「えー、新しく仲間に入った源内夏衣さんだ。仲良くするように!」

「げんないかいです!仲良くしてください!よろしくお願いします!」

9月のはじめ、突然の転校生がきたようだ。あたしは転校生、には興味がなかったけれど、声に聞き覚えがあるような気がして顔を上げた。





Mi chiamo arma.





まてよ、あの女、たしか…
一度、どこかで見たことある気がする。

なんだかきっとあたしにしかわからないと思うけどかすかに血の臭いがするあたりから、裏社会の奴ということは間違いないらしい。えーっと、どこのファミリーだっけな、思い出せない。

思い出そうと彼女を凝視してると沢田の隣が空いてたらしく彼女はそこに座った。

「はじめましてどうぞよろしく!あたしのことは夏衣って呼んで!」
「え?あ、うん!」

いきなりなれなれしい明るい奴。よく言えば社交的というか。
あたしと逆。でも、その明るさは作られたものか、本性かわからない。マフィアなんてそんなものだと思う。それを見極められるのかな、沢田は。

あの特徴的なアシメの黒髪に茶色のメッシュが特徴的。大きな垂れ目、口元のホクロにやわらかい笑顔…

げんない、かい

くそ、どうしても思い出せない。あたしはいろいろな情報知りすぎていて、その中でどうでもいい人間なんて星の数ほど居る。
まあ思い出せないくらいだしきっとこいつだってそのうちの一人だろうな。

ブイヨのみんなはいま任務中。今はフリーのヴァリアー・・・ベルやレヴィはまともに調べてくれなさそうだしマーモンに聞くのが早いけど金を取る。いや、でもあたし相手には流石に取らないか?まあいいや、ここはザンザスに調べてもらおう。

・・・にしてもマフィアがここに何のよう?ボンゴレにでも付け入ってスパイでもしようとしてるわけ?何たくらんでんだろ?もし、マフィア間の抗争に発展しそうならば身内である沢田を守らないといけない。
もしかするとアルコバレーノが呼んだのかもしれないし。
まずは、調べてから動こう。


獄寺も、いきなり沢田に馴々しい源内にたいしてか、源内の一般人らしくない雰囲気を読み取ったのかすこし警戒してるようだ。
それ以外の人は皆、興味ありげに源内の方を見ている。
きっとこいつの前の転校生があたしみたいな厄介者だったから伺ってるんだろう。
どうせ見たって本性なんてわかるはずもない。

ポケットから携帯を出して「手のあいたとき電話して」とザンザスに送った。するとすぐに携帯がなったのでHR中だったけどきにせず立ち上がり教室を出ようとした。


「おい!!どこ行くんだ!」

担任がそういったので源内のほうに夢中だった皆がこっち見た。

「携帯鳴ってるから電話しに屋上に行くだけだけど。じゃ。」

階段のとこまでやってきて全教室の死角になったところで瞬間移動し屋上まで来た。



「もっしもーし」
「遅せえ」

担任が引きとめたせいで出るのが遅くなってしまい、案の定機嫌が悪いザンザス。
「ごめんってば。で、早速用件良い?」
「ああ。」
「人を調べてほしいんだけど。源内夏衣ってゆうの。」
あたしがその名前を出した瞬間にザンザスは「ああ、あいつか。」と言う。
「え?知ってるんだ!」
予定外だ、きっとこの名前を出してもザンザスはわからないって言って結局自分で調べないといけないハメになると思ってたのに!

「ボンゴレ日本支部の幹部の娘だろ。」
「あぁ!」

日本支部の幹部の娘と聞いてやっとあたしの記憶が繋がった。

源内夏衣。思い出した。日本支部のボス・源内有男の娘で日本支部で幹部を務めている女。以前何度かあったことがある。だけど歳は確か23だったはず。
まああたしがここに居る時点でおかしいから別にそこは突っ込まないでおこう!

でも、この源内親子、あたし大嫌いだったはず。
夏衣はヴァリアーのボスがザンザスじゃなかった頃、入隊の候補だったけど入隊直前でいきなり中止となった。
そこから親子はヴァリアーを毛嫌いして本人の居ないところでは周りにはクソ集団呼ばわりしてる。

アレは確か捜査の一環で別人に変装した時だったっけ?
マフィアのパーティーのときたまたま源内親子と同じテーブルだった時に、ヴァリアーのことボロカスだった。
殺したかったけど、そのときは本当にたまたまテーブル一緒になっただけだったし、どこのファミリーか知らなかったからやめた。

でもやっぱりいくら影でいろいろ言おうとあたし達が怖いらしくあたしやザンザスを目の前にすると恐怖で震え、ペコペコしだす、都合の良い奴。



源内親子が日本支部の人間だということを知ったのはゆりかご事件が起きた後だった。 ヴァリアーが謹慎拘束されてたのをいいことに、日本支部がヴァリアーを死刑にしろと強く主張したのである。

ちょうどそのころからブイヨという組織が誕生し、ヴァリアーのバックについてるということが知れ渡っていたのに命知らずなことをいきなり言うからおかしいと思ってたら。
日本支部のボスがあの男で、幹部があの女だった。
きっと誕生したばかりのブイヨの恐ろしさを知らなかったためだと思われる。
それに、ブイヨの人間が表向きヴァリアーになってることを知らなかった。
だから、自分がヴァリアーとして知っている人間が9人、実はブイヨで無関係だということも、自由な野放しになってることも知らなかったんだろう。

なんだか苛立ったあたしは源内有男の屋敷を燃やしてやった。
そのときに源内はあたしの顔を見たはずだ。そして「なんで、謹慎拘束中のヴァリアーが・・・!!」とおびえていた。

今回も、沢田のいるこのクラスに転校して来て沢田側について10代目の一員にでもなってヴァリアーを消す気なのかしら?
まあいいや。あたしは変装せずに会ったのは父親だけで、こいつはあたしの変装した姿でしか会ってないし今の本当の顔を知らない。
だからまさかあたしがだとは絶対に気づいてないだろう。
こいつは元々気に入らないし沢田のファミリーに入るなら、笹川のように遊ばせてもらおう。


「ま、ありがと。じゃ、近いうち一回そっち戻るから。」
「おう。じゃあな。」

そういって電話を切った。



すると、いきなり小さな殺気がした気がして数秒先を読み取るとあたしに銃弾が飛んでくることが予想できた。
銃弾の速さ、角度、位置、すべてを計算して、頭をほんの少しだけ除けてみようと傾けた瞬間に小さな銃声が響き、あたしの少し後ろの壁に穴があいた。

誰よ、こんなことする阿呆は。まあ、犯人はわかってるんだけど。


「うざいよ、アルコバレーノ。」

ポケットに携帯をしまうと、立ち上がった。それと同時にアルコバレーノはあたしの前に姿を現した。

「チャオッス。さすがだな、ヴァリアーは。」
「・・・源内夏衣。あれ、何?」

あたしがそう聞くと、アルコバレーノは少し笑った気がした。

「お前、ツナのファミリーに入らねぇか。」

「絶対嫌。」

真っ平ごめんだわ、そういって教室に戻ろうとした。源内に対する答えはなし、か。じゃあこいつに用はないや。
だけど、屋上のドアノブに手をかけたところで「だから呼んだんだぞ。源内夏衣を。」・・・アルコバレーノはそういった。

「は?」

「お前は9代目の任務で並盛に来た。任務の内容はツナ達の戦闘力でも上げるためだろうな。
最終的にツナのファミリーに入れといわれてたけど、それはお前は断るつもりだろ?」

「・・・根拠は?」

「お前が来てからツナ達のマフィアとしての才能が著しく上がってきてんぞ。特にツナが。」

「・・・正解。感謝しなよ。で、何で源内夏衣なの。」

「あいつは強いからだ。」

強いの?あれが?あたしは首を傾げてたら、あいつは一枚の紙を見せてきた。

「フゥ太の強い女マフィア・・ランキング・・・?」

1位「ブイヨサイケデリック」
2位「源内夏衣」


は?だから何?

「お前の名前なんて入って無いぞ。名前だけで実際弱ぇんだな。お前。」
「こんなの出鱈目よ。」
「いや、フゥ太のランキングは、正確だぞ。」
「・・・そうね。まあ、ある意味納得だわ。」

あたしの、の名前がなくても結構。
フゥ太のランキングの中ではあたしはじゃなくてサイケデリックの名前のほうが優先されてるのか。

「サイケデリックには敵わなくてもお前よりは強いってことだぞ。源内は。」

そういってアルコバレーノは消えていった。
残念なのはあんたよ。あたしがブイヨサイケデリック本人だというのに。あたしが1位なのに!それに気づかないあんたを、見てて痛いよ。
あんた自分であたしのこと敵わないって言ったようなもんよ。

・・・でも、なんかすごく悔しい!勘違いしてるくせにあたしを見下しやがって・・・!



いつか後悔させてやる

(どうやったら源内より強いって証明できるんだろう)(いっそうのこと殺してみようか)