午後の授業なんてほうっておいて家に帰った。さぁ、明日からの学校がものすごい楽しみ!

家について荷物の整理の続きも終わった。早速パソコンを立ち上げて特殊コードを打ち込み使用可能にして、そして30行程度の9代目への報告書を書き上げた。
そのあと、適当に何かを食べて昼寝したり自分の使うワイヤーの手入れをしたりしているといい時間になった。

「さぁ、暇になったし。遊びにでもいこうかな。」

時刻は夜の8時ごろ。あたしは何も持たずに家を出た。目的?決まってるジャン。ただの“暇つぶし”でしょう。




Mi chiamo arma.







家に戻ると、すでに朝の7時過ぎだった。一睡もしてないわけだけどだいぶスカッとした気分になっていた。テレビをつけると朝だし変なアニメかニュースしかやっていない。大体あたしは日本の人間じゃないし日本のニュースなんて興味ない。政治だって誰がどんなことをしようと関係ない。

どちらかというとイタリアのことのほうが興味があるのに。皆、元気かな〜、って!そういえば日本に来る前に跳ね馬と出かける約束してたんだっけ!あ〜あ、無理になっちゃった。せめて日本に行くことくらい言っておけばよかった。
あいつはヴァリアーには居ない柔らかさや優しさを持ってる素敵な奴だ。まぁ確かにあいつは純粋な心を持ちすぎてるから、一緒に悪さはできないしあたしが好き勝手人を殺しちゃうのに不満を持ってるらしいけど、ソレを差し引いてでも好感度は高い。(よく叱られたっけ。)
あとで詫びの連絡を入れておこう、と思いながらテレビを消そうと思ったら気になるニュースが飛び込んできた。

『速報が入りました。今日の明け方未明、全国的に指名手配されていた暴力団グループ、--組の幹部総勢40名が特盛町のアジトで死んでいるのが発見されました。また同時刻、小盛町でも他の暴力団グループ--組の組長をはじめ組員120名の死体も発見されました。死亡時刻はどちらも同じ夜中の3時頃。死体の共通点ではすべて無残に切り刻まれているあたり、死因は同じと思われます。これだけの人数が一度に死に、さらに目撃情報や不審な人物、音などの目撃情報も無いために殺人と考えるのは難しいと思われます。』


現在捜査中で、と女の人が話してる途中でテレビを消した。日本の情報伝達ってものすごい早いんだね。少し感心しながら手に付いた血を舐めとった。
テレビに映る写真の中の人物達は先ほどあたしが楽しんだ使用済みのガラクタだ。160人以上で遊んだおかげで中学の奴等で無駄に遊ばないで済みそう。それなりに感謝してる。けれど、やっぱ物足らない!もうちょっと楽しめたらよかったのにな、
捜査して混乱しろ。混乱して潰れてしまえばいい。犯人のあたしを捕まえれるものなら捕まえてみなよ。きれいに殺してあげる。
そういえば、返り血がひどいはず。鏡を見るとやはりひどい。返り血を浴びて真っ赤でまるで鬼のようだった。(殺人鬼?)

残酷な話、殴って殴って撲殺してみたり、ワイヤーで切られていくのを見るのもベルのようにナイフを投げてスパン!と切れるのも鉄砲でぶち抜くのもマシンガンで穴だらけにするのも手榴弾で吹っ飛ばすのも剥いでもがく姿を見るのも好きだけど、個人的に一番大好きなのは接近戦のちゃんと手に残る感触。

何のために爪を伸ばしてるのか、さらにキレイに形を整えるのか、ナイフを使うのか。それはただひとつ、一番感触が伝わってくるから。死体にあったきり傷は、すべてあたしの愛用のナイフ。わざと切れ味を悪くしてるから手ごたえもすばらしい。


そろそろ学校の時間?あー、なんだか眠たくなってきた!でもここで行かなかったら楽しくなくなるじゃん。適当に血を落として学校に向かうことにした。
雲雀恭弥の敵視もなくなったことだし今日からは堂々と登校しよう。




制服を着て、かばんを持って、歩く。たったこれだけのことなのに、なんだか違和感。太ももにはちょっとした重量感。普通の明るい時間に素顔さらして歩いてるのだ!しかも今朝のニュースでだいぶと話題になってた謎の160名大量死の原因を作ったこの殺人鬼のあたしが!普通に!周りの中学生はあたしに危機感0!まさか周りはあたしがほんの数時間前日本の数分の間に160人を葬ったなんて思いもしないだろう。ただの並中生。

「おはようございます10代目!」
「はよっす獄寺!ツナ!」

少し先の曲がり角を曲がった向こうから、昨日聞いたばかりの声が3つちょうど聞こえてきたが、姿も見えないし向こうがこの道に出てくるまでに曲がり角を無視して通り過ぎようとした。
けれど、なんとまぁ最悪。ちょうど鉢合わせになって目が合ってしまった。3人ともめちゃくちゃ嫌そうな顔をしてる。

あたしはそれでも気にせずに彼等の前をあくまでも無視しようとしてたのにとおりすぎたところで「まてよ」と声をかけられた。
仕方なく立ち止まって振り返ってやったあたしは大分といい人だと思う。多分、さっき遊んでなかったら機嫌も悪かっただろうし無視してたかも。

そういえば、3人は少し顔にかすり傷を作ってるようだ。あぁ、そうか、昨日のダイナマイトが跳ね返って直撃でもしたのか。だっせ、

「なぁに?」

3人を見下すように見てやると、さっきよりも機嫌が悪くなったようだ。ただ睨んでくるだけの3人にあたしは面倒くさくなった。


さん、京子ちゃんにちゃんと謝りなよ。じゃあ、許してあげるから」

少しだけおびえてあたしにそういう沢田。
「そうだぜ、10代目は心優しい方なんだ!お前が謝ればすべて済む!」
獄寺もそう言う。なんなのこいつら、あたしに命令?上から目線なんて何年早いんだよ。山本は黙っているだけ。

「ははっ、悪いけど嫌。っつーか、死んでも無理だから。」
鼻で笑ってやると獄寺の眉間のしわが深くなって

「てめぇ!」

そう叫んであたしの胸倉をつかんだ。こいつ、タバコばっかり吸って早死にでもする気?何が10代目の右腕だよ。うぜぇ。


「ねーえ、あたしに構ってていいの?あと1分24秒でチャイムなって風紀委員に咬み殺されるよ。今日は朝から隣町で大量死事件があって風紀委員長も不機嫌じゃないかな?あー、山本って言うのが全力疾走してももう遅いね。+α一人運動音痴が居るじゃない?それじゃあ3人まとめて学校着くのは最速で4分と14秒後。さぁ、どうする?」


あたしがそういうと3人は今までのことを忘れたかのように青ざめ、獄寺は「覚えとけ!」と一言残して去っていった。
今から行ったら学校に着く頃にはあいつ等はちょうど咬み殺されてる頃かもしれない。それをあたしが笑いながら横を通ってやるのも面白い。


少しだけペースをあげてまた歩き出した。あたしの机、どうなってるかな??








咬み殺されている途中の3人組をこれでもかというほど馬鹿にしながら笑い、横を優雅に通った。もちろん恭弥への挨拶も忘れない。

「おはよう、朝からがんばるね。」

「あぁ、。君も遅刻?まぁ特別に許してあげるよ。」




まずは靴箱。昇降口に入った瞬間見えたあたしの靴箱には大量のゴミ。ガムのくずやペットボトルに紙くず。さすがに生ゴミはないけど。
時間が時間なので特に回りに人も居ない。


靴箱だけを隠すように手をかざすと、かざした場所があたしにだけ見えるように黒くなる。消したいものを意識ながら、黒くなった部分にもう一度かざすと見事にごみだけが消えていた。
「片付けんの面倒だし、消すしかないよね、」


あたしはこの動作を「闇に消す」と呼んでる。任務のときにダルくってどうしようもないとき、あたしはこの方法で一気に人を闇に葬ってきた。自分の位置から見える人の集団を手でかざし、あたしにしか見えない黒で覆い、消すのだ。この行動を、あたしは一瞬ですることができる。バイバイ、と手を振ってるうちに勝手に消えてることだってあった。
闇に葬られた人はどこへ行くか知らない。とりあえずこの次元から消えていく。


おかげで、靴箱の中身はキレイに上履きだけが残った。


ブイヨ、とは日本語で「闇の、」とか意味する。

まさしくあたしは闇そのもので、闇を操って。
ブイヨ隊員は前も言ったとおり、名前、顔、性別、能力などは何年かかっても、どうやって調べてもすべてノー・データだけど、「ボスよりもボス補佐が1番の実力者」ということは知れ渡ってるらしく、隊員に付けられた異名だけは結構皆知ってたりする。その異名というのは、あたしの能力を見たメンバーが「まるで、薬か何かで幻覚症状を引き起こしてるかのようだ」と口をそろえて言うものでそこからあたしの異名が付けられた。「ブイヨ・サイケデリック」

いくらブイヨのボス補佐が1番強いと言っていても、他の皆が知るマフィア界1番の実力者はヴァリアーのの方で。有名じゃない分案外皆ブイヨはそこまで言うほど強くない、と思ってるかもしれない。
「ヴァリアーの」というのがただの身分隠しってことにまんまと引っかかってる奴等はブイヨのボス補佐≠ヴァリアーのと当然のように思っていて、非常におかしい。
以前、跳ね馬に「なぁ、ブイヨって組織のブイヨ・サイケデリックって奴すげぇんだよな!見たことあるか?あー、闇組織だしねぇんだろうなデータだって0だ。・・・とどっちが強いんだろうな!一回でいいから見てみてぇな」とか言われたときは、本当におかしくって笑ってしまった。
「でもフゥ太のランキングでぶっちぎりが世界最強なんだろ?じゃあが勝つな!あのランキングにはブイヨサイケデリックって奴居なかったし!」
あたしだって!あたしのこと!とはさすがに言えずに笑いをこらえて「一度見てみたいね」とだけ返しておいた。



□□□




ガラガラと扉を開けると今まで騒がしかったように思えた教室の中が一気に静かになって、皆あたしを見た。笹川京子を中心に、生徒が集まっており笹川本人と目が合えば少しだけにヤット笑われた。え、何?

「うっわ、あいつ学校来たよ。ありえねぇ」
「よくこれるじゃん。いい度胸。」
「京子のこと怪我させておいて謝りもしないなんて、最低。」

あぁ、なるほどね、昨日の昼休みの事が一気に流れたのね。そうそう、その調子!もっともっとあたしを愉しませて。
とりあえず皆を無視して自分の席に行くと、そこにはきれいな花が飾ってあった。

何の花だっけ?あたしはどちらかというと花なんて似合わないしイタリアの国花のデイジーくらいしか知らない。
何の花か解らないだけなのに周りはあたしが困ってると思ってクスクス笑い始める。

そのとき、2年の階段を上ってくる3つの気配を感じ取りあたしは花瓶のまま花を持って笹川京子の前まで行った。
笹川京子は、昨日のような悪魔のような笑みはせずにどちらかというとか弱い女の子の顔をしていた。
「なんだ?京子にやっと謝る気になったのか?」など、少し笑う声も聞こえるが、気にせずあたしは笹川に微笑んでみた。これが作った笑みと解るのやつは居ないんだろうか?
心中カウントダウン開始、5,4,3,2,1!

ゼロ、と同時にあたしは笹川京子の頭に花瓶を持っていき、一気に傾け水をかけた。それと同時に、扉が開く音が聞こえる。一瞬皆何が起こったかわからずに呆然としていたがどうやらすぐに理解できたようだ。

「て、てめぇ!何してんだよ!」

誰かが叫んだけれども気にせずに花瓶の水をすべてかける。中にささっていた花が笹川の頭に落ち、水もなくなったのかしずくがぽたぽた、と落ち始めたところで花瓶を投げてゴミ箱に入れたが、ゴミ箱の中で中で割れてしまったのか、とがった音が聞こえてきた。
「う、うわあああ!!」
笹川京子は、いきなり泣き出した。これはどうやら予想外だったらしい。

さっき開いた扉のほうを見ると今朝会って恭弥に咬み殺されたばっかりの3人組が立っていた。それも、顔を思い切りゆがめて。
・・・お前、」だから、あたしはその分笑みを深くして言ってやる。

「何してるも何も。馬鹿には見て解らないかしら?転校二日目で大歓迎してもらってわざわざ花を飾ってもらえたのは凄く愛を感じるわ。だけど残念ね、あたしキレイに咲く花が大嫌いなの。どうせすぐに枯れて散るじゃない?まるであなた達みたい。だから余計に嫌いなの。あぁ、笹川京子。この事に恨むのならあたしじゃなくてあたしに好意を持って机に花を飾ってくれた誰かさんを恨んでね、花がなかったらこん目にはあわなかったことでしょうし。」


そういうだけ言って自分の席に戻った。
泣いている笹川のもとに3人が駆け寄り、山本は大丈夫か、といいながらスポーツタオルを笹川に渡した。



「てめぇ・・・いい加減にしろよ!!」
クラスの連中があたしに殴りかかってきた。大人しく殴られてあげるけど、体も吹っ飛びもしないくらい弱かった。昨日の沢田のように腹を蹴飛ばしてやるとあっさりと吹っ飛んで行った。

「・・・で?それだけ?」

あたしがあざ笑ってやると、今度はあたしの目の前にバットが振り下ろされた。あたしが立ってる数センチ前の床にバットがねりこみ、床は粉々。もし当たっていたらきっと足の指は粉々に砕け散ったと思うけど、軌道を読んでたので微動たりしなかった。
持ち主は山本武。あぁ、アレが彼の武器の山本のバットか。すごいすばらしいネーミングセンス。あたしのこの太ももの銃もの銃とかそういう類の名前に変えようかな?それこそ笑われ者になる。ブイヨの恥だ。

「何のまね?」
「・・・お前、おだやかじゃねぇな。」

めったに怒らないらしい山本の顔のしわが思い切り深くなって怒りなどがひしひしと感じる。そうそう、それでいい。
「物騒なもん振り回してるあんたのほうが穏やかじゃないじゃない。何?今朝の160人死んでたのってもしかしてあんたがやったとか言わないよねー?」

そうやってあたしの殺人事件をこいつに押し付けてみた。山本はもう一度バットを構えなおした、と思えば次に獄寺がまたダイナマイトに火をつけはじめた。こいつ等、本当に馬鹿じゃないの?10代目候補は候補でもザンザスと格が違いすぎる。あたし、この任務やってる意味・・・ある?増えていくのは殺意ばっかりで戦闘能力は上がらないし、肝心のメンタル部分はどうなってんのよアルコバレーノ。

「いっつも沢田を10代目って呼んでる獄寺、やめときなよ。っていうかもともと何の10代目かとか興味ないけどさあ、沢田。あんたの部下はこうやって教室で周りに人が居るところでそんな物騒なもん爆発させようとするんだね。類は友を呼ぶって言うけど本当感心するよ。それのせいで皆が死んだら一生人殺しって呼ばれるけど、あんた大丈夫?」

フッと笑ってやると、獄寺は悔しそうな顔をしてボムの火を消した。



「おーい皆、席に着け〜って、何だこの雰囲気」

沈黙したこの冷たい雰囲気を破ったのは、ちょうど入ってきた担任だった。
覚えとけよ、と山本に言われてしまった!


よほどこいつらはあたしにボコボコにされたいらしい。