということを思い知らされたというか。 レヴィがその女を見て妖艶だとか言ってたので一発腹にぶちこんだ。 一番腹が立ったのはあたしにあんなにマフィアになってることを怒ってたくせに自分だってボンゴレの、しかも穏健派に手を貸していることだ。 復讐者に居るはずの犬と千種がここにいることがもう不自然なんだ。家光に何かたぶらかされたのか? リングを受け取れば二人を復讐者から出すとか。 それだとしても腹が立つ。あたしじゃなくて家光に頼んでいる時点で腹が立つ。 あたしと骸は所詮ソレ程度の関係だったのかもしれない。 骸より強い幻術士は見たことが無い、それがクローム髑髏とか言う一般人?だとしてもだ。 クロームと骸は別人だが同じような特殊精神を持っている。ということはクローム髑髏に骸の精神が乗り移れば骸の圧勝。マーモンなんてすぐ終わる。 どうがんばっても勝てないよ、骸には。あたし以外はね。 これから行われるであろう幻術対決を予想して、犬たちがあたしに気づいていないうちに屋根の上に避難したのだ。 クローム髑髏から懐かしい気配に変わった。 やはりクロームから骸に変わったのか。 体育館の中のゆがみがなくなったのは骸が現れてすぐで、屋根をすり抜けザンザスの横におりた。 骸は丁度ザンザスと何かを話していたみたいで、こちらに来ていたのかしっかりと目が合った。 おや?という感じで骸はあたしを見て、千種はあまり感情は出してなかったけど犬はあからさまに驚いている。 「やはり、もいたのですね。」 クフフと笑いそういう。 「マフィアとの馴れ合い、あんただってしてるんじゃん。」 「あなたには言われたくありません。」 「うんそうかもね。でも骸だって一緒。」 「一緒にしないでください。」 まだ怒ってるのか、そっけなく彼はそういって沢田達のところへ戻っていった。 骸からクローム髑髏へと変わる瞬間、「堕ちたね、骸。」といったが聞こえたか聞こえていないかはわからない。 明日のリング戦は雲だ。 中々回ってこない自分の出番にそろそろしびれ切らせそう。 「雲の対決でモスカが負けるようなことがあれば全てをてめーらにくれてやる。」 あたしはザンザスがなにを隠しているかいまだ知らない。 知らないというか興味が無い。モスカというこのロボットがなんだか不思議な奴ということはわかるけどね。 どーでもいいや、強いなら。ザンザスの補佐ってことだし。 「ねえ、もう帰ろうよ。」 あくびをしながら皆に言って、ザンザスの椅子にもたれかかった。戦いが終われば興味が無い。 「・・・いや、。」 源内夏依が前に出て私を呼び止め、なに?と振り返る。 「あなた、骸とどういう関係なのよ!」 そう聞かれると沢田も「そうだ、黒曜のときも居た・・・。」 チラっと犬達を見たが、目をそらされてしまった。 「うーん、簡単に言えば幼馴染?そっちはどう思ってるか知らないけど。」 「え、それ本当かよ!?」 「にって名前、つけたの、骸さんだびょん・・・。」 犬の言葉に周りが驚く。アルコバレーノは何か考えるように黙っている。 「骸達は小さい頃エストラーネオに居たんじゃねぇのか?」 獄寺の質問に、犬達が答えようとしてあたしは慌てて犬達の口を金縛りで話せなくした。 こいつら、というかアルコバレーノくらいならエストラーネオの開発していた人間兵器 arma.01のことを知っているかもしれない。 あたし達がエストラーネオを潰したあと、エストラーネオの跡地を調べるために訪れたどこかのマフィアがarma.01についての報告書などを見つけ、マフィア界に公表した。 なのでarma.01をつくるためにどれだけ非道な実験をしていたかはマフィア界でも有名で、いくら道徳心の無いマフィアのボスでも内容を聞いて鳥肌が立てたような人体実験だ。 その過去例があるからこそ、マフィア界で人体実験は禁止にされている。 arma.02を作ってはいけない。 そりゃそうだろう、あたしがarma.01そのものなのだから一番その非道実験・・・いやあれは酷い拷問、を一番体感してしまったのだもの! 受精卵のときからの実験に感情まで操作されて生まれてからも体中をえぐられ・・・思い出したくない。 一番その非道な実験を耐えたこのあたし。あれの辛さは一番知っている、あたしだからきっと奇跡的に耐えれただけでこれから先やっても被害者を出すのみだ。 あたしがarma.01ということを知っているのはあたしがブイヨだと知っている人だけ。今ではそのarma.01は死んだとされているのだから。 体中は今こそかすかにしか残ってないが傷だらけだった。体のいたるところになにか特殊なものも埋め込まれている。 思い出すだけで古傷が痛む。古傷って言ってしまえばもう全身になるんだけどね! だからこそあたしがエストラーネオに居たことを、今はバラしたくない。 もしarma.01があたしだということがばれればそれこそあたしを狙ってくる馬鹿なマフィアが居るかもしれないし。 まあその分たくさん殺せるから楽しくなるッ茶楽しくなるんだけど何せ今は乱期だし。 面倒くさい。 「犬、千種。それ以上喋らないでね。たとえあたしが居ない場所で話したとしても、あなたしの仲間にあなた達の会話を自由に聞くことができる人が居るから。あたしの過去は、秘密。」 あたしは二人にそう言ってすぐに金縛りはといた。あたしの中ではまだ大事な人たちだから乱暴な真似はしたくないの。 千種が小さく「アウディ・・・?」と呟いた。 「覚えてたの?まあそういうことだから、頼んだよ。」 ザンザスに会話終了という意味で目を合わせ、すぐに帰った。 あいまいに言った同じブイヨのリンピドとして活躍中のアウディの能力だったのに、ちゃんと名前まで覚えているなんて吃驚した。 まあね、全員同じ部屋ですごしてたからそう簡単に忘れられても困るんだけど。 「ねーえ、ザンザス。モスカって勝てるの?」 「・・・さあな。」 意味深に笑ってそう答えるザンザスにあたしは首をかしげる。 「なに、隠し事?このあたしに。」 「ちげえ。明日の楽しみってことだ。」 つまんないのー!と返し、自室へ戻った。 モスカの相手は恭弥だ。 恭弥の強さはあたしだって知ってる。 人一倍プライドが高くって咬み殺すことにしか興味が無い。むしろ他人のことって咬み殺すか咬み殺さないかで見ているのかもしれない。 モスカがちょっと心配なのは戦ったとことか見たこと無いんだもん。 手からなんか出ることとかは知ってるんだけど実践となるとどうなんだか。 それこそ瞬殺されちゃったりして・・・まさかね。 ちょっとまってよ、明日負けたらあたし出番無くなってしまうし、本当頑張ってもらわないと困るんだけど・・・。 まあね、負けたら皆殺しにすればいいんだけど・・・やっぱ源内の晴れ舞台はボンゴレ全員に見せてあげたいよね。 あたしに殺される晴れ舞台。死ぬときくらい、仲間に見守られて殺されたいでしょ?あたしってば、やっさしー! どーせ大空戦は最後でしょ、つまり明後日が源内夏依の命日。 せいぜい余命を楽しんでね (宇宙のリング戦までののこりわずかの時間を、ね。) |