嬉しいことに、9代目に日本名をもらった。漢字で だ!初めてのファミリーネームや、じゃない文字に少し違和感を感じた。 Mi chiamo arma. ジャポーネこと、日本に飛び立つ前に、9代目や、ブイヨの仲間、ヴァリアー幹部にだけ挨拶をしておいた。9代目は、この任務をあたしに渡したことに対してどこか申し訳なさそうだったけど、あたしは別に平気だ。 イタリアと違って、日本はとても安全な国だしさぁ!なんたって殺人事件だけで全国的なニュースになるんだから。今回の任務で殺人NGなのは、日本の平和ボケ。そこからきているのかもしれない。平和ボケした中学生という幼い集団の中でそのうちの誰かを殺してみろ。それこそひどいトラウマにでもなるんじゃないか。人体実験で普通に人が殺されるのを見てきて、4,5歳で初めて人を殺して、しかもそれが快感で人を殺すのが大好きなあたしには到底理解ができないけど。殺し屋は天職だ! だから日本のように一人の殺人で死刑にかかるくらいなら、あたしはもっと、ひどいことになるかも。殺した数は5千を超える。こんなあたしには麻酔なしで指一本ずつ剥ぎ落とされて、最終的にはダルマになる。そんな刑を執行されるに違いない。それか牛裂きとか。ま、そんな刑を食らっても簡単に逃げれるけど。 「ま、行って来ます。」 飛行機のファーストクラスに乗り、イタリアを飛び立った。 日本の空港までずいぶんな時間がかかった。12時間。時差のせいもあってか、お昼に向こうを出たのにこっちはまだ朝。時差ぼけにかかるような体質はしてないけど、辛いなー。ずっと機内でパソコンをいじってデータを再確認してたせいか、目も疲れた。 部下にジェットを出してもらった方が良かったような気もしたけど、マンション手配、荷物送りとかに数名部下を出してるのに、それ以上に部下を無駄に動かすのはなんだかかわいそうなきもしたので普通の空港から日本に行くことにした。うん、たまにはこういう普通の飛行機で来るのも悪くないかも。にしても、さすがボンゴレだ!住むところは結構高級なマンションらしい。 「並盛町の並盛中学まで。」 空港に着き、タクシーに乗って行き先を告げ走り出した。住むところはもちろん、荷物や家具などはもうすべて用意してあるらしい。その分手荷物が少なくて疲れはましかもしれないけど、さすがに鍛えていても12時間飛行機の中って疲れるよねー。 タクシーに揺られることすでに1時間。ボーっと窓の外を眺めるしかすることがなく、イタリアとは全然違う町並みになんだか不思議な感じがした。 ここには、ヴァリアーだって、ブイヨだって9代目だって居ないし。寂しい気もするけど・・・9代目のためだしね。なんせ、10代目候補達に会っておちょくれると思えば一気に寂しさが吹っ飛んだ気がする。 こんなに疲れているのに今から制服、教科書とかかばんとかもらいに並盛中学に行かないといけないらしい。本当に、荷物を先に送っておいて良かったと思う。これで大量の荷物を持ってたら肩がこる。っていうか初日から沢田と接近するかもしれないと思うと、少しばかりワクワクする。 リボーンとは面識がないけどもしかしたらあたしの事知ってるかもしれないし警戒しないと。ばれてしまえば、面白みが少なくなる。任務のときはいつも変装するのに、今回に限って変装してこなかったのに後悔した。 そしてまた30分くらいで並盛中学についた。ここにしばらく通わないといけないのかと思うと、少しだけ憂鬱。勉強なんて面倒くさい。はやく沢田ファミリーの殺意と戦闘能力上げてさっさと帰ろう。奴等の戦闘能力はどんなもんなんだろう?戦闘能力を図ることができるのはあたしの能力のひとつでもあるんだけど、会って見てみないとはっきりしたことは分からない。さっさと数値を計ってそれに応じた嫌われ方をしないと。そして、さっさと帰って殺しの任務をもらってすっきりしよう! お金を払ってタクシーから降り、中学校に入った。 グラウンドからは教室が見える。どうやら今は授業中のようだ。ここに居る人たちはきっとあたしみたいに血で汚れてないんだろうなぁ。・・・データ参照で約1名を除いて。 体育をしてるのも見えるけど、あんな低レベルなことをやらないといけないのかと思うとそれはそれは、ぞっとする。ただ50mを走っているだけ。それも8秒程度。あたしの場合、能力を使えば一瞬であり、走る必要もない。走ったところで意味がない。 職員玄関から校舎内に入った。土地勘は抜群。校舎に入った瞬間に校舎内の地図が頭に入り込んできて軽く記憶した。 ボンゴレの屋敷よりも簡単な造りで、迷子にはならない。 「失礼しマース」 職員室の中に入ると、そこに居た大人達はいっせいにあたしを見た。これが日本の中学校の先生か。今まで任務でどっかの学校にまぎれてその中の人を暗殺してみたり、情報を持ち帰ったりしたことはあるけど、こうやって学校に通うのは初めてで少しだけ緊張する。一般人になんて関わったことないし。価値観とか違ったらどうしよう?今になって少し不安になってきた。 身近に居た先生に「転校生のですけど。」始めて名乗る自分の苗字には、やっぱり違和感があった。ま、仕方ない。身近にいた人が向こうに座っていた女の人を呼んでくれ、それが担任ということを説明してくれた。 「じゃあ、明日8時半までに学校に来てね。」 「はあい。」 用意された制服、かばん、教科書を受け取ってさっさと帰ることにした。 そのまま帰ろうとしたけど、ふと屋上は使えるのか、と疑問に思った。これから先、屋上が使えるほうがなにかと便利だ。使えないならピッキングして鍵を開けるし、使えるなら有効利用してあげるし。 教科書やかばんや制服が邪魔。別に階段なんて上らなくたって一瞬でいけるんだけどさ。ここは、屋上確認なんてせずにとっとと帰るのが良いかな。 ボスはありがたいことに、ちゃんとあたしの能力を考えてくれて、4キロ未満のところのマンションを手配してくれている。だから、屋上なんて来たいときに来れる。だから、大人しく帰ってしまおう。だってさ、今ここでもし瞬間移動を使ったら。 ―――後ろからわざわざ気配を消して近づいてきてる人に、変に思われちゃうじゃん。 相手は中学生で、どこかに武器か何かを仕込んでいてさらにあたしには殺気が当てられている。ちなみに武器はきっと両手に持つアレ。あたしは見た目は普通の人間だし後ろに目は付いてないけれど、これが勘というのか、少し神経を集中させてみると背後の様子が鮮明に頭を流れる。さらに少し先に起こる出来事まできちんと映像が頭に入り込んできたり。こういうのは、すばやく危険が察知できるのでエストラーネオの実験に携われてよかったかもしれない。 あ!何かが起こる5秒前に入りました!カウントダウン開始!ご!よん!さん!に!いち!ぜろ! その瞬間、あたしは首の骨を鳴らすように頭を左に曲げた。ソレと同時に シュッ 頭すれすれを何かが横切った。後ろから何か飛んできてるのは想定内の範囲そのもの。秒単位、角度1度単位で当たるスレスレを計算し、ギリギリて避けてやった。コンマ1秒、コンマ1度でも秒や角度がずれてたらそれはそれは軽く脳震盪を起こしたでしょう! カランカラン・・・と音を立ててあたしに飛んできたソレ、トンファーは落ちた。後ろにいるあたしにトンファーを投げた人は、無意味に気配を消すのを止めて足音を普通に立てて近づいてくる。別に、「後ろにいるあたしにトンファーを投げた人」とかそんな呼び方をしなくても名前はすでに知っているけどね。先ほど脳内に映像が流れたときに映ってた人物と、飛行機内でデータチェック中に「要注意人物」と書かれた人の顔があまりにも一致しているし。 くるっと振り向くと、やっぱりその人物が立っていた。 雲雀恭弥。こいつの殺意、戦闘能力は何もしなくても大丈夫。例えば沢田の殺意の持ち方が100点満点中0点だとするとこの人は99点にもなる。この人は任務の中で唯一の例外。あたしはいじらなくていい。 あたしには、人の殺意や戦闘能力をその人から出るオーラを見て計る能力まで持っていたりする。この能力は、あたしが受精卵のときに実験成功したものだ。 「ワォ、避けれるんだ。」 愉しそうに奴が笑う。こいつの考えてることは、読みとりにくい。普通の中学生らしく「今日の晩御飯は何かな〜パスタかな〜でもラザーニャも食べたい!放課後ゲーセンにも行きたい!」と絶対考えないタイプだ。むしろ、奴の頭の中はあたしをどう殺そうかでいっぱいだと思う。 あたしは無言で彼を見ていると一歩一歩近づいてきた。 「不法侵入だよね、何してるの?」 段々と殺気をあふれさせてきた彼はきっとこの後戦闘体勢に入るに違いない。初日からまさかこいつに出くわすとは思わなかったなぁ。軽い時差ぼけ、長旅の疲れのおかげでこっちには中学生に手加減してやれるほど気が回らないかもしれない。殺しは禁止だし。どの程度で戦えばいいんだろう? 殺してしまわないうちに追い払おう。 「あ、明日から転校することになったです。制服など取りに来ました。」 一応会釈もしておく。だか、彼にはそんなことどうでも良いようだ。気に入らなければ気に入らない、というタイプなんだろうか。 「めんどくさ・・・」 小さく呟いて右手で持ってた教科書を廊下においた。さりげなく、あごに手をやるフリをして、ちゃっかり右手首を彼の顔の高さにあわせ、彼に向かって中指と親指で空気をはじいた。その瞬間彼の頬に切り傷が入りその後ろで何かが壊れて崩れる音がした。 「何をした・・・」 「さぁ?あたしは何も?」 この態度が余計に彼を怒らしてしまったらしく、殺気がもっと出てきた。今、あたしは小さな鎌鼬を放ったのだ。彼の頬を掠めるよう少し横にずらしたためにもっと後ろの壁に当たり壁が砕けた、というわけ。これで終わってくれるかと思ったのに、どうやら無駄だったようだ。面倒くさい、とため息をついて目に力をいれ彼を睨むように念じる。 「・・・!!?」 いきなり彼が動かなくなった。一瞬驚いたようだったけれど目だけはあたしを殺気より強く睨む。そんな睨まれても。 「どうかしたんですか?では、用がないようならあたしはこれで失礼します。」 あたしはもう一度会釈して動かない彼を残して立ち去った。 絶対目を付けられたよね。嫌われるのは3人だけでいいのになー。とてつもなく面倒くさい。あぁゆうタイプは、あたしを見つけるなり戦いを望んできたりするタイプ。しかも勝つまで。うん、低レベルな中学の中であーゆー好戦的な人が居れば飽きはしなさそう。 「あ、そろそろいいかな、」 校門を出たところで指をパチンとならす。奴にかけていた金縛りを解いたのだ。校門さえ出れば、彼も追いかけては来ないだろう。ただ、あたしが外に出たことによって誰に見られてるか分からないのでマンションまで歩かなければいけない羽目になったことに後悔したけど。 ま、とりあえず 楽しめそうかも |