やばい、と思った瞬間気づけばを抱えて走っていた。 恋次!と呼ぶの声なんて無視だ。 ![]() 「間に合ってくれよ・・・。」 慌てて四番隊に向かった。 自分の着流しを破いて背中にあてがうが、背中から流れる血が止まらずすぐに真っ赤に染まり、しみこみきれなくなった血が恋次の腕を伝う。 (くそっ!血が全然とまらねえ。) 瞬歩でだいぶ早く走ってるはずなのになかなか着かない気がして苛立ちを覚える。 ようやく四番隊に着き慌てて駆け込む。 尋常じゃない恋次の様子に慌てて出てきたのは七席山田花太郎をはじめ数人の隊員。 「阿散井副隊長・・・!どうされました!」 「おい!こいつを助けてくれ!」 そういって恋次の腕の中に目をうつし、思わず絶句した。 「さん・・・!?すいません卯ノ花隊長を!」 彼女は生気も感じられずピクリとも動かない。もう死んでるのではないかと思ったがほんの少し、集中しないと解らないミジンコ程度の弱い霊圧を感じることが出来たが明らかに危篤状態だ。今死んだとしてもおかしくは無い。 だが今は何も考えてる暇は無い。 横にいた隊員に急いで卯ノ花隊長を呼んでくるよう指示した。 「どうぞこちらへ!」 花太郎に誘導された恋次は手術室、とかかれたなにやら器具が大量に置かれている部屋へと運び手術台に寝かせた。 すぐに来た卯ノ花と勇音に阿散井は少し安心する。 卯ノ花隊長の顔を見るだけで安心できるのは、絶対的な治療の信頼を置いているからであろう。 手術台に横たわるを見て卯ノ花はなにやら複雑そうな顔を、勇音はヒッ!と息を漏らし目の前の光景を疑うような,そんな表情をしていた。 卯ノ花隊長のその表情で、かなり深刻だと悟った。 とても怪我が酷く治癒能力、だけではどうにもなら無いようだ。 「最善を尽くします。」 心配で半泣きになってる恋次に卯ノ花はそう言い、恋次はおねがいします、と頭を下げて手術室を出た。 手術室の横のベンチ。 腰掛け、祈るように手を合わせた。 「お願いだから、死なないでくれ、」 弱弱しい恋次の声が廊下に響く。 「恋次さん。」 10分くらい経ったころだろうか花太郎が手術室からでてきて顔を上げた。 「おい!は、どうなんだよ!」 ランプがまだついてることから手術が終わったわけでもないこともしってる。 こんな短時間で何かが変わったようにも思えないのも解ってる。 だけど聞かずにいられなかったのだ。 「僕のほうからはまだ何も・・・。まだ危篤状態に変わりは無いかと・・・。」 「・・・すまねえ。」 「いえ・・・。それより卯ノ花隊長の命で更木隊長を呼んで来て頂いてもよろしいでしょうか・・・?」 「更木、隊長を?」 「はい。」 「もしもの時のため、だそうです。」 「っ!わかった!」 恋次はすかさず地獄蝶を飛ばした。 更木隊長はなんていうだろうか。 壁に腕をつき、もたれるように項垂れる。 (俺がもっと早く気づいてたら・・・!) 俺が早く気づかなかったせいで、もしが死んだら?そう考えるとどうしようもない腹立たしさがこみ上げてき、思い切り壁を殴った。 外の地平線がオレンジになってきた、そんな早朝のことだった。 □□□ 最期にあなたの顔。見れて良かった。 この前までいつも恋次が側にいた。 だからいつも幸せだった。 ずっと前まで恋次が笑いかけてくれていた。 だからあたしもつられて笑っていた。 本当に前まで、恋次と手をつないでいた。 心まであったかくなっていたのはあなたのおかげ。 ずーっとずっと前、恋次と初めて口付けを交わした。 恥ずかしくって目をそらしたけど嬉しかった。 ずーッと前、初めて体を重ねた。 もっともっともっと、あなたが愛しいと思った。 なんでだろう?あなたの顔ばかり思い浮かぶよ。 はじめて十一番隊で見たときのあの警戒した顔。 年は下だけど先に入隊していたあたしを「本当に強いのかよ」っていう目で見てきて。 あたしも喧嘩ふっかけたりして。 仲悪かったんだよね。 少し経ってあたしが皆の前で思い切り転んでドジしたとき、それをみて少しだけ笑ったあの顔。 だんだんなれてきたのかちょっとずつ心開いてくれていつの間にか見せてくれたのは緊張の解けた素顔。 大分慣れてきたのか笑いかけてくれるようになった笑顔。 ・・・大分仲良くなって素で笑ってくれたときの顔も。 たいやきをあげたとき嬉しそうに笑う犬みたいな笑顔に 好きだと伝えたときの驚いた顔も、笑顔で即答で俺も好きだ、と言ってくれたときの顔。 そしてそのあと気持を伝えてくれたときの真剣な顔。 あたしが怪我したときの酷く心配した顔も。 恋次が失敗して落ち込んでいたときの顔も。 喧嘩したときの拗ねた顔も。 最近の、あの冷たい視線も。 全部思い出せる。 脳裏に焼きついてぜんぜん消えようとしてくれない。 でもさ、これだけ思いであれば十分だよね。 愛してくれて、ありがと。 Next |