例えば、周りがお手上げな難しい任務であろうとあたしは軽々こなしてきた。どんなに強い人であろうと、一瞬で殺す事だって可能だ。それは、特別に鍛え上げたわけでもなくってただ気づいたらそうなってただけ。なろうとおもって強くなったんじゃ、ない。 Mi chiamo arma. 裏社会の表ではマフィア界最強といわれるボンゴレファミリー。その中でも最強といわれている特殊暗殺部隊・ヴァリアーが居る。でも、その裏に、実はヴァリアーをはるかに凌ぐ強さを持つ強い部隊がボンゴレには居た。 その名も「最強暗黒殺人部隊」通称、ブイヨだ。ヴァリアーと何が違うのかというと、ヴァリアーは、主に暗殺を得意とするが、ブイヨは暗殺はもちろんスパイ・情報収集、変装、侵入、破壊・・・とりあえず、なんでもできるのだ。 ――あたしは、3年位前からブイヨのボス補佐だった。 でも、あたしがブイヨって事を知っているのはボンゴレ幹部やヴァリアーの幹部の極わずか人数のみの、両手で数えれる程度。なぜなら、この部隊はかなり特殊で、他のファミリーにあまり知られてはいけないためにメンバー名・性別などは極秘となっている。なので、隊員の普段の表向き公表はヴァリアーの幹部所属ということになっている。 だから、普段何も知らない人たちにはヴァリアー隊員と思われているのだ。 あたしたちブイヨにくる任務は、難易度の高いものばかり。ヴァリアーの皆でもお手上げ状態になるような、そんなものばかり。いくら難しくっても、9代目が望むならあたしはなんだってやってみせる!! ―――って思ってんだけど・・・。 「まさかあたしに殺し以外の任務が来るなんて。」 あたしはたまたま暇なので、ヴァリアーの屋敷内、しかもザンザスの部屋でくつろいでいると、いきなり部下が来て今回の任務が書かれた紙をあたしに渡した。何を隠そう、ヴァリアーとブイヨは仲良しなのだ。 「うしし!殺し以外なんて面白くなさそう!で、どんなん?」 一人掛け用のソファに腰をかけ、任務が書かれた手紙を何度も繰り返し読んでいると後ろから誰かに取り上げられた。ふと上を見てみるとソファの背もたれに腕を着いて手紙を読むベルだ。どれどれ、とマーモンも背もたれに乗ってベルと一緒に読み始める。 「うっわー!地味!」 「面倒くさいね。」 内容を読んだベルとマーモンはそういってテーブルに手紙を放り投げた。 「面倒くさすぎでしょう。ジャポーネのマフィアつぶすほうが楽しそう。何よこれ。殺しがひとつもないじゃない。むしろ禁止だって!」 テーブルに投げられた手紙を拾いなおし、騒いでいるとまた後ろから誰かが来て手紙を奪い取った。 「あ、ザンザス・・・さっきまで椅子に座ってたはずなのに。」 「あぁ? 『日本の並盛中学校に通い、ボンゴレ10代目候補・沢田綱吉に接触し、まったく足りない殺意を備え付けよ。またそのファミリーの戦闘能力を上昇させ、その後ファミリーに加わること。能力は使っても良いが、人を殺してはいけない。極秘任務だ。読んだらこの手紙を抹消すること。』か。はっ!お前にはまったく不向きだな。」 「ごもっとも。多分、あたしの見た目が向いてるんじゃない?向こう中学生でしょ?ブイヨの中では多分最年少だしね。ってかさ、あたし個人的にはヴァリアーと仲良いし、その分10代目候補はザンザス支持派だし沢田の敵になるんじゃないのかなぁ?」 殺意の向上とかって、確かリボーンとか言う9代目の1番信頼する殺し屋の役目じゃなかったっけ?まさか、ある意味あたしも家庭教師?しかも「加わること」って・・・沢田ファミリーに入れってこと?うっわ、ありえない。中学生達の仲間に入るなんて、無理!人あんま殺せないジャン! 思わず顔をゆがめる。 ザンザスのファミリーなら快く受け入れられるのに、見ず知らずの10代目に仕えろなんて、絶対嫌だ。なにこれ?サワダツナキチ?ひぇ〜!どんな奴だよ!見たこともかかわったこともないやつ達に接触するってことは、資料集めしないといけないジャン!あとで9代目のところに言ってデータ回収しよう! 「スモーキンは別として、人殺しに関わったこともないようなあんなほとんど一般人みたいなやつ等に殺意を備え付けよって、どうすればいいの?ねぇ、皆はどういうときに殺したくなる?」 まったく予想が付かないのでその場に居た皆に聞いてみることにした。 「暇なときとか。あと、血が見たいときとか。」 「・・・それ、一般人じゃなくてベルの場合だけでしょ?一般人が暇なときに人を殺したり、血が見たくなったりしたらそれこそ大変ジャン。う〜ん、相手の大事なもんぶっ壊してけなしてめっちゃめちゃにするとかどう?」 「そうね、それもいいわね!怒らせて殺意を、ね!」 「そんなんで大丈夫だと思う?」 「大丈夫よ!だもの。」 そうルッスーリアは笑った。まって、あたしだからってどーゆーいみ? 「ねーえ、あたしがボンゴレとかって黙ってたほうが楽しそうじゃない?」 「うしし!それいいな!」 「いっそうのことさ、軽く暴力ふるって嫌われてみるってのも楽しいんじゃない?殺し禁止ってストレスたまりそうだし!」 ルッスーリアは、絶対楽しんでる。 「イジメってどんなんだろな〜」 「ジャポーネの漫画によくあるようなのかな?リボーンってゆうアルコバレーノいるんでしょ?あっち。徹底的にばれないようにしないと!アルコバレーノはあたしのことヴァリアーって思ってるみたいだしね〜。」 「あぁ、お前ががブイヨって事知ってんの俺等と老い耄れ幹部くらいだろ」 ま、早く戻って来い。そういってザンザスは自分の席にもどり、また机の上に足を乗せた。 あたしは手紙をもち、息を吹きかけると一瞬で燃えて一欠けらも残らず消えた。 「じゃ、あたしは早速データを頭の中に入れてジャポーネに行って、10代目をおちょくってこようかな。」 じゃあ、またね〜といって、屋敷に帰ろうと思ったら部屋の扉が開いた。 「ゔお゙ぉぃ!!帰った、ぞ!!」 いきなりドアを開けてザンザスの部屋に入ってきたのは任務を終えて帰ってきたスクアーロ。彼はあたしを見つけて少し驚いたようだったけどすぐに普通の表情に戻った。きっとあたしがここに居るのに驚いたんだろう。結構あたしに任務はいってくる率が高く、最近はあまり顔を見せなかったからだと思う。 「じゃねぇかぁ。元気そうだなぁ。」 「やっほ。そっちこそ元気そうジャン。任務お疲れ!じゃ、急いでるから行くね〜。」 軽く微笑んだあと、あたしは扉をあけて廊下に出た。廊下に出て回りに誰も居ないことを確かめると、軽くその場をジャンプした。 ジャンプした瞬間に シュン と音が鳴り、の体は消えた。 いくらヴァリアーの皆と仲がいいからって、あたしの能力はブイヨ以外では極秘。任務時以外はできる限り普通にしていなければならない。同じボンゴレの仲間だといっても弱みを握られてはたまらないからね。だからあたしの能力は、実際のところブイヨ以外は知らないのだ。 次に着地したところは自分の部屋。消えて着地するまで、一瞬の速さで。これを一般的に瞬間移動って言うんだと思う。できる範囲は4キロ以内までって決まってるけどね。 あたしの能力というものは、とても人間離れした能力である。 それもこれも昔居た、とあるファミリーの実験のせいで。あの頃は数年間、毎日毎日実験を繰り返される地獄のような生活を送ってた記憶がある。 ちなみにあたしの年齢は不詳だ。体の発育具合から行くと、13,14、15ぐらいだとおもう。あんなへんなミネストローネみたいな名前のファミリーに生まれたおかげで誕生日に年齢、親の顔までも知る機会がなかった。ちなみに苗字もない。名前だって、・5歳までなかったんだ。このという名前だって幼馴染に付けてもらったもの。 あ、そういえば、その幼馴染3人はどうなったんだろう? 幼馴染3人は、元々そのファミリーで同じ実験台仲間だった。その3人は、あたしのようなそのファミリーで生まれた子とは違ってそれぞれ別々に拾われてきた子。それまで別に仲良くなかったんだけど、ある日、一人の実験台の男の子が実験研究員を殺し、あたしや他の二人の男の子と一緒に逃げたのが仲良くなった始まりだった。そのときに、名前の無いあたしに3人はという名前をつけてくれたんだ。 そして共に過ごしたが、幸せはやってこず・・・次はあたし達を捕まえようとする人に追われる逃亡生活が始まって、半年後、もう逃げ切れなくなってしまってしまったんだっけな。 「あたしも、連れてってよ!」と泣きながらしがみついたんだけど3人は許してくれなかった。 「絶対だめです、は、いい人に拾ってもらって、幸せになってください。」 「そうらびょん、俺達は大丈夫らから」 「・・・また会えるから。」 その笑顔がとても優しくて素敵で、哀しくって動けなくなって。結局3人は自ら囮になり、あたしだけを逃がした。 そのまま彼等は――― 「あんなにあの子達はマフィアを憎んでたのに。あたしがマフィアになったって言ったらなんて思うだろう?」 もし、3人が拾われたのがあの最低なファミリー・・・エストラーネオじゃなくってボンゴレなら、今頃一緒にいたのかもしれない。変な能力なんて身についてなくって純粋に笑ってたのかもしれない。 でもまあ、結局過去のことなんて過去でしかないし。 あの3人と別々になってからすぐにボンゴレに拾ってもらって9年近く経ってるし、すでに3人の顔が上手く思い出せなくなっているし、よく覚えてない。自分がエストラーネオに居たことだって忘れかけてるし。それにきっと、向こうだってあたしの事はすっかり忘れてるだろう。 むしろあたしが今思い出したのが不思議なくらいだわ。行方も知らないしもう会うことはないでしょう。ただ、彼達が今幸せになっているように、と祈るだけ。そう心の中で区切りをつけて、早速ジャポーネにいく準備を始めた。悪役になるのが、物凄く楽しみ。 自分のノート型パソコンに送られてきた沢田綱吉ファミリー、または候補のデータが送られてきたところで頭に記憶しながら携帯、パソコン、お金などの必需品だけを持ち家を出た。 さぁ!準備は整った! |