「来なさい、arma.01。」 子供達が集められている一つの部屋に研究員が二人やってきた。 arma.01-アルマ,ウーノ-これはあたしのこと。 最初は、「アルマウーノ」というのはあたしに付けられたあたしだけの名前だと思っていたが、どうやら名前ではなく「兵器1号」という単純な名前だということを知ったのはいつだっただろうか? ソレを知ったとき、あぁあたしは兵器なんだ・・・と思うしかできなかった。 少しの希望も消えてしまった気がした。 アルマ・・・つまり兵器のこと。もっといえばココで作られるたあたしは人間兵器。 マフィア界を支配できるような、恐怖で脅かすような・・・そんな人間兵器を作るための実験。ここに居る全員の能力の中でも、有力な能力を全て結合させるつもりだ。この人間のくずどもは。 Mi chiamo arma. 呼ばれるとすぐ立ち上がりついていった。 ここで少しでも遅れると殺されるときもあることを知っている。 さっきも同じ年くらいの子が、実験の恐怖で泣き叫び、ソレが原因で死んでいった。 殺されるかどうかは研究員の気分次第。 どうせ付いていったって痛く苦しい思いしか味わうことも無いけれど、小さなあたしには抗う術も無い。 アルマとして完成していないあたしにはまだどうすることも出来なかった。 抗ったところで待っているのは、死と言う結末のみ。 ここで死んでしまえばまた誰かが犠牲になって新しいarma.02の開発が進められるだけ。 ただ、今のところあたし以外にアルマは居ない。 よほど難しいらしくあたし以外産まれてない。生まれるのが難しいらしい。あたしが生まれたのが奇跡だと、研究員が言っていた。 何百回やっても途中でダメになってしまうらしく結果失敗。その何百分の一で生まれたのは、あたし。 なんて強運でなんて不運なんだろうか。 どうしてあたしが生まれてしまったのだろうか、あたしも何故失敗してくれなかったのだろうか。 椅子に座らされ、動かないようにぐるぐるに縛られる。 そして全身に特殊な機械を付けられ、その感触が恐怖を誘う。 機械に繋がるコードは数え切れない。何の実験かもわからない。 そのコードから何が流れるの?どういう仕組み?しらない。 腕に何本も注射を打たれたが、意識が遠のかないことから麻酔ではなさそうで。 痺れてもこないので局部麻酔でもなさそう。きょうは麻酔無しの実験。 これから起こる痛みを想像するとそれだけで冷や汗が流れる。 息を吸った瞬間全身にさすような痛みが走る。 「あああああああ!」 悲鳴のような叫び声。喉に負担がかかり少し切れて血の味がした。 目にうつるのは先ほどと変わらず名前も知らない機械。だけど見えてるだけ。ソレが何か、とか何色だとか何も考えることも出来やしない。 ただ頭が真っ白で、体が切り裂かれてるんじゃないかというくらいの痛み。 生き地獄という言葉がキットぴったりなんだと思う。 焼けるように熱く、じわりと涙が浮かぶ。 そして意識が飛んだ。 次に目を覚ましたのは、皆が入れられている部屋の隅っこ。 「アルマちゃん、大丈夫?」 部屋の女の子があたしを覗き込んでいて、話しかける。 アルマちゃん、か。皮肉な名前だと思う。あたしの名前でははいけれど、一番あたしを表す身近な単語なのだから。 「うん、大丈夫、」 この女の子もまた、この忌々しいファミリーで生まれた子で、名前をアウディという。 本来、ここで生まれた子供は名前を持たないけど、自分で名づけたらしい。 あたしもそうすれば良いんだろうけど、生にすがってる気がしてそういう気分にはなれなかった。 こんな最悪なファミリーに生まれて、誰が生きたいと思うものか。ばかばかしい。 確かアウディは耳の実験をされている。 意識をすれば、世界中の話し声が聞こえるという。 いつかその能力、あたしにも付けられるんじゃないかと恐怖なんだけど。 その横に居たヴェリエ君は、何処からでも炎を出せるようになったと話していた。 少し動くとあちこちが痛かった。 両腕両足に縫ったあとが付いてることから、ココに何か薬を入れたのかもしれないし筋肉を改造されたのかもしれない。 あとどれくらい、人間からかけ離れればいいのだろう? どれくらい兵器というものに近づけば良いんだろう? もう、人間に戻ることなんて出来やしない。 今までの実験の結果、あたしに付いた能力は、瞬間移動、千里眼、空中移動、透明化、分身などなど合計10以上の能力だ。 これ以上、何を増やすというのだろうか。これをどう使いこなせというんだろうか。 それで何人の人を殺せば良いんだろう? 「来なさい、アルマ。」 意識を取り戻したばかりだというのにまた実験。 生まれてからいままで、実験がなかった日はなかった。 普通に暮らしている子はどれほど幸せなのだろうか? 怒られたって、泣いてたって・・・幸せなんだよ、そうやって泣けることが。 たとえいじめられていても、人間で居れることがうらやましいや。 あたしは、どうすれば普通に暮らすことが出来るのか。 答え?不可能、無理、絶対。産まれる前から・・・受精卵誕生の時点であたしは普通じゃないんだから! また椅子に座らされ、腕に足、額や目元に注射を打たれる。 次はどんな能力がついているのか、どれほど人間からかけはなされるのか? 考えただけでも生きる希望を失うには十分の理由が増えた。 打たれたのは麻酔だったらしくすぐに意識が飛び、目の前が真っ暗になった。 あたしが自由になるには、ここを破壊するしかない。 大人全員皆殺しだ。 この能力で殺す初めての人間は間違いなく貴様らだ。 でもソレをするにはまだ早い。 もう少し、待とう。 □□□ あれから二日間実験がされなくて、少し不思議に思う。こんなことは初めて! あまり痛みを感じないように、怪我もすぐに治るように改造されているので実験で付いた傷もふさがった。 ・・・跡はまだまだ残るみたいだけど。 実験室に連れてこられ、部屋の奥には女の子が一人立っていた。見たことないなあ。 「アルマ、あの子に向かってこの石をけってみなさい。」 とある研究員が言った。後ろには歯向かった時のためにピストルを構えた研究員がいる。 勿論脅しだって事は読心術などでわかっているけど。 こんな貴重で重要なあたしを簡単に殺すはずがないとわかりきっているけれど、それでも言われたとおり蹴るしかなかった。 とにかく、言われたとおりに蹴ってみることにしよう。 実験の意図はわかんないや。 あたしに究極の足筋でも付いたのかと思えば、足を後ろに引いたときに変な感覚がした。 何かがまとわり付くような。 でも、勢いをつけたし今更止めることもできずに蹴り上げた。 足のつま先から黄色く、白く光るものが出てその女の子を真っ二つにした。 悲鳴も上げることなく、キレイに、散っていった・・・。 もちろん、こんなことになるなんて思っても見なかったことなんだけど。 あたしは何がなんだかわからなくなって、頭が真っ白になる。 だけど、そこに居た研究員はそんなあたしを見てこういった。 「やったぞ!成功だ!」 研究員が嬉しそうに言うには、足から出たこの光は鎌鼬のようなものらしい。 指を弾いてみろといわれ何も解らずに自分のほうに弾くと、そこからも同じようなものがでてあたしの頬を掠めた。 「あの家に向かって思い切り腕を横に振ってみろ」と、次にその部屋のベランダから出て隣の家を指差しいわれたのでやってみると、振りかざしたときに肘から下に鎌鼬がまとい、振った瞬間に勢いで飛んでいった。 家が木っ端微塵・・・。 腕まで、おかしくなってしまった。 少し指に力をこめると、小さくビーだまサイズの丸い鎌鼬が出た。 壁に向けてそれを放ったんだけど壁は木っ端微塵。 ピストルの弾の強力バージョンのようだ。 また、人間から遠ざかってしまったのか。 そして数ヵ月後、あたし「人間兵器1号」は計画されていた全ての能力を備え付けられ・・・見事完成した。 Mi chiamo arma. (私の名前は、兵器です。) (こんなこと、望んでないのに) |