沈黙が続き皆が集中治療室の中を見ていると横からドアの開く音がし、そっちを見ると卯ノ花と勇音が居た。 その姿を見た七緒が卯ノ花にとびついた。 「はどうなんですか!」 「落ち着きなさい伊勢副隊長。」 「・・・すみません。」 七緒は掴んだ羽織を放した。 ![]() 「で、どうなんだよ。」 卯ノ花の前に更木が立つ。 「手術自体は成功しましたがまだ油断は出来ません。 肩の刺し傷から猛毒が検証されました。もう少し毒の量が多ければ彼女は・・・。 今は輸血をしたので大丈夫ですが大量の出血により体がショックを起こしていたようです。 あと少しでも遅ければ・・・手遅れでした。 峠を越えれば安心できるのですが、まだ危篤状態、には変わりありません。いつ何が起きるか解らない状態です。 背中の傷が深く鎖結と魄睡が深く傷ついているので霊力が極端に弱っております。それに極度の睡眠不足と体力低下に栄養失調が重なっていたので回復は遅いと思われます・・・。」 「そうか。」 何かございましたらまた呼んでください。そう残して卯ノ花は集中治療室の隣にある部屋に入っていったのだった。 「ちゃん・・・。」 やちるは先ほど恋次を励ました時のげんきは既になく、不安げに名前をつぶやく。 そういえば最近のは疲れているようだった。 そういえば、ご飯をあまり食べているようには思えなかった。 なんで1日中側にいたのに気づかなかったんだろう、 やちるの頭にはそんなことがぐるぐると回っていた。 また皆がジッとガラスの中を見つめているときだった。 がピクリと動いた。 皆が喜びに満ち溢れたときだ。もしかしたらそのまま目を覚ましてくれるかもしれない。誰もがそう思った。 だが、期待はことごとく裏切る。 「ガハッ!」 の口から血が流れた。中にいる看護婦が慌ててるのが解る。 「どうされまし・・・っ!?」 卯ノ花も慌てて出てきて必死で治療を進める。 「!」 「乱菊さん!落ち着いて!」 取り乱した乱菊が、集中治療室の中に入ろうとドアを開けるがそれを修兵が止める。 ドアを開けたおかげで中の物音が良く聞こえる。看護婦の慌てる音、ピピピピ!ピピピピ!という異常発生のような音。そしてのむせ返る声。 「放して!があんなに苦しそうなのに黙ってみてろってゆうの!?」 「落ち着け松本!お前が取り乱したって状況は何もかわらねえだろ!」 一角が乱菊を落ち着かせようと声を荒げて言うが聞く耳を持たない。 「放してよ一角!が、が!」 「松本!お前が行ったら逆にー--」 ピ――― - - - 逆に邪魔になるだろう!一角が言おうとしたこの言葉を遮るように室内に一定音が鳴り響く。 その場に居た皆が目を見開き、脈を打たなくなった心電図を見つめた。 「うそ、だろ?」 そう呟く修兵の声がやけに響いた気がする。 一角の腕を振り切って乱菊がの側に駆け寄る。 顔が真っ青で、息はもうしてない。 「!ねえってば!」 乱菊がの肩をゆすり叫ぶ。 「電気ショックをします!松本副隊長!少し下がりなさい!」 卯ノ花の声が聞こえていないように名前を呼び続けるので一角と弓親が二人掛りで離させる。 電気ショック1度目、大きくの体がはねたが心電図が脈打つことはなかった。 巻かれた包帯が痛々しい。 「起きなさいよ!この馬鹿ああ!」 涙で顔がぐしゃぐしゃになってる七緒も叫んだ。足が震えていて、崩れ落ちそうだ。 居てもたってもいられなくなり他の皆も彼女を呼ぶ。 2度目の電気ショックも先ほどとさしてはかわらない。 みるみるうちに顔がもっと青くなる。 「こら!!てめえ何考えてんだ!」 「ちゃん!目さましてよ!」 「先死んだら許さないよ!」 「しっかりしろよ、まじでよ!」 そこから何度目かで何とか息を吹き返し、安堵の息を吐いた。 でも、がとても弱々しくて辛そうだった。 安心したのか、乱菊ややちるの目にも涙があふれた。 正直もうダメかと思っていた。でもまだ、生きてる。 「おい、お前ら。」 少し落ち着いたところで、剣八が集中治療室から出るように促しそう言う。 「とりあえず隊舎に戻れ。こんな時間だ。」 午前8時。 もうすぐ出勤時間だ。 「仕事に行く気にならねえのは皆一緒だ。なあに、あいつはすぐ起きるさ。俺らが信じてやらねぇと起きれるもんも起きれねぇだろ。何かあったらすぐに連絡来る。駆けつけるのはそのときで良いじゃねぇか。」 何が何でも仕事に戻らせる気の更木には誰も逆らえず、皆は四番隊からしぶしぶ去ることになった。 □□□ あたしが死んだと知ったら、乱菊や七緒は泣いてくれるのかなあ・・・? 直接「ありがとう」って伝えれなかったのがすごく残念だけど。 勝手においていくのに、あたしの分まで生きて欲しいな。って言うのは無責任で卑怯かな? 死んでいるあたしが死んだら何処に行くんだろう? 体は霊子になると聞いた。 なにはともあれあたしは死んだのだ。 行く場所に困っていると、いきなり上下左右もわからない暗闇の中に放り込まれてしまった。 「!ねえってば!」 「起きなさいよ!!この馬鹿!」 「こら!いつまでそうしてんだよ!」 「ちゃん!目さましてよ!」 「先死んだら許さないよ!」 「しっかりしろよ、まじでよ!」 どこかから沢山、あたしを呼ぶ声がした。 後ろから追われているような錯覚さえ覚えた。 何度も何度も、沢山呼ぶ声がする。 全て同じような声に聞こえて怖く思うけど、どこか懐かしさを感じるのはどうして? 誰だったっけ、なんだったっけ、 (何!?やだ、助けて!) 思い出せないことが怖くなって思いきり逃げるように走りつづける。 もう自分が何処にいるのか、何処へ向かっているのかも解らない。 少し経って違和感に気が付いて立ち止まる。 そういえば背中の痛みがない!口の中も血の味しないし、肩も痛くない。 暗闇の中なので血が付いているかどうかはわかんないけど服が乾いているのできっと服まできれいになってると思う。 今の自分の状況が上手くつかめていない。 死んで、尸魂界抜け・・たのかな? 暗闇に落とされて。 あたしは一体何処に向かってるのかなあ・・・。 Next |