治療が終わり皆のいる部屋に戻るととりあえず自己紹介した。
MMはなんだかマーモンと気が合うんじゃないかと思うし、バーズは詐欺だとおもうし気持悪い。その横の双子も気持悪い。

ちょっとビックリしたのが六道骸の影武者となったランチア。
どっかでで聞いた名前だと思ったら、昔起こった有名なファミリー残虐事件があって、その犯人だったということは当時から知っているけどまさかあれが骸のマインドコントロールだったなんて!
恐るべし六道輪廻のスキルだわ!



Mi chiamo arma.



あたしも一応「並盛中学の喧嘩の強さランキングで一応1位だったらしいこと、本名です?」と紹介しておいた。
自己紹介が終わったと同時くらいに一匹の黄色い鳥が舞い込んでき、空中を回りながら「犬、やられた、犬、やられた」としゃべった。
数回繰り返した後、鳥はやがてバーズの指先に止まり何も話さなくなる。(その光景似合わない)



「そうですか・・・。」

正直あたしもビックリしている。
戦闘能力は沢田たちよりも犬の方が上だと思ったんだけど。
まあどっちにしても骸には勝てっこないよ。生きてきた道が違うもの。


骸の戦闘能力は恭弥と同じくらいだしね。いや、それ以上か。
殺意にいたっては、マフィアと関われば関わるほど大きくなっていく。

窓の外を見ると遠くに沢田達が見えた。勿論こっちには気づいて無いようだけど。

そういえば、骸にあたしはマフィアって言ったらどうなるんだろう?と考え、そのときの骸の反応を考えると胸が痛い。おとなしくマフィアとして生きている理由もちゃんと聞いてくれるかどうかもわからないや。


「六道骸様」

いろいろ考えていると、急にMM達でも骸でも無い声が聞こえ、振り返ると千種が起き上がっていた。

「おや、目を覚ましましたか?3位狩りは大変だったようですね千種。」
「ボンゴレのボスと接触しました。」

千種は骸しか見えていないようで、まだあたしのことはおろかMM達援軍組のことも気づいていないようだった。

「そのようですね。彼ら、遊びに来てますよ。犬がやられました。」

骸のその言葉に、千種は慌てて立ち上がろうとしたがソレを骸が制した。
「そう慌てないでください。われわれの援軍も到着しましたから。」

骸がそういってやっとあたしたちの方を見た。
でも、皆の顔は知ってるのにあたしだけは顔に覚えも無いのか「誰・・・」と小さく呟いた。

「クフフ・・・。千種、この子とは初対面じゃありませんよ。」

再会したばかりの骸のように眉間にしわを寄せあたしを睨む千種。やっぱり10年近く、しかもあんな小さいとき以来あってなかったらわかんないよねー。

「本当久しぶりだよね、あたしだよ、。」

だと名乗ると、目を見開きあたしの名前を呟いた。よかった、名前を言いえば思い出してくれて。忘れてないでよかった。

「生きてたんだね・・・。」

少し彼の顔が笑顔になったのがわかり、小さく「良かった」と呟いたのが聞こえた。
それはあたしも同じ思いだよ。

まさかもう二度と会うことも無いだろうと思ってた幼馴染にこんな形だけど会えた。

「骸ちゃん、あたしたち行って来るね。」

少しの沈黙があって、MM,バーズ、双子、そしてランチアが部屋を出て行き、部屋の中にはあたし達3人になった。


「アウディもヴィエリも生きてるよ。エストラーネオを破壊したときに生き残っていた子は全員生きてるよ。今も病気もせずに元気だしね。」

そういうと二人とも嬉しそうな表情になった。

アウディはブイヨの情報担当で、ヴィエリはブイヨのボス。ほか十数名の暗黒殺人部隊・ブイヨ隊員。
その肩書きさえ取れば、全員エストラーネオの被害者。だからブイヨ全員は勿論骸、犬、千種のことを知っている。皆この3人のことも心配してた。
ブイヨにはほかに、犬の実験の元となった狼男や自己再生が出来たり・・・いろんな人が居る。

「そういえばどうしてアウディたちが生きてるって知ってるんです?」
すっかり上機嫌になった骸はニコニコと笑っている。

「それは・・・。」

言ってもいいのか悪いのか言葉が詰まる。どう答えれば一番丸く収まるんだろう?集団生活してますとか?全員並盛中学にいます?むちゃくちゃだ。


彼らに嘘もつきたくないし、素直に言う以外は方法が見当たらない。
真実を伝えることによってあたし達の間に亀裂が入ったとしても、だ。

「あたしも、皆も、マフィアだからだよ。」

なんとなく部屋中の空気が凍りついた気がした。
少しだけ骸から怒りのオーラがでたのも、千種が無言でメガネを上げ、警戒を見せたのも見間違いじゃない。

「今なんと、言いました?」

骸の無表情は少しだけ恐怖を感じた。

「マフィアって言ったんだけど。しかも骸たちが狙ってる・・・ボンゴレの。」

あたしがそういうと、骸は怒りのオーラをあからさまに出してツカツカとこっちに歩いてき、椅子に座っているあたしの襟元をぐっと引き上げた。身長差があるために少し首が絞まる。
ここで抵抗したら100%勝てる。だってあたしは六道スキルさえも無効化できるから。
消そうと思えばいつだって消せる。 だけど相手が相手なだけに絶対傷つけたくは無い。



、自分の言ってることを解っていますか?」
「わかってる。こんなときに嘘を言うほどあたしも馬鹿じゃないわ。」

次は壁に肩を押し付けられた。
先ほど治療してもらった犬の噛み傷がうずいた。

「あなたはボンゴレのスパイですか?」
手が、肩から首に動いた。返答次第では締める気だろう。


「違うわ。知ってるでしょ?10代目候補が沢田ともう一人居る事。」
骸は無言だ。たぶん肯定だという意味か、だからどうしたという意味なのかもしれないし。千種が小さくヴァリアー、と呟いたのを聞いて話を続ける。

「ヴァリアー側に、エストラーネオ被害者オンリーの組織があるの。」

「それがどうしたというのです。」
視線が鋭くなった。
もうあたしを幼馴染としてみてくれてるわけじゃなさそう。

、あなた達は僕達を裏切ったのですね?」


その言葉が聞こえて胸がドクンと鳴った気がした。裏切るだなんて・・・。確かにマフィアを憎んだあたし達がマフィアにいることは彼にとったら裏切り行為かもしれない。
・・・でも、
「ちが、う。」
「何が違うのです。僕達の味わった苦しみを忘れたのですか?僕達をこんな体にしたマフィアを、世界を滅ぼすというのが僕達の目的ではなかったのですか?
なのになぜマフィアになどと馴れ合ってるのですか?マフィアへの憎しみを忘れたとでも?・・・ソレを裏切りというのではないのですか?」

ギギギ、と喉を掴む力を強くする。苦しい。
あたしが、あたし達がマフィアになった理由は、

声に出したくてもそれさえも許されない。

「骸様、」

千種がそうこえをかけて骸の手が放された。すえなかった空気を一気に取り込む。やばい、くらくらする。
乱期が近づいてるせいで、ちょっと能力落ちてるって・・・みっともないなあ!

「えぇ、千種。ランチアも倒されたようですね。」
「行ってまいります。」


千種はあたしを一度も見ずに出て行った。
沢田の気配が近くなっている・・・きっともうすぐ骸と接触するんだろう。
きっとスキルにぶちあたってやられてしまうのは目に見えている。
あたしは同じファミリーと、大事な幼馴染、どちらを守れば良い?

骸も部屋を出て行こうとしたので、呼吸を無理やり整えていまいち声が出にくかったけど骸の背中に声をかける。


「誰がマフィアへの憎しみを忘れたって?勝手に決め付けないでよ。」

ちらりと骸はこっちを見たが話を聞こうとはしてくれなかった。

「マフィアも世界もクソ憎い!けれど、ボンゴレは案外居心地が良いし、毎日案外楽しんでるわ。そうよ、あたしは幸せよ!」

今でもマフィアは憎い!
でもボンゴレは、9代目は、こんなあたしでも拾ってくれて、人間としてみてくれた。
中には快く思って無い奴も居ると思うけど、少なくともザンザスたちはあたし達を受け入れてくれた。
強いんならそれで良い、と。
ブイヨの皆を認めてくれて、理解しあって生きていた。

だから今あたしは幸せだ!

「大体そうやってあたしを、マフィアになった皆を敵のように言うけど、」
ドアノブを回して扉を押した。
骸の背中が消えていく。

ドアが閉まる直前に慌てて続きを言った。




幸せになって



(そういって、無理やり置いていったのは間違いなくあなた達じゃない!、と。)
(だから・・・幸せになったのに、なんで?