地面に伏せたまま動かない虫の息のあたしを見て、6人は相談している。 『殺してしまおう』とか『どうせもう死んでしまうだろう』とか。 その通り、あたしは立ちあがる元気は残ってない。 反撃する体力もなければ指を動かすことすら出来ない。 ![]() 急に「死」という言葉がすごく身近に感じて恐ろしく思う。 ごめんなさい、皆ごめんなさい。 迷惑かけるだけかけてあっさり死んじゃうなんてごめんなさい! 十一番隊でせっかくあんなに厳しい鍛錬を受けてきたというのに。 ちっとも活かせてないや。 ゆっくり目を閉じたときにぱっと浮かび上がった恋次の笑顔。 そういえば恋次を怒らせたままだった。 最後に見た恋次はと一緒だった。 そんな記憶は嫌だなあ。 せめて、もう一度顔を見たかった。声が聞きたかった。 ごめんねって謝って、好きだよって伝えたかった。 このまま死んで良いのか? 答えはNO だ。 後悔ばっかり残って成仏(?)なんてできっこないや。 考えてるとすこしずつ意識が戻り始めた。 目をゆっくり開くと視線の先に見つけたあたしの斬魄刀。手を伸ばせば何とか届く範囲にある。 (やった・・・!) 敵に悟られないようにじわじわ手を伸ばし、血まみれの斬魄刀を手に取る。 落ちていた血に腕がずいぶん汚れたがそんなのもどうでもいい。 斬魄刀の柄を握り締めると、わずかだか気力が戻ってくるのを感じる。 ゆらりと立ち上がると驚いた顔であたしを見る6人の暗殺者達。 やっぱりこんなとこで死ねない。 あんた達になんか殺されてあげない。 あんた達の思い通りになんてなってあげない。 集中力を高めると暗殺者が息を呑んで固まった。 「なにを・・・!?」 「女の霊圧が急激に上がったぞ!」 集中力、そしてあたしの信念が霊圧を突発的に跳ね上げた。それにたえきれなくなったのか部屋に張られた結界が壊れる。 その霊圧に押され次は敵のほうが動けなくなっておりあたしはそのうちに始解をしておく。 だからといって体力はそこまで残っておらず、目を瞑りこれも最後の力を振り絞り相手の首を狙って振り回した。悪あがきのつもりだった。 手には人を斬る感触が伝わってくる。 斬るたびに返り血を浴びていることから確実に相手を斬りつける。 感触がなくなった頃ゆっくりと目を開けると6人の暗殺者は無残にも酷い刀傷に血まみれで床にひれ伏せていた。 (死んだの、かな・・・?) 霊圧も殺気も感じられない。首が無いもの、そのほかは瞳孔が開いていることから生きているのは瀕死状態のあたしだけだわかる。 あたしの命を狙う奴がもう居ないと思うと一瞬で緊張感が解け、安心感であふれたのと同じだけの疲労感も出てきた。 少し壁にもたれると傷が壁に当たり痛くって息が出来なくて。 体制を変え、怪我をして無い部分でもたれかかる。 自分の力だけではもう既に立てない。 腕に受けた手裏剣には毒が塗ってあったのだろう。 最初はビリビリしてたけど感覚はもう無いに等しく動かすことが出来ない。 息を何とか吸い込んで呼吸を整えようとするが一向に乱れが収まらない。 部屋の中はまさに血の海だ。 皆の血が混ざっている。もちろんあたしのも。 あたしの部屋は白を基調とした部屋だった。 こんなに真っ赤にした覚えは無かったのに。 七緒と乱菊と3人で1日中語り合ったテーブルも、一角と言い合いした部屋の入り口も 弓親と斬魄刀を磨きあった床にも血に首落ちている。 机の上に飾っていた恋次から貰った大事にしていた髪飾りも綺麗な水色だったのに。 真っ赤になっていて悲しい思いをする。 下を向けば大量の血が溜まっていた足元。 確か血に濡れていない場所に立っていたのになあ・・・。 斬られたときから出血の勢いが止まらない血は服に染み込みきれなくなり下に流れ落ち続け、そして床に溜まっていた。 その血を見て怖くなった。まさに戦国時代の戦場のようだ。 今、少し貧血状態で、フラフラする。 きっと今、気を抜けばすぐにでも意識を失い死んでしまう。 肩から流れ、指先にまで流れてきた血を適当に服で拭き、気を引き締める。 (そうだ、恋次に謝らないと。) 始解を解き普段の形に戻った斬魄刀を杖代わりにゆっくりと進み始めた。 ここから恋次のいる六番隊宿舎まではちょっと遠い。 それまで生きていれば良いんだけど。 Next |