「・・・すっげ。」マンションの豪華さに普通に驚いたのは言うまでもない。 要る物はすべて揃っていた!!あたしなんかにお金をかけてくれた9代目は、本当に素敵な人だ!もしかしたらブイヨのボスの手配かもしれないけど、どっちにしろ良い人だ。 今回の任務に、少しだけ楽しみにしていることがあって、それは日本食を食べられるということだった。気が向いたら、向こうから誰かを呼んで一緒に外食しに行こうと思う。自分ではイタリアンしか作れないからね。 今日の晩御飯は、レトルトのカレーで我慢しておこう! Mi chiamo arma. 昨日のうちにデータ再確認を済ませ、どのように任務を進めようか、計画を練リ終えた。初めての制服に戸惑いつつスカートにスパッツをはきホルスターを太ももに巻きつける。ホルスターには愛用のピストルワルサーPPKやベレッタM92に、FN ブローニング・ハイパワーの3丁。バレないようにスカートはひとつも折らずに長くしておく。ブレザーの内側には得意の武器をいくつか忍ばせておく。いや、別に素手や能力に自信がないわけじゃない。下手に能力を公開したくないだけである。 じゃ、そろそろいくか。普通に歩いて行って、昨日の雲雀恭弥に出くわして朝から殺し合い、なんて日本ではさすがにしたくないので昨日いけなかった屋上に直行することにした。たどり着きたい場所のイメージをしながら一歩目で少し勢いをつけ、二歩目で軽く飛び上がる。地面から足が離れた瞬間に風景が変わった。本当に一瞬であたしが居る場所は並盛中学の屋上だった。普通にジャンプして、いたって普通に着地する頃にはもう行きたい場所についてる。これほど便利な能力って、中々ないよね。 屋上から校門を覗いてみるとそこにはリーゼント集団+雲雀恭弥が立っていた。普通に登校しなくて正解。改めてそうおもう。さぁ、職員室に行こう!と屋上から出ようとしたがこの時間はまだ屋上が開いていなかったが、少しからだに集中すればするりと壁を通り抜けることができた。 これが、あたしの瞬間移動、鎌鼬、金縛り、透視、能力測定に続く6つ目の能力。壁抜け、とでも名づけておこう。 □□□ 「この子は、イタリアから来た帰国子女だ。仲良くしてやってくれ!」 担任の先生が、あたしを教壇のとこに立たせて、とてもありきたりな挨拶をした。足が長い!とか、キレイ!とかざわつかれてるけど、きっとほめられるのはこのとき限りだ。 すぐに見つけた沢田綱吉、獄寺隼人、山本武。彼等の戦闘能力は目標値よりも・・・想像以上に下。沢田は0に近く、獄寺と山本は、100点満点中30点くらい。殺意の向上平均に関しては一度殺しあって絡まないと分からない。彼等が本気になったとき、どれほどの殺意が生まれるのかは、知らないから。 けれど、今までの最高記録殺意値は沢田またもや0に近くむしろ殺したい、というよりは逃げたい、という気持ちのほうが強いらしい。獄寺は結構高めの75点。さっすが!山本武は・・・おやおや、普段はさわやかを演じて腹の中では黒いんでしょうか、55点。予想外。彼なら0かと思ったのに。 これを全部、任務の目標値の100点にしなければならない。100点、といってもソレが本当に満点値なわけじゃあない。戦闘能力で言うと「相手がマフィア50人対自分ひとりで勝利可能だ!どんどんかかってきやがれこの野郎!」って位、殺意に対しては「とにかく殺してやる!」と思えるようになる地点をあたしは判断しやすく「100点」に置き換えただけ。その100、とは、マフィアになるための最低限の数値なのだ。その目標値から計算してみるとあたしなんかの戦闘能力は無限で数値なら1億くらい。「あたしに敵う奴は居ない」と本気で思えるほど強いと思う。天才の称号ももらっているし。殺意なんてなくたって人が殺せる。ベルと一緒で暇なときや気に入らないときに人を殺すなんて最高だと思っている。切り裂くのも愉しいし、半殺しでじっくり甚振るのも面白い! 沢田なんかは「ナイフ向けるなんてむ、むむむ無理です!」「100対1!?むむむうりぃぃ!」て感じでしょうか?ま、早いこと100点にしてあげよう。そのあとは沢田家庭教師のアルコバレーノに任せよう。どっちにしろ、あたしには絶対勝てないけど。 「からも一言何かないか?」 「ぜひ愉しませてください。」 意味深に笑ってやった。周りが見ればキレイに微笑んだだろう。だけど分かる人にはきっとわかるだろう、この愉しそうな表情が。気づいたのはきっと、怪しい人物を見るような目であたしを睨む獄寺だけ。さすがボンゴレ!ま、こんなけの人数が居れば、少しくらい暇つぶしになるかもしれない。ならない場合?それは邪魔なジャパニーズマフィアで退屈を埋めるだけ。9代目は並盛生を殺してはいけないって言ってただけでその他は聞いてない。 「そ、そうか。じゃあの席は・・・山本の隣だ。」 「オレここ!」 いきなり接近、山本武の左側の席!窓側だ。少しからかい甲斐のありそうな彼に接近なんて、運がいいのかな?山本は、今のところあたしに警戒心0の笑顔で手を上げて自分の居場所を示した。早速嫌われていこう、と思ったが、どうすればいいのか分からずにとりあえず山本に目も合わさず無愛想に自分の席に座った。そして「よろしくな!」といわれるが、あたしは山本のほうを興味なさげにチラっと目をあわさずに見て、窓の外を見るように頬杖を付いた。この行動に席が山本の斜め後ろの沢田は不安げな顔をし、獄寺は眉間のしわがより深くなり、その他の連中はあたしに不快感を持ち始めた。 だけど、さっきの不快感も奴等は単純なのかすぐに忘れたらしく休み時間になると、鬱陶しいほど寄ってきた。邪魔,邪魔、じゃま!今から現状報告をヴァリアーの皆に伝えようと思ってたのに。転校生、しかも帰国子女のハーフっぽい顔立ちに不快感より好奇心が勝ったのかあたしの不機嫌な顔も見えないようだ。 「ねえ、さんって、ハーフ?!」 たぶんね 「イタリアから来たんでしょ?!どんなところなの!?」自分で行って見なさいよ 「って呼んでいい?!」嫌だ。 「髪の色、きれいだね!」普通じゃない? 「身長何センチあるの!?」しらね。マーモンよりはでかいって。 「日本語上手だよね!」そりゃあ天才だし。 「誕生日は!?」しらない。 「メアド交換しようぜ!」やだ。 「オレも!」いらねぇ。 うざい。とりあえず頬杖付いて、心の中で返事をしつつ皆のほうを無視して窓の外を見た。ため息を付いてみても、周りは解ってくれずに一方的な質問をぶつけるのみ。 「おいおい、が困ってるじゃねぇか」 いきなり隣の山本がそう言った。山本の方をチラッと見ると沢田と獄寺も居た。「まず質問はひとつずつにしような!」山本はニカっと笑ってその場をなだめた。その間、あたしはずっと沢田を見ていた。見ていた、というよりも睨んでいた、というほうが正しいんだけど。沢田と視線がかち合い、彼は少し怖気づいて顔を引きつらせてる。それに気づいた獄寺はやっぱりあたしを睨んでる。 「じゃ、、答えてやれ!」 山本はその場をなだめたらしく、あたしにそう言った。沢田から視線をはずし沢田は内心ほっとしたらしくソレがあたしにも伝わってきた。(読心術は7個目の能力。)そして、みんなをいっせいに見渡した後にまた窓の外を向いた。 「あたしはあんた達と仲良くする気なんて、これっぽっちもないわ。」 あたしの発した冷たい声ににぎやかだったクラスが一気に静まり返った。「え・・・何?」と沢田が冷や汗たらしながら言った。ちゃんと一回で聞き取ってよ。面倒くさいなぁ、もう。 「だから、何回も言わせないでよ。あんた達みたいな低レベルの弱い連中と付き合ってられないって言ってんの。解ったなら散れば?うざい。」 頬を歪め、嘲笑しながら言ってやると周りの人たちは怒りに満ち始めた。そうそう、その調子なんだって。もっと来なよ。 バン! 誰かがあたしの机を叩いて怒鳴った。「なんだてめぇ!せっかく人が仲良くしてやろうって言ってんのによ!その態度はねぇんじゃねぇの?!あぁ?!」一般人からみれば、これは怖いんだろうか?あたしに言わせれば、レヴィの顔のほうがよっぽど恐い。それに便乗して他の奴等も口々に思いを口にする。「感じ悪ぃよな!」「ちょっと顔が良いからって調子に乗りすぎ〜」聞こえてくる声に本日何度目かのため息をついた。あぁ、殺したい。 「仲良くしてほしいとか、一言も言ってないんだけど?あなた達頭大丈夫?サル並の日本語理解力とか、勘弁してね、保育係とか無理だから。」 「てめぇ!」 獄寺があたしの胸倉をつかんだ。間近に来た彼の顔は整っていてきれいだ。おびえることなく余裕の笑みを見せてきた。 「まぁま落ち着け獄寺!」山本の笑顔は黒さがにじみ、みんなの顔が怒り一色になったところで、授業開始のチャイムが鳴ってあたしの望みどおり皆が散って行った。舌打ちを残して。けっこう順調に行きそうかもしれない。 獄寺の殺意向上+2、山本+1、沢田は・・・不安+1?!こいつ、どんなけ気が弱いのよ。何したら殺意向上してくれるの?もっと酷いことしようかな。たとえば、ここで軽く手首を振り、指ではじくよりも大き目の鎌鼬を起こして誰かの首ふっとばすとか?いや、殺しは禁止されてるんだっけ。うーん・・・。 ふあ〜とあくびをして黒板を見ると、なんだか簡単そうな数字が並んでいた。暇すぎてあくびがまた出て、さらに伸びをしてると机の上に何かが届いた。首をかしげて眺めると、紙切れのようだ。いよいよイジメの始まり?早いな、と思ったけどなんだか違う。中に何か文字が書かれている。『昼休み、屋上に来てください。』おー!来た!こういうの待ってたんだよね〜誰からだろう、と思って窓の外を見る振りして目を瞑り、クラス中を透視する。脳に流れてくる映像は今のクラスの状況。山本は寝てるし、沢田やあたしの周りの人間はたいてい前をボーっと見てる。あたしのことを嫌いな獄寺も普通に前を向いてる。お!その中で一人、こっちをチラチラっと気にしている人物が居た。 笹川京子だ。集中を途切れさせ、あたしは窓から笹川のほうを見た。目が合った瞬間に、こいつの企みのような黒いものが頭に飛び込んできた。この子もだいぶ腹黒で山本の女の子バージョンってところかな??そういえばこいつ、沢田の片思い相手じゃないか。ラッキー!自ら罠に掛かりにきてくれるなんて!あたしはいろんな意味で嬉しくなって笹川にニコっと微笑んでみた。すると笹川は、あたしを一睨みして前を向いた。残念ね、君。あたしを遊ぶんじゃなくって、遊ばれるのに。これからあたしの駒となりあたしの手のひらで動いてもらうことになるのに。 でも、嬉しく思いなさいよ。マフィア界最強と呼ばれるブイヨの中のさらに天才、天下無敵とされ、フゥ太のランキングで5年間連続世界No.1マフィアに輝いたあたしに使われるんだから。ミネストローで最強の力を手にし、人間兵器となったあたしに、ね。 あたしはニンヤリと笑ってみた。 ま、確かにあたしがNo.1ってことはブイヨのメンバーやヴァリアー幹部以外が知るはずもないし、人間兵器として作られた人間ってことはあの幼馴染以外は知らない。 次の休み時間からは、冷たい視線があたしに来るのみで、誰もあたしに話しかけようとするものは居なかった。やばい、案外愉しいかもしれないこの任務!!低レベルなのをからかうのって、結構ストレス解消にもなる。2,3,4時間目の授業なんて受けてられないや。屋上に暇つぶしに行こう。 あたしが立ち上がっただけでクラス中シーンとなるのはやめて欲しいんだけど。それだけでそんな表情されたんなら、あたしが拳銃を皆に向けたら失神して、8つめ、9つめの能力を見せたときには死ぬんじゃないかな? 皆に一睨みきかせて教室を出て行った。 □□□ 屋上に着くなり携帯電話を取り出した。ただいま時間は1時間目が終わった午前10時45分を少し過ぎたところ。11時前か・・・向こうとの時差は8時間だから夜中の3時前ってか。目を閉じて軽く目に力を入れると今からベッドに入ろうとする奴の姿が脳内に流れた。まだ寝てないんだ、と思って電話をかけた。 「やっほ」 『・・・』 「おーい!鮫ちゃん!」 『ゔお゙ぉぃ!!てめぇ今何時だと思ってやがる!!』 「3時前?」 6コールめでやっと出た彼はお怒りのようだ。「知ってるならかけてくんな!」と怒った顔が想像できてなんだか面白い。 「だって、スクアーロだからかけたんだもん〜」 『えっ・・・?』 急に真剣な声になったスクアーロに、本当に噴出しそうになった。 「だって、スクアーロってやられキャラじゃん?こんな時間にマーモンとかにかけたら即刻念写されて呪い殺されそうだし、ベルにかけたらまじギレされて天才同士の殺し合いにでもなりそうだしレヴィとかモスカとか基本的無理だしザンザスとか携帯つぶしそうだし、スクアーロしかいないじゃん!」 『ゔお゙ぉぃ!!!!!!掻っ捌くぞぉ!』 「ちょっと、怒らないでよ!見知らぬ土地に一人きりで案外寂しいんだから!とりあえず誰かと話したかったの!」 あたしがそういうとスクアーロは任務のことを思い出したらしく「そういえば、どうなんだよ」と聞き返してきた。最終的に、こいつはあたしに甘いのだ。 「10代目候補の沢田の戦闘能力がさぁ、0に近くってさぁ。もうお手上げだよ。そんで、とりあえず嫌われてあげようと思ってクラス全体を早速おちょくってるよ。むかつく感じにね。っていうかさ、昼休みに女から呼び出しくらったし。でも所詮はジャッポーネの庶民中学生だよ、つまんねぇ。さっきの時間、暇すぎてさ、教室中にワイヤー張り巡らせてやろうかと思ったもん・」 『はっ!お前らしいな。』 「中学生殺人禁止令出されてるからやめといたけどね〜血が見たい。」 『中学生禁止ってこたぁよぉ、先公でも掻っ捌いてやったらどうだぁ?』 「ナイス!スクアーロ!近いうちにキライな先生見つけて楽しんでみるよ、って。屋上の階段誰か上ってきてる気配するからそろそろきるよ。」 『おぉ、また連絡待ってんぞぉ〜』 「うん、じゃあね、おやすみ!」 近づいてくる気配は、小さめ。きっとここにあたしが居るってこと知ってるのかわざわざ気配を消してきている。最初に出会ったあのときのように。消しても消さなくてもあたし相手にしてみりゃあ無意味当然なのに。おもしろい、とおもってあたしは自分の気配をたどってきている彼を挑発するかのように気配を完璧に0にしてみたり気配を垂れ流しにしてみたり遊んでみた。 扉が開いてそっちを向くとやっぱり思ったとおり、雲雀恭弥で。あたしを見つけると、表情をひとつも変えずにつかつかと寄ってきた。 「ねぇ」と少し機嫌悪そうに言うけどあたしは雲雀恭弥は無視して携帯をいじることにした。あー、血が見たい。 「ねえってば。」 「・・・、」 「・・・。」 シュッ ドゴォッ 顔を上げて横を見ると、顔スレスレの真横の壁にトンファーが突き刺さり、肩に散らばった壁のくずが付いており掃った。 「なに?」 「こっちが聞きたいんだけど。昨日、僕に何したの?サボリが許されると思ってるの?髪の毛の色だって携帯だって、校則違反だよね。根性だけは認めてあげる。でも君はここで咬み殺すから。」 「昨日?覚えてないや。サボりはお互い様。携帯とのことは謝ってあげるけどこれは地毛なんだよね。残念ながら。」 あたしは横に突き刺さってるトンファ-を抜いて雲雀に渡した。 「ほら、きなよ。ちょうど暇してたの。」 そういうと雲雀は本当にいきなりトンファーをかざしてきた。結構スピードもあるし力も強い。けれど、 あたしは避けるのをやめた。だって、遊びたいもん。雲雀はもらった、といわんばかりの表情でトンファーをあたしのおなかめがけてふってくる、が。 「?!」 あたった瞬間にその部分だけまるで煙を切ったようになり、あっという間にの姿が消えた。 「ねーえ、どこ攻撃してるの?あたしは最初からここなんだけど。」 雲雀が振り返った先には、しゃがんであくびをしているの姿が。これは、8,9つめの能力。分身をつくり、さらにソレを自由に操れる。そして自分本体を無に・・・透明にすることだってできる。ソレの組み合わせが今の結果。最初から分身が戦っているのをただ透明人間になって真後ろで休憩してただけ。 「はやくきなよ、って無理か。だって君はもう動けないもの。」 屋上中が、キラキラと光っている。いつ見てもきれいだ。張り巡らされたワイヤーは。雲雀が分身と戦っているときにばれないようにこっそりはり巡らしたのだ。 「君、本当に面白いね。」 「ありがとう、」 雲雀に戦意消失ってことで、仕掛けていたワイヤーを回収した。 「、君の事気に入ったよ。」 「そう?あたしも恭弥気に入った。」 「うん、特別に君とは群れてあげる。」 「・・・どうも」 群れって・・・なんてゆう表現なんだろう。 「じゃあ、僕はもう行くよ。何かあったら応接室までおいでよ。」 あ、笑った。雲雀の笑顔ってキレイで、かわいらしかった。 「うん、そうする。あたしはもうちょっとここにいるから。何かあったら2Aまできてね。」 それだけ言って、あたし達はバイバイした。能力について絶対気になってるはずなのに、聞いてこない彼は、案外一緒にいやすいかもしれない。並盛で1番の権力を持った男、雲雀恭弥。特に何を考えてるかいまいちつかめないけれど、恭弥と仲良くしてたら何かと便利そう。唯一の味方ってことにしておこうかな。 Boy Meets Girl! (結構気に入った。)(多分あたしは彼に殺意はもう抱かないだろう。) |