「どーぞ」
「お、おじゃまします。」

自分からあたしと一緒に居るとか言ってたくせに、いざ家、というか借りてるホテルにはいってくるとなぜか緊張しだすディーノ。
まぁ確かにディーノには女ッ気はこれっぽっちもないし、むしろディーノの女友達なんてあたししか居ない気もする。(うわぁ、ディーノの将来心配になってきた!)
だから一人暮らしの女の部屋に入るのはこれが初めてだろうなあ・・・。ご愁傷様。






Mi chiamo arma.





一通り落ち着いたところで、ディーノには甘いカフェオレ、あたしは普通のコーヒーをつくった。


「いやあ、まさかここで再会するとは思わなかったぜ。」

ちょうどあったクッキーをたぶん無意識にぼろぼろこぼしながら話す。
あーあ、今日は部屋の掃除が大変だ。

「で?ディーノは、ボンゴレ10代目候補見に行かなくてもいいの?」
「良いって!実はもう昨日会ってきたんだ。今日も暇だったから邪魔してただけだしよ!」
「そっかそっか。」

なんじゃそりゃ、とおもったけどまぁディーノらしいや、とおもい流すことにした。


「ん?その制服、ツナと一緒の学校じゃねぇか。」
「え?あ、うん、そうだね。」

「おぉ!ってことはツナの護衛とかか?」と、ディーノは聞いてきたので、あたしはそんな感じ、と返しておいた。うん、あながち間違ってない気もする。

「リボーンの奴、そんなこと一つも言いやがらなかったぜ!隠してやがったな!ツナのファミリーにが入ったら敵う奴なんていねぇよ。でもヴァリアーなのにこっちの味方でいいのか?まぁいいか!ついでにブイヨとかいう組織もこっちに付いてくれたらいいのにな!」

ニィっと笑いながらディーノは言う。あれ、勝手に沢田のファミリーに入ったことになってるのはなぜ?任務には最終的には沢田ファミリーに入ることになってるけれど、あたしにはその気がまったくない。暇になってから9代目に抗議しに行くつもりだ。やっぱり、拾ってくれた9代目に恩はあるしとても大事な人だけどこれとそれは別だ。

ブイヨとヴァリアーは常に共存している。共に過ごしてきた仲間、ザンザスたちを、裏切れるはずなんてない。誰がなんと言おうとブイヨは全体でヴァリアー側なのだ。

それに平和主義、穏便派の沢田が10代目になっては、ダメなのだ。あたしを自由に行動させてくれる、平和という言葉の対義語のようなザンザスが10代目にならないと、あたしの・・あたし達、ブイヨも野望が潰れ、ボンゴレに居る意味がない。

だから、9代目がなんと言おうとあたしはザンザス側。それを却下されるものならば、あたしは組織を抜けてもいいと思ってる。抜けたからといって誰もあたしを潰そうとはしてこないから大丈夫。ヴァリアーの,を潰そうなんて、自滅したい奴が考えること。ボンゴレ全体、いや世界全体でもあたしにかないっこなんてないよ。

とりあえず9代目とザンザス以外に仕える気はない。あ、ブイヨのボスは、どちらかというと友達かなあ?ボスというか、ブイヨは全員友達だ。ボスは一番年上とおもわれる奴がなっているだけ。他に言えば、もっと深いところの仲間だ。
ブイヨは、特定の条件を満たしてる人物の集まりみたいなものだから。
エストラーネオの実験台、という特定の条件を。

だからこそ、ブイヨ全体でこの野望を果たさなければならない。最低あたし一人ででもやってやる。そのためには、なんとしてでも10代目にザンザスを。



チラっと時計を見れば夕方の4時。


「そういえば、遅いなあ。」
「え?何がだよ」
あたしは小さく呟いたつもりだったのに、ディーノには聞こえてたみたいだ。

「ん?いやあ、ケーキを注文してたんだけどさ、6時間待っても来ない。」
「ろ、ろくじかん!?それって、店に電話したほうがいいんじゃね?」
「うーん。」

鮫を早く持ってこさせる方法、何かないかなあ。呪い殺す!!って脅すのもいいけど、最近脅してばっかだし何か他に・・・。

「あ、ディーノ、一緒に写メ撮ろうよ!」

そう言ってあたしは携帯でカメラを起動して、ディーノの隣に行き、座りカメラをかざした。すこし密着しただけでディーノは赤面だ。え、どんなけ女慣れしてないのよ。異常でしょう!もっとザンザスとかベルとか見習おうよ!

テンパるディーノをほうっておいて「いくよー、ハイチーズ」でパシャ、とまずは1枚。ディーノ、どこ見てるかわかんない。
「もう一枚、いくよ。」

2枚目になると少し慣れたのかピースをしてニカっと笑う余裕が出てきたみたいだ。それを確認してまたハイチーズ、と声をかける。パシャ、となる寸前であたしはディーノの頬にくちびるを押し当てた。

そして、事を理解したらしいディーノは今まで以上にテンパリ初めてしまった。

「え!?ちょ!?え、え、!?」
「慌てすぎじゃない。ほっぺにキスしただけで。こんなのでそんなんなってたらどうやって挨拶とかすんのよ。」
ちょっと笑いながらそう言ってやるとディーノは「それとこれとはなんか違うんだよ!」と言い張った。顔真っ赤!
そういう問題?と聞き返せば、そういう問題だ!というのだ。
あたしは任務で標的の愛人になってふところ探ったりするために抱かれることくらい平気だし、むしろそういう行為は大好きだし、女という立場上だからかよく仲間にだって誘われ、喜んで抱かれてしまうのだ。そういう行為は、一般人なら愛する人としかしないのだろうけど、あたしは気持ちがよければ誰でもいい、のだ。人を殺すくらい大好き。


それに比べてディーノは純粋すぎる。女遊びを知らないな。

ま、とりあえずそのほっぺにキスの写メを鮫に送った。ケーキ二人で食べるから早くもってきてね、という文章とともに。

鮫と跳ね馬はどうやら仲が悪いみたいで、早く到着させるにはこの方法が1番いい、と思いついたのだ。なぜなら、鮫はあたしに好意を寄せてるらしいからね。ルッスーリアがこっそり教えてくれた。色恋沙汰にはあたしはまったく興味がないからわかんない。

ppppp!!

突然携帯がなった。これはあたしのじゃなくディーノのだ。

「もしもし俺だ。ロマーリオか!え!本当か!すぐ行く!」

どうやら急用が入ったらしい。きっと部下が何かやらかしたのだろうか?


「わりぃ!急用が入った!また暇なときに遊びに来るからよ!じゃあな!」

と、あたしの部屋をものすごい勢いで出て行った。久しぶりに会えたのに、話してた時間はたったの30分足らず。またっていつなんだろう?次会う時は、またこうやって楽しく話せるかなあ?それもこれも、ボンゴレしだい。マフィアとはそんなもんだ。
pp!pp!

一息つこうとすれば次はあたしの携帯がなる。画面を見ると相手はブイヨのボスだ。

「チャオ!どうしたの?」
「いやあ、どうだよ。お前いねえとつまんねえ。はやくそのつまんねえ任務終わらせろよ。」
「あたしだってこんな任務早く終わらせたいよ。弱い奴を育てるなんて難しい。やっぱあたしにこんな地味でつまんないの似合わない。」
「だよなあ、お前は野望に向かって殺ってるときが1番綺麗だぜ。」
「そりゃね、あたしの野望と、エストラーネオの人間兵器の製造目的が偶然一緒なのはウザいけどね。でも生憎、”リンピド”曰く、マフィア界は今は平和らしい。」
「あー。でもそこまでの過程の理由が違うからいいじゃん。平和?そういうときこそ“ネーロ”の役目じゃねえ?お前にしかできねえ喜劇じゃん。平和の破壊、は。」
「まあね、平和に亀裂を与えるの、あたしにとっては最高楽しみだし。たしかに喜劇そのものね。喜劇の終わりには血液が飛び散るけど。じゃあ、イタリア帰って最初の楽しみは二人で分かち合おうね。“ロッソ”」
「あぁ、じゃあな。」


“リンピド”、“ネーロ”、“ロッソ”これはすべてブイヨの中でのコードネームだ。任務中、名前でも通り名でも呼べないため、自分の能力に関わる色で呼び合っている。



リンピド、こと本名アウディは透明という意味で、情報専門の頭脳派女。マフィア間闘争などの情報収集に秀でている。あたしに暇がないとき、すごく頼りになる。

ネーロはあたし、のこと。黒といういみ。あたしは、なんでも出来るので何色にでも染まれる虹色なのだろうけれど。数ある能力の中で主な能力は闇をあやつり闇に溶け、闇のようにわからない存在、実験自体もマフィアが触れることのできない、エストラーネオ内だけの機密事項、闇部分であることからと言われ、ブイヨを体現してることから黒色になった。

ボスのロッソこと、本名ヴィエリは、炎をあやつれることから赤色のロッソになった。





そして、ディーノが食べ散らかした後のゴミなどを処理しているとベランダの窓が叩かれる音がした。何事かとおもいそっちのほうを向くと窓の向こう側ですごい血相をした鮫がいた。片手にケーキの入ったボックスを抱えて。

「いやあご苦労だね。」

そういいながら窓を開けると息を切らしたスクアーロが入ってきた。え、息が切れてる?もじかしてものっそいスピードで来たとか?「ちょっと、ケーキぐちゃぐ、」ぐちゃぐちゃになってんじゃないの!?と言おうとしたその刹那、



「、え?ちょ、どしたの。」

この鮫に抱きしめられていたのだ!挨拶とか、そんな軽いもんじゃない。あたしよりも約10センチ高いスクアーロに無理やり吸収されそうなくらい抱きしめられている。やっぱ、ルッスーリアの言うことはあながち間違っていないようだ。
とりあえず尋常じゃないスクアーロの背に腕を回し子供をあやすように叩く。

「ゔお゙ぉぃ・・・」

1分ほどそのまま固まった後耳元でちょっと威力の無いいつもの口癖を言う。彼はいつからおい、と普通に言えなくなったんだろうか?なんて場違いなことを考えながら、スクアーロになあに?と返す。

「跳ね馬はどうしたぁ?」
「あぁ、ディーノならお菓子食べ散らかして帰ったよ。掃除大変とおもわない?」

あたしがそういうと、腕を放し部屋中を見渡し少し顔をゆがめた。


「あいつは、ガキか。」
「どうしたらこうなるんだろね、」

改めて見ると、癇癪起こしそうなくらい汚い。



「さ、一緒に掃除手伝ってよ。終わったら一緒に食べよー。」

あたしがスクアーロに言うと、は?と言いたそうな顔になった。なに、手伝うのが嫌なの?

「ケーキ、跳ね馬と食うんじゃねぇのか、?」
「何言ってんの、あたしは二人で食べるから早くもって来てねとしか送ってないよ。最初からあたしはあんたと半分こするつもりだったし。」
そう言って掃除機のコンセントを繋ぐと後ろから「、」と呼ぶ声がしたので、振り向くと「お前は最高にいい女だぁ!」と返ってきた。
「当たり前ジャン、誰とおもってんの、」
、俺らから、離れんなよ。」

そうか、スクアーロはあたしがディーノと一緒にいることによって何らしかの不安を覚えるわけだ。沢田側であるディーノと仲良くしていることで、あたしが沢田側に付くんじゃないか、それならもう勝ち目はない。というそんな不安。

「当たり前、ディーノは、友達。あんた達は仲間。あたしのなかで友達よりも仲間のほうが大事なの。それくらい覚えておけ馬鹿鮫。あんた達ほど楽しい奴はいないって。」

だから、心配しないで、

あたしがそういうと、ニっとスクアーロは笑って、ヴァリアークオリティで部屋の掃除をはじめた。