次の日、並盛中学へ最後の登校をし、教室に入るといきなり皆に囲まれた。 Mi
chiamo arma. 「!お前・・・夏依ちゃんの首を絞めようとしたらしいな!」 クラスの誰かがあたしに言った。夏依ちゃんが泣いてるじゃねぇか!謝れ!とか言い出す集団の奥で源内が泣いていて、その肩を笹川が支えている状態。なんだこの猿芝居は。 次第に手拍子をしながら謝れコールが起こる。 はぁ、とため息をつけば、背中を蹴飛ばされ、少しよろめく。後ろを向けば凄い血相をした山本だ。 この表情を一言で表すと憎悪。 あたしがヴァリアーだったことや昨日源内を殺そうとしたことが理由だろうか。 でも心外だ。あたしは首を締めようとしたんじゃなくて首のど真ん中を突き破ろうとしたのに。 「・・・お前だけは絶対ゆるさねえ。」 例のボンゴレ3人組が現れ今にもキレそうだ。おいおいリング戦あるんだからやり合うならそこにしてよ。 ・・・でも、殺すなという命令が解けたあたしは気が短い。 「てめえだけは全てが終わってからでもぶっつぶす!」 獄寺のその言葉を聞いて、あたしは少し強くジャンプし、後ろのロッカーの上に飛び乗りしゃがみこんだ。 そして左手には愛用のワルサーPPKを持ち、左から右へと全員へ向ける。 「まじでウザすぎるよ、君たち。我慢限界。」といえば、おいがプラモデル構えて俺たちの事脅してるぜ!と笑い出す。あぁ、あたしも本当になめられたもんだ。 引き金を迷いもなく集団の中心へと発砲する。チュン、と小さい音が鳴ったかというとその倍の大きさで床が割れる音が聞こえた。 皆一気に黙ってそこに注目し、本物の弾丸だとわかった瞬間に一気に恐怖へを変わる。ピストルを見るのは初めてか。当たり前だ、日本では銃刀法違反なのだから。 「死にたくないならあまりあたしを怒らせないほうがいいよ。君たちの脳みそではわからないとおもうけどあたしは裏世界で有名な殺人鬼だからね。」 ロッカーからおりると、みんながあたしから離れた。それを気にせず源内のところまで歩くと面白いように皆が左右に避けて道を作ってくれる。 源内の前までいくと身長差であたしが見下ろすことになるので思い切り見下してフっと笑い指をパチンと鳴らすとボンゴレ関係者以外が気を失ったように倒れた。 「おい!なにしやがんだてめぇ!」と忠犬がほえるがスルーして源内に話しかける。 「源内夏依。あたしを恨むのはわかるけど、あなたへ用意した喜劇はまだこれからよ。」 「・・・何?」 「何?あたしがボンゴレってことはどういうことかわかってるの?」 笑みを浮かべて腕を組み見下し鼻で笑う。 「フゥ太のランキングの順位くらい知ってるのよ。」 「だから何?」 「以前あたしにあんたは自分がブイヨサイケデリックだといったはず。でも強いマフィアランキングは1位ブイヨサイケデリック、2位源内夏依。つまりあなたはブイヨじゃない。」 「・・・。」 あたしがそういうと源内は悔しそうに唇をかんだ。 脳足りんというやつなのか、この人の言っていることは中途半端でびっくりする。 答えがあるのにわかりやすい嘘を言う本当バカじゃないの? 「それに、ブイヨサイケデリックはあなたよりも強いわ。あなたなんて一瞬で殺せるほどね。」と彼女に言うと目を見開いてあたしに「ブイヨを知ってるの?」と聞いた。 「えぇ、それはとても仲良くさせてもらってるわ。この意味が解るかな?」 「何だって言うのよ・・・!」 「あたしとあなたは敵。あたしはブイヨサイケデリックだけでなくその他ブイヨとも仲が良い。名前も、性別も、構成も何もかも知ってるわ。そしてあなたはサイケデリックと嘘をついた。・・・サイケデリックはちょっと怒り気味だね。あたしとのリング戦までに殺されないでね!せいぜい逃げるといいわ。」 源内はあたしがヴァリアーのだといえども、フゥ太のランキングにその名前はなかったことからそこまで強いマフィアじゃないと思っている。でも実際あたしはブイヨサイケデリックという名前で1位に居た。 フゥ太のランキングは絶対的な数字なので、その自分より強い世界的にも有名なマフィアと、対戦相手であるあたしと仲が良いと嘘をつけば(本当は同一人物だから仲が良いもクソもない)少しの焦りを感じるだろう。 そこへ、そのブイヨサイケデリックが自分をターゲットにしていると聞けば・・・源内の心はいつか殺されるのかと恐怖に包まれる。相手は異名は知ってようとも戦い方、能力、性別、顔・・・何も知らない暗黒殺人部隊の人間だ。リング戦で戦うときの準備とでも言っておこうか。 たったこの瞬間から死ぬまでの間・・・ずっと恐怖から逃れることはない。かわいそうに。 悔しそうにあたしを見る源内を鼻で笑って教室の扉まで向かう。虫が3匹いるけれど、よけて出て行く。 特に追いかけてもこなかったし、つまんないなあと思いながら階段を上りつつ気絶させたクラスの人の意識を戻した。 恭弥とディーノが居るであろう屋上へ向かうとドンピシャ。 ドアを開けると、修行をしていたのか血まみれになっている二人が対峙しあっていた。 あたしが入ってきたことに気づくと恭弥はあたしをまっすぐ見つめディーノは今回敵対するからかきまずそうにあたしから目を逸らせた。 「恭弥。」 あたしは名前を読んで彼の元へ歩みより、書類を渡す。 「なにこれ?」 書類にざっと目を通すと一気に不機嫌になってあたしをにらみつけた。 「並盛辞めようと思って。転校届け出したほうがいいんだろうけどあたし転校しないから。」 「僕が言ってるのはそういうことじゃないよ。どうしてだけのじゃなくて源内夏依とかいう草食動物のものもあるんだい?」 恭弥の口から源内夏依という言葉出てきたせいか、ディーノも反応する。 「おい、、何考えてんだよ」 「何って。親切な行為をそういう風に言われる筋合い無いわ。」 「親切・・・?」 ディーノが首をかしげる。 「ええ、私にこれから殺される人の分も用意してきて何が悪いの?あたしなりの優しさのつもりよ。」 ディーノにそういって微笑むと、私の言葉の意味を理解したのか少し怒ったみたいだ。それじゃといって屋上から出て行く。 恭弥とは残念だけど友達として会うのはこれで最後かも。・・・もちろん、このリング戦の結果によってはディーノも。 ドアがパタンとしまり階段を下りる直前で「ちょっと恭弥、待ってろ!」と後ろのほうでディーノの声が聞こえて、慌ててこっちに走ってくる。屋上内にロマーリオが居たことから転ぶ可能性は0。 でもここはロマーリオの顔が見えないことから階段を下りるときに落ちる可能性は100%ということで、階段から降りずにドアの前でディーノがここまで来るのを待っとくことにした。 「おい、まさかお前リング戦で夏依のことを・・・!」 「あらディーノ、前まで女の子の名前を呼ぶのは恥ずかしくて呼べないって言ってあたし以外の名前呼ばなかったのに。ちゃっかり源内まで下の名前で呼んでるんだ。進歩したね。」 ディーノをからかうと、からかわれた羞恥心ではなく怒りから顔を真っ赤にした。やっぱあたしみたいな殺人鬼と、温厚な殺しが嫌いなディーノとは合わないかもしれない。あたしの常識が彼には通用しないもの。 「質問に答えろ!」 「いつからそんなに気が短くなったの?源内のことなら心配しなくてもいいよ。」 心配しなくてもいいよ、という言葉だけで安心したのか、ホッとしている。 「心配しなくても、殺すつもりだから。」 そう言い微笑んだが、この笑みは絶対に言葉に似合わない。笑顔のあたしと対照的にディーノはあたしを睨む。そんな顔されたって困る。こっちは一応任務なんだから。 「あたし用事あるから。じゃあね。」 「ちょ、!」 まだ何か言いたそうなディーノを放っておいて姿を消した。 そのまま自宅に戻ってくるとパソコンを開く。 ボンゴレ日本支部をハッキング。何故なら源内夏依の父親・源内有男の現居場所を突き止めるためだ。どうせ源内夏依を殺すなら徹底的に絶望の淵まで追い詰めてから、生まれてきたことに後悔して死に逝けばいい。そのための道具にしかならない・・・源内有男は。それに長年ヴァリアーを嫌い続けたお礼と言ってもいいだろう。 セキュリティを潜り抜け、見たい情報がこうもやすやすと手に入るとは。あたしのハッキングの才能が素晴らしいのか、日本支部のセキュリティがゆるすぎるのかどっちだろう? 「お、でたでた。・・・へぇ。」 どうやら源内有男は並盛内に居るらしい。夏依がいるからだろうか。何たる親ばかだ。源内夏依は仮にも成人してるはずだし、成人した子供が心配? もしかして・・・そうか、夏依の修行の相手はこいつか・・・。だよね、他に思い当たる人いないもん。この時間だと源内夏依はまだ学校だし・・・丁度いい。 丁度、その情報の中に現住所まで載っていたのでありがたくインプットさせてもらい早速探しに行くことにする。この距離なら歩かなくても瞬間移動を使えばいける。ラッキー。 制服から黒のスキニーと黒のシャツに着替え、大き目のサングラスをかけて住所とを思い浮かべながらジャンプして着地すると目の前に驚いて固まっている源内有男の姿があった。 そりゃそうだろう、いきなり人間…しかも大嫌いなヴァリアーのがシュッと現れたらびっくりするわ。 「ごきげんよう、源内有男さん。そしてサヨウナラ、」 奴が反応する間もなく、あたしは右腕を胸部に突き刺した。 顔についた返り血を左手で拭い、右手を抜くと、死体は床へと崩れ落ち、人というものは本当にあっけないものだと感じる。 とりあえず水道で手についた血を洗い流し、死体の中に入っている血や床に広がる血は闇へと消しておくことにした。これで血で汚れる心配はない。 ルッスーリアにあげたら喜ぶだろうけど、そこまで引き締まってない体は彼の好みではないな。すぐに廃棄しちゃいそう。 テーブルにおいてあった彼の携帯電話から源内夏依の名前を探しメールを打った。 「ヴァリアーのの弱みを握るためにイタリアへ発つ。宇宙のリング戦の日には戻る。お前なら大丈夫だ」と。すぐに了承の返事が来たのを見て携帯を閉じる。バカだこいつは。 源内有男が死んだこと、まだまだ教えてあーげない!お楽しみは当日に。とりあえず死体は部屋にもって帰ろうと思ったけどめんどうくさいなあ。首から下いらないや、消しちゃお。 死体を家においてきて街を歩くことにした。目的はずっとまえに食べ損ねたラ・ナミモリーヌのモンブラン。 今日からリング戦、晴の守護者だからルッスーリアと笹川兄か。まあルッスーリアなら余裕で勝つんじゃないかな。 ヴァリアーの負けは死を意味するからね、もし負けたらもうルッスーリアは居なくなる。 全部で8回戦・・・ってなんかおかしくない?引き分けたらどうなるの?まあそのときは相手側を殺せばいいけど引き分けなんてまずありえないか。 あたしの出番がいつかはわからないけど、5番目がいいな。だってどっちかが5回勝利すれば勝てるわけだから。トリ勤めたいし。 まあいいや、どっちみち源内は殺すしー。この計画が多分沢田たちの殺意向上なんだろうね。もう遅いけど。 「あれ?チャン・・・?」 物騒なことを考えていると後ろからありえない声が聞こえた。あれ、今日本に居るはずは無いんだけど確かにあたしの名を呼んでる知っている声。 振り返るとやっぱり彼は居た。 「・・・なんで、ここにいんの?」 「日本の見学に決まってるだよ、おいしい物いっぱいあるしね。」 あぁ、本当彼らしいや。 そこには、マシュマロをやたら食べているイタリアに住んでるはずの白蘭という年上の友人が居た。 あたしたちの出会いは、あたしが何か美味いもん作れというベルのわがままをきいてマシュマロを使ってお菓子を作ろうとイタリアのデパートのお菓子売り場に居たときに最後の一袋のマシュマロを同時に手にしてしまい、なんかすっごい泣きそうな顔をされたのでマシュマロは譲り、その代わりにケーキを奢ってくれるということなのでありがたく了承した。 知らない人に付いて行っても危ないなら殺してしまえばいいし、毒が仕込まれていようとあたしには効かない。 ついでにいえば、マシュマロを買い損ねたあたしにはナイフ千本が待っていたのは言うまでも無い。 そこからちょくちょく会うようになって、ショッピングなども一緒にするよう仲だ。白蘭は頭が良くて人間的に変わっていておもしろい。白蘭がマフィアなら成功しそうだな。 まあ一応白蘭は一般人だなのであたしがマフィアということを言っていないのだけどなぜか知っているようだ。 直接言われたわけじゃないけれど人の考えていることは大体わかる。ブイヨということも知っていたらどうしよう。 ・・・さすがにそれはないかな。 きっと白蘭は特殊能力というものを持っているんだとおもう。是非ヴァリアーに入ってもらいたいけれど、彼は人の下に居るような人間じゃないか。 いや、でもマフィアは嫌いだからな…。科学者あたりになって欲しいな。 「チャンはここになんで居るの?」 「んー、野暮用って感じ。」 あたしがとういうと彼は笑顔を崩さないまま「へー!」という。絶対任務で来てるってことわかってそう、この人。でもあたしと知り合って結構経つけど何かをしてくるわけでもないしマフィアだと知られても害は無いんだけどね。 「ねーえ、白蘭さ、何食べたいの?ここら辺ならあたし案内できるよ。」 「え、まじで?」 「うん、あたしもなんか食べたかったからさ、久しぶりに一緒にご飯行こうよ。」 「やったね!最近チャン全然連絡くれないんだもん、結構寂しかったんだよねー。」 あたしの横に並び、近くにあったちょっと高級そうな料亭・並盛館へと足をすすめた。久しぶりということもあって、会話は全然途切れない。 白蘭のこのゆるすぎる感じが、あたしは結構好きだ。 ・・・にしても、まさか日本料理を白蘭と食べに行くことになるなんて思わなかったな。 明日にでもスクアーロ引っ張って奢らせるつもりだったけど、まあいっか! そうこう言ってる間にどうやら並盛館へと着いたみたいだ。前から気になってたんだ、このいかにも和風な店構え!早速入ろうと店に近寄る。ここは日本慣れしたあたしから店に入ってやろうと、前を歩く。 そのときにあるものが目に入って「あ、」と声を漏らすと、白蘭も気づいたようで同じように声を漏らす。 「・・・・・。」 「・・・・はははは!」 あたしはわざとらしく笑って、恐る恐る振り返ると彼はいつもより深い笑みであたしに微笑む白蘭が居た。はじめて彼の笑顔が怖いとさえ感じた。 まさかの定休日 (ね、ねえ!もうちょっと行ったとこに美味しいケーキ屋さんあるんだけど!) (・・・・・・・。) |