教室に戻ると、源内が人に囲まれていた。どうやら笹川京子と同じようなキャラらしい。
なのに、あたしを見つけるとそばに近寄ってきた。




Mi chiamo arma.



「自己紹介まだだったよね?あたし、源内夏衣!そっちも教えてよ!」

こいつ、あたしをヴァリアーのって知って行動してるの?

「・・・

とりあえず日本名を答えてみると向こうは笑顔で
ちゃんっていうんだあ!なんだかハーフっぽいね!」

あたしの両手を握って笑顔で言う。源内の頭の中をちょっと探ってもあたしの正体には気づいて無い。
多分、あたしとはまだ話してなかったから今話しかけてきたんだ。クラス全員に気に入られ、良い印象を持たそうと思ってるんだろう。
あたしもその対象の一人。

あぁ、このキャラも作ってることにあたししか気づかないんだ。これだから素人は嫌いだ。
沢田たちだってもう「素人」なわけないのになぜ気づかないの。マフィアだって。

ボンゴレの超直感は肝心なところで鈍いんだなあ・・・。

まあどうせ沢田ファミリーに入れるってアルコバレーノが言ってたし、ボンゴレ内で言えば敵だけどマフィア界全体で見れば一応仲間だし放置してても大丈夫、か。


「夏衣ちゃん!さんとは話さないほうが良いよ!」

沢田がそういった。その発言に源内はわざとらしく首をかしげ「ちゃん良いこだよぉ?」と皆を上目遣いで見た。
なんだこのぶりっ子具合は。っつーか、あたしと一言しか交わして無いのに良い子発言かよ。

任務があるし、源内嫌いだし・・・こいつも笹川同様利用させてもらおう。
これから利用させてもらうんだし、せめて一言くらいは会話してあげよう!

「・・・確かにハーフかもね。両親あたしが小さいときに死んだし知らないけどね。」

そういうと源内は悲しげな顔をした。正確に言えば母は父に殺され、父はあたしに殺されたんだけどね。
そして一言「ごめんね・・・かわいそうなこと聞いちゃって・・・」という。

「つらいことがあったら何でも頼ってね!」とか言われる始末だ。案外普通に会話してるように見えるあたしと源内を見てなんだか周りのギャラリーは不思議そう。

ま、会話はここまで。
沢田達の殺意向上のために利用させてもらうからね!


「・・・あさりちゃん?シジミちゃん?あ、貝ちゃんだっけ?どうでもいいよ。あんたなんかに心配されたくないなあ。あたしにかまってないではやくそこのカス共と戯れてなよ。カスにはカスがお似合いだよ。」

そ、あごで源内の机に群がるクラスメートをさして笑いながらそういう。

笑っていると、源内は少し涙目になってうつむいた。

「転校生泣かせてンじゃねえよ!」
「最低な奴・・・!本当に最っ低!!」

皆が口々にあたしに向けて言う。そして仕舞いには笹川が涙目で出てきて何かと思えばあたしの頬を叩いた。

ちゃん、私だけを苛めるならいいの!なのに、夏衣ちゃんまでいじめないで!」
そう言って彼女は泣き崩れた。すごい演技力。

そして笹川に駆け寄って「ごめんね!ありがとう、」と一緒に泣き崩れる源内もまたもう今すぐ殺したくなった。


「ずっとやっときなよ。そのうそ臭い友情ごっこ。」

そう吐き捨て、あたしは屋上へと足を運んだ。なんでさっき屋上行ったばっかなのにもう一度行かないとけないんだろう。
こいつらが屋上に行けば良いのに。






□□□



屋上に行けばそこには給水タンクの上で寝てる恭弥が居た。
「あれ、何してんの?珍しいじゃん。」

話しかけるとむくっと起き上がってため息をついた。あ、なに、まじ恭弥らしくないんだけど。


「何かあったの?」

あたしも給水タンクの上に登り横に腰を下ろした。

「最近妙に変な事件が多くてね。」
「事件?」
「ここ3日間で並盛の生徒が3人も襲われたんだ。」
「へーえ。」

3日間で・・・あたしは別に何かやった覚えも無いしなあ。
「たまたまじゃないの?」

あたしがそういっても恭弥は首を横に振る。

「全員、何故だか歯を抜かれてる。・・・見つけたら絶対僕が咬み殺すよ。」

そういって給水タンクから飛び降り、学ランを翻しながら屋上を出て行った。
なんだろなあ、恭弥に恨みがある奴の仕業?
いやでも歯を抜くとかなかなかの拷問ジャン。

マフィアを潰す際に、そのファミリーの重要人物から情報を聞きだす。
でもなかなか口を割らないからあたしは拷問に移すのだけど、それがまた楽しくってたまにそのまま死んじゃう人も居るけどさ、これって究極のSMだよねー!
まあ、その拷問が大好きでわざとどうでもいいマフィア潰してた時期もあったっけ。
今度取り入れてみよッかな!

よし、早速どっかのやくざでも殺しに行って、使えるかどうか試してみよう!
そうおもい、給水タンクから飛び降りて、更にかばんでも取りに行こう。

そう思えば勝手に屋上の扉が開いた。

「あら、こんなところに居たの、さん。」

---源内夏衣。


「何か用?邪魔なんだけど。」
あたしが不機嫌をあらわにするといきなり源内はあたしの肩を掴み壁際に押し付けた。
こういう時って、おびえる演技、必要だよね?


「あんたさあ、せっかくあたしが話しかけてやってんのにその態度はなんなわけ?殺されたいの?」

「え、殺すって・・・。」

あたしがちょっと挙動不審になりながらそういうと源内は耳元で
「あたし、マフィアなんだよね、殺し屋。」
「そ、そんなの嘘・・・。」

あたしが冷や汗を出せば向こうは演技に気づかない、本当にそれでマフィア?
しょうがないよね、ボンゴレ日本支部といえば、無能だもんね。

あたしにピストルを押し付けてきた。

「ほら、このピストル本物だよお?あたしが引き金引いちゃえば、あんたなんて死ぬしい?」
「ひっ!」

本当にこいつばかだ!確かにピストルは本物だよ。だけどあたしもピストルなんて3丁持ってるって。

「あのね、さん。あたしさ、マフィア界で一番強いって知ってる?」
「いち、ばん・・・?」
「そう。ブイヨサイケデリックっていってね、結構有名なのよあたし。」

とりあえずピストルをおろした源内。あたしはひたすら笑いをこらえる。
あんたがブイヨサイケデリックかよ。ありえねえええ。

「ま、殺されたくなかったらおとなしくあたしに苛められることね!そして苦しめば良いのよあんたなんて。いきなり京子と意気投合してさあ〜、あたし達二人であんたを地獄に突き落としてあげるから覚悟しなよ。」

そういって源内は出て行った。
こいつ、本当にあたしのこと気づいてないや。
ブイヨサイケデリックであるあたしに向かって「私がブイヨサイケデリックだから」発言?
本当うっとうしい。何を勘違いしてるって言うか妄想してるっていうか。

一言で言うとウザいんだよね、そういうの。同じファミリーだからなかなか殺せないしさあ。
ファミリー同士で殺しあう機会無いのかなあ?




あったらいいのになあ



(そのときは、許しを請うても許さないよ)(こいつの歯を抜けば良いの?)