目覚めたとき、変な感じがしたんだ。両手が小刻みに震えていた。 そういえばもう「アレ」から三年。 そろそろまた始まるんだきっと。それの前兆なんだろうなあ。 厄介だ。 Mi chiamo arma. アレ、とは何か。 あたしには3年に一度乱期が訪れる。 大体一週間くらいなんだけど厄介な期間だ。 人間1人分にのしかかれたような体の重さというか、鉛が付き纏うようなそんな感じ。 どんなけ体が重く感じるんだって思うかもしれないけど、実はこれでやっと一般人が感じてる普段の体の重さと同じらしい。 あたしはもともと特別だから普段は一般人よりも数十倍体を軽く感じれるのだ。 まあ体重自体は一般的だけど。 そしてビックリするほど殺意が沸かなくなる。 更に瞬間移動も、闇に消す行動も、すべての能力が一切使えなくなる。 もし使えたとしても行きたいとこにたどり着かなかったり、手先から出る鎌鼬だって相手に到達するまでに消えたりと邪魔なものへと変わってしまう。 それは、きっと乱期と乱期の間に能力を使いまくっているために起こるんだと思う。 体を休める期間、みたいなものだろうか? ボンゴレ医療班でも解明はできなかった。 要するに、この一週間だけ普通の一般人になれるのだ。 ・・・ただ、成長してからつけた戦闘スキルなどはそのまま残ってるんだけど。 覚えがよかったせいかそのスキルでさえ異常なほど発達している。 それでさえあたしは特殊の特殊の特殊の特殊だから、能力が使えなくなった特殊の特殊位にランクが下がっただけで一般人に思える。 「厄介だなあ・・・」 ただ、第六感というものか、変な予感が、する。 □□□ 最近頻繁に起きている並盛襲撃事件。 うーん、最近というかこの土日で8人もやられている! しかも風紀委員ばかりが襲われてるというのだ。 やっぱり歯を抜かれてるそうで。 あたし、前に恭弥に風紀委員に入れといわれたけど断ってよかった! もしあたし襲われたら殺さない自信なかったよ。 朝、校門までいくと、恭弥と沢田とアルコバレーノがいた。 恭弥に声をかけようか迷ったけれど電話しているようなのでやめておこう。 「・・・あ。」 沢田とアルコバレーノと目が合った。 あからさまに嫌な顔しやがって!こっちだってそれなりに不愉快だっつーの。 「君の知り合いじゃなかったっけ、笹川了平・・・やられたよ。」 恭弥のこの言葉により、あたしに向けられていた沢田の視線は彼に戻される。 急に青ざめる顔を見て面白いと思った。 笹川了平、たしか笹川京子の兄貴だったような気がする。 考え込んでいるとその場に誰もいなくなっていた。 沢田は病院へ、恭弥は犯人に心当たりがあるのかそこへ向かっていったみたいだけど、一言くらいかけてくれてもよくない? 一人でそこにいるのはばかばかしかったのでとりあえず教室へ行くことにした。 下駄箱のごみもいつもどおり一瞬で消してしまい、上履きがなくなっていたのでスリッパをかばんから取り出す。 教室に入ればなんだか人数が少ない。 山本と獄寺以外あたしにおびえた顔。 ちなみに源内は作ったようなおびえた顔をしており、笹川は教室にはいない。 ・・・何? 「ははっ!の登場だぜ!皆逃げたほうがいいんじゃね?」 え、まじで何なの? 「今回の並盛襲撃事件、犯人お前なんだってな!」 「マジお前捕まれよ!」 おびえたと思ったら罵声が飛んでくる。 「京子ちゃんのお兄さんになんてことすんのよ!」 「歯抜くとか最低!」 そう来たかコイツら。 「真剣馬鹿じゃない?」 あたしが無表情でそういうと教室にいる全員が同じように眉間にしわを寄せた。 「あんた達知らないの?あたしと雲雀恭弥仲いいって。」 あたしがそういうと、引きつる者やありえねえだろ、という顔をするものもいる。 「あたし遅刻して手出されたこと無いっしょ?まあどうでもいいや。あたし恭弥と仲良いのに風紀委員とか襲うわけないでしょ。あたしが犯人なら間違いなくあんた達を優先順位にするに決まってんじゃん!考えたらわかるでしょ!」 そういって鼻で笑ってやると怒りがこみ上げてきたのか獄寺が掴みかかってきた。 「てめえ!10代目に手出したら承知しねぇぞ!」 結局はコイツは沢田なのね〜。 「はいはい結構結構。」 手を振り払って自分の席に着いた。 ・・・にしても今回の事件は厄介だ。 もし、相手がボンゴレ沢田のファミリー、もしくはファミリー候補に手を出せばあたしは守らないといけない。 それは自分の意思なワケなんだけどね。 え、意外? だっていくら嫌いだといったり、10代目候補はザンザス派の人間だけど言えば一応同じファミリーなんだから。 ファミリー同士の戦いならどうでも良いけど、他所者に襲われているところを黙ってみてるわけにはいかないんだ。 同じファミリーを守るのは当然。一応時期10代目候補だし沢田死んだらボンゴレ内の混乱は大きくなる。 今、乱期が来そうな時期にマフィア間の闘争が起こったらシャレにならないよねー。 でもまあ、恭弥が行ったのなら大丈夫だと思うし、あたしの出る幕も無いか。 ため息をつき、ボンゴレを狙ってきそうなファミリーっていうとどこがあるだろうか、など考えてみたが全然思い浮かばない。 今現在、見事マフィア界はつまらないくらいに平和なのに。 とすると、マフィア以外ってこと? そんなの何があるんだろう。 授業を受けていたがどうやら今日は急遽3時間の授業で終わって帰ることになった。 そりゃあへんな襲撃事件があったんだもんねー。 飛んでくる罵声などに耳を傾けずに校門から出て家に帰ろうかと思ったが急にモンブランケーキが食べたくなり、最近見つけた並盛商店街にあるケーキ屋さん「ラ・ナミモリーヌ」へ買いに行くことにした。 ココのケーキは本当においしい。是非パティシエをあたしの専属にしたいくらい。 今日は財布にお金が多めに入ってることだし、さっき通りかかった和菓子屋さんによって見るのも良いかもしれない! 帰りはおすし屋さんでお寿司を買って日本を満喫してみようかしら。 こんな極悪非道なあたしでも甘いものには目が無いのだ。 よく似合わないといわれる。ザンザスにまで笑われたことがあるけど、あなたの笑顔も似合わないわよ。あえて言わなかったけど。 今度誰かイタリアから呼んでケーキバイキングにでも誘おうかなあ。 今日はどれを買おうかなあと迷っているといきなり爆発音が聞こえた。 周りの人たちが悲鳴を上げる。 日常を過ごしてきていきなり商店街から爆発音が聞こえることなんてあるんだろうか。 絶対無い。 気配を感じ取ると・・・獄寺?ってか爆発した時点であんたとは思っていたけど。 獄寺って今日早退してなかったっけ?なんでここにいるんだろ。 わずかに感じる誰かの殺気。まさか、これが噂の襲撃?恭弥はどうしたの?もしかして失敗? 獄寺・・・本当頼むからこんなときくらいすぐ家帰ってよ。 あわててモンブランなど8種類を選びお会計を済ませ、買ったケーキをかばんに入れて走った。 全部1日で食べてやるつもりだったのに! こうなったらあたしが奇襲するしかないよね。 □□□ あたしが駆けつけた頃には敵と思われるような奴は居なかった。 寝転がってる獄寺と、獄寺の様態を見ている山本と沢田。 とにかく事情聴取だ。急いで駆け寄った。 彼らの近くに立つと二人はあたしを見上げてあたしに対する殺気をあふれさせた。 「てめぇの仕業か・・・!」 「許せないよ、・・・!」 こいつら本気であたしが犯人だと思ってるわけ!? だけど今はそんな場合じゃない。殺気には素無視だ。 「・・・怪我は?」 あたしの言葉が予想外だったらしく二人は驚いていた。 てっきり罵られるんだと思ってたらしい。 「その様子じゃ、重症は獄寺だけみたいね。」 血だまりができているあたり、出血がひどいんだろう。意識も無い。 しゃがんで、横向きに倒れてる獄寺の体を仰向けにして傷を見た。 「この傷・・・」 小さい針がいくつも刺さっている。 こんな傷を作れる人なんてあたしの記憶の中では一人だけだ。 (で、でもそんなはずは・・・) 珍しく動揺してるのが自分でも解る。 「相手、どんな連中?」 ポケットからボンゴレ医療班に特別に作らせたかなり効く止血剤があるが彼を攻撃したのがあの人ならば毒が塗ってあるに違いない。 止血の前に毒を抜くのが先かも。 並盛にはシャマルがいる。 女しか診ないという噂けれどここまで酷ければ事情が変わるだろうか? ・・まさかこのあたしがこいつらのためにここまで考えるなんて思っても見なかった。 「あれは黒曜中の制服だったぜ。」 中学生・・・たしか、あの人も年は同じくらいだった。 でも、違う、違う。違うという確証がほしい。 「ヨーヨーで攻撃してきてよ・・・。そっから針が・・・。」 胸騒ぎがする。もしかすると、本当に彼なのかもしれない。 ヘッジホック・・・彼の武器と酷似している。 「頬にバーコード書いてあった。」 沢田がそういった瞬間、ドクンと胸がなった気がした。 やばい、手が震える。 そこまで外見特徴や全てが一致していれば嫌でも確信になる。 もう、絶対に彼だ。 あたしはかばんのなかからケーキの入った箱を取り出して山本に渡す。 「あたし、行って来るから。賞味期限今日までだしあんたら食べなよ。毒は入ってないから。」 そういって立ち上がると「え、?」と呼ぶ声が聞こえ振り向く。 「獄寺は並中の保健室に連れていきなよ。保健の先生、腕良いって噂ジャン。」 そういって黒曜中学に向かった。後からかかる声は全部聞こえないフリをした。 弱い奴は黙って寝てろ。 黒曜中学は並盛よりもも随分荒れているようだ。 恭弥が見たら喜びそうなほど酷い。 さっそく心当たりの有る3人組を探そうと思い敷地内へ足を踏み入れた。 だがもちろん学校に彼らがいるはずもなく、たまたま見かけた教師を気絶させそいつに完璧に変装。 職員室にもぐりこみ生徒調査票を調べるとすぐに出てきた懐かしい3人組の名前が。 だけど載っていた住所はおそらくフェイクだ。 良く考えれば奴らがまともな住所を持っているかといえばNOだ。 面倒くさい。 変装を解いてあたしが来てる並盛中学の制服を幻覚で黒曜中学の制服に見えるようにしてそこらへんの人に聞く。 「六道骸って知ってる?」 「へ?あ、はい・・・。」 名前を出しただけでその相手は震え上がった。 ・・・どんなけ怖い印象を与えてるんだよ、あいつは。 「家知らない?」 「し、しし知りませーん!」 そういって逃げていった。 ますます学生生活の骸たちが気になるんだけど。 まさか地獄道で幻覚汚染してるんじゃ・・・。 それから何人に聞いただろうか? 皆骸の名前を出すと逃げ出す。 うぜええええ。本当何回も言うけどここの学校骸の恐怖で支配されてんじゃない? くそ、手がかり何も無いよ。 途方にくれたときに思い出した。 あたしには 瞬間移動という能力があって行きたい所を思い浮かべればいけるというものだ。 思い出せるのは幼かったあの頃の顔。しかもぼんやりとしか思い出せない。 犬は可愛くって、千種は大人っぽく、骸は・・・ギザギザがあったような気がする。 脳裏に浮かべ軽くとび瞬間景色が変わり着地した。 目の前に広がるのは廃墟のような大きな建物。 (本当にこんなとこにいるの?) 首を傾げつつも施錠してある門をするりと抜けると、草が生い茂っていてなんとも不気味なところだと感じた。 微かに感じる恭弥の気配とたくさんの血のにおいがするためにやっぱりここであってたんだと確信し、彼らがいるであろうでっかい建物に向かって歩みを進めた。 「クフフ・・・どうやら招かざる客が来たようですよ。」 「・・・誰れすか?」 「ランキング第1位の・・・さんが。」 既に脱獄したメンバーも、黒曜センターのとある一室に集まっている。 、と名前を聞いてM.Mは「1位が女〜?!ありえなーい!」と叫んだ。 メンバーはそろった。あとは目の前で寝ている千種が起きるのを待つだけ。 彼らに怖いものなんて無い。 「っひゃー!どんな女か楽しみらびょん!」 「いきますよ、犬。」 そういって二人は部屋を出て行った。 敵はすぐそこ (彼らはいつしかと名づけた少女だとは思いもしない) (彼らと彼女が再会するのはもう少し後の話。) |