あたしの高校は変わっている。
共学のクセに女子科と男子科にわけられ、校舎が別々。
校舎というか敷地が別々。行事も別。

本当違う学校じゃないのかっていうくらい別。
ほんとう赤銅学院高等学校女子科、なんて名前やめて青銅女子高校か何かに変えてしまえ。(だっせー名前!)


そこまでいうならここに入学しなければよかったじゃないか!という話だけどそれはそれは、私の脳みそが残念なために仕方の無かったこと。
はは!・・・泣いていいっすか?


入学試験後の面接で「志望理由は?」と面接官にきかれ
面接の練習もしてなかったあたしは「担任にここしか行くとこ無いって言われたんです」ととっさに答えてしまったんだ。
それでも合格。この高校が、そしてあたしはよっぽどのアホだ。


まあ、男女が話すことは、まず無い。

女子が男子校舎に入ったり、男子が女子校舎に入ったりすることは、まずありえなかった。
チョケて男子がこっちに入ってきたときはものすごい先生に追い回されて怒られて男子校舎に帰らされてたし。

まともに顔あわせたこともないんじゃないかな。



・・・なのに。



愛心★G




「まじありえねーーー!」



新学期がはじまって、少し経った頃。
あたしはいつも入っていく女子科校舎から数百メートル離れた敷地にある、見慣れてはいるけど入りなれないこの男子科校舎に入っていく。



近くを歩いてた男子たちが変な目でこっちをみた。こっち見んなこのやろー!

周りは、男、男、男、もっさい男、たまにイケメン、たまに女(教師)
思わずため息が出る。
ああああ!ため息って幸せ逃げる!3秒ルールがあるからまだ大丈夫!とかおもって思い切り吐いた空気を吸い込んだけど、ここにいる時点で不幸なんだからどうでもよくなって空気を吐いた。(キーンコーンカーンコーン)

あたしが男子科校舎に入って行った時点で人生がもう言葉にできないくらい残念なものに変わってしまった気がする。しかもチャイム鳴った。



なぜこんなことになったかって言うとわからない。身に覚えが無い。

・・・ただ、少しやらかしたのは
前々から自称ヤンキーみたいな奴と新しく同じクラスになったとき
「わたしが女子科の頭だ!」というオーラを出すウザイ愚かな奴だってことを知ってしまったので赤銅女子科の頭はこの熊井様ってことを教えてみただけ。(地元は今でもあたしの縄張りよ!!)
縄張り荒らす他校の奴をアントニオ猪木顔負けのコブラツイストで取り締まっただけ。
睡眠が大好きなだけ。(睡眠学習が得意。起きる頃には忘れてるけど)
自由も人生には大事だと主張しただけ。(だから登校時間も自由でいさせて)

ほかにもなんかいろいろしでかした気もするけど
そういうのを、2年間続けただけ。すると、なんだこの結果。



「熊井は女子科にいては周りに悪影響をかなーーーり及ぼす!明日から男子科にある3年D組に移ってもらう!!!」

学校始まって以来の異例の異動。


「まじで死ね!」


どうやらあたしは自覚が無いだけで赤銅女子創立以来前代未聞の女生徒だったらしい。

まあ男子科3Dは悪がきの寄せ集めらしいしそっちに移ってくれたほうが楽、ということなんだろうきっと!これ金八先生聞いたら泣くな!中3時のクラスメート聞いたら笑うな!これ!

まあ、とりあえずあたしは女子科では手におえなくなったらしくそっちに移されることになったのだ。
兄貴も慎ちゃんも隼人達も皆学校は違うけど3年D組だった。
どこの学校でも3Dっていうのはアホばっかり集められてるんだろうか?

まあいいや!あたしも慎ちゃんたちとオソロの3Dだもん☆とか前向きなこと考えつつ3Dに向かった。
普通なら先に職員室に行くんだろうけど、面倒くさいしね。


適当に歩いてたらなんか奥のほうに本当きったない廊下が見えた。
まじゴキブリわいてんじゃね?絶対ここ、3Dだ。(ほら!3年D組って書いてるよ!)

「せっかく女が来るんだからちょっとはきれいにしとけっつーの!」
置いてあったスケボーを蹴飛ばした。すると壁にぶつかってなんかいろいろ落ちてきたので放置することにした。

中から聞こえる騒がしい声。あたしが担任になるわけじゃないけど、おし担任になるなら、先が思いやられるなあって思うと思う。
あたしでさえそう思うんだし、ここのクラスの担任はもう可哀相だ。あたしだけでも仲良くしてあげようと思う。

こんなとこで突っ立ってても時間の無駄だし3Dの教室にさっさと入ることにした。
扉に手をかけて少し停止する。


この中男ばっかなんだよね?
あたしいくら中学校の時男子とばっかつるんでて、慎ちゃんとか、隼人とか男ばっかり友達が多いって言っても・・・。

さすがにクラスに女一人は浮くっしょ!


やっべえ、急に不安になってきた。
父さん、母さん・・・!兄貴に伸太郎(中学校の親友)たちよ・・・!


「わ、わわわ、我に力を・・・!!!」

うっわなんだこのセリフ!まあいいや!ええい!あけてしまえ!

おもいっきり、ガラガラ!!と扉を開けるとやかましかった教室が一気に静まり返った。


「え、お前誰やねん」

えええええ!いきなり!?

なんか一番廊下側、一番後ろの席に居る緑色のパーカー着てる奴に言われた。
っつーか見た目若ッ!高校生!?中3の時にチビが一人居たけど、そいつと同い年くらいに見えるんですけど!!(そのチビ真佐人って言うの)(元気かなあ?)


「いやいやいや!あたしから言わせて貰うなら、あんたこそ誰だよ。中学生はここ立ち入り禁止じゃね?」

あたしが言うと「誰が中学やコラア!」と怒ったので「はいはいー、朝からうっさいなあ。」と流しておいた。
あたしが一応女だからか知らないけど手を出す気は無いらしく舌打ちをして席に座った。いくらあたしでも、かかってこいやあ!とはさすがに初対面では言わない。

こんな奴は放っておいて(第一タイプでもない)せっかくの男子校ライフを送るんだから男前でも見つけてエンジョイしよう!タイプの人でも見つけていこう!一人一人顔を見ていこっかな!
まずは一人目。
ちょうど前のほうに座ってた人と目が合った。心の中で、パス!って思わせていただきました!!なんか「おいおい明らか君、10浪してますよねえ!?」って言いそうになったぜこのやろう!
次の人に目をやった。すると、次の人はあたしをガン見。

「は?」

しっかっも女だ。片手を口にやり、もう片手で思い切りあたしを指差して、オーバーリアクションでアワワワ!となってる、ジャージ姿のものすごく見覚えのあるこの人。


もしかして、

「ヤヤヤヤンクミイイ!?」
ーーー!?」
だけど!あたしだけれども!ヤンクミなんで、ここに!?南の島に行ったんじゃないの!?」
「まあ・・いろいろあったんだ!ここに来る女子生徒ってお前だったのか!」
「へーえ!ヤンクミが担任なら面白そうかなあ。で、あたしの席は?」

「お前の席なんか無いわ!出て行けや!」

さっきの恨みか何か知らないけど緑パーカーがそう言って来る。
が、しかし「っつーか、席もクソも無いね!空いてる席すわろっかな!」
そうあちこち見渡して言う。緑パーカーは無視だ。



「だっせー!無視されてやんのー!」

けらけら!と笑い声が聞こえる。そっちを見ると緑パーカーと対称的に窓側の一番後ろの席に座ってる金髪の短髪の男子だ!


「なんじゃこらあ!」

緑パーカーがそう怒鳴り、その後ろに居たもう一人すこし口が大きめの男の子が立ち上がり、「誰じゃあ!どつきまわしたらあ!」という。こいつも関西弁か!

すると、窓側の金髪が相手を挑発するような笑みを浮かべ、その横に居たなんか男前の男が中指でちょいちょいっと「来いよ」的合図した。

そして、緑パーカーと金髪、男前と口の大きな男が乱闘開始!
周りはとめるどころか囃し立てるし!!
「・・・もしかして、慎ちゃんとか隼人とか、こんなんだったわけ?」
「いや・・・ここまでは・・・。」

ふと気づいたのが、周りが乱闘になってる中、端っこ同士でにらみ合ってる二人が居た。
一人は前髪に金メッシュの男と、もう一人は隼人+竜÷2みたいな子。
周りは立ち上がりなんか言い合ってるのに、その二人は立ち上がろうともせずお互い目線をはずさない。



「ヤンクミ、まさかこのクラス頭二人居る?」
「・・・その、まさかだ。」




我に力を・・・!!

(あの、あたし、ちゃんとやっていけるんでしょうか。)(激しい男子校ライフになりそう)