その日は入院させられ、翌日の朝には退院した。 入院中、恋次のことで泣くことはなかった。 泣いてはいけないと思ったからだ。 ![]() 怪我は腹部と肩部、両方の傷口が開いていたが、1日だけの入院だったので完治はしていない。 ゆるく傷がふさがっているだけ。 退院する際に、卯ノ花隊長には、黒いオーラをかもし出しながら「1週間は完全に安静にしていてくださいね」といわれてしまった。 次やったらたぶん、死にそう。青ざめながらも必死でうなづくしかなかった。 隊舎には顔を出さず今日はゆっくり休もう。 誰にも会いたくないようなきがするしあいたい気がする・・・どっちなんだよこのやろう。 「、」 四番隊から自室へ戻る途中、後ろから声をかけられた。 「あ・・・。」 そこに居たのはあたしの親友と言っても過言では無いこの二人。七緒と乱菊だ。 心配そうな顔つきであたしの元に走ってきて、乱菊はあたしを抱きしめた。 「あんた、恋次と別れたんだってね。」 「全部阿散井副隊長から聞いたわよ。どうしてあんなこといったの?」 「ほら、全部言ってごらんなさい?スッキリするかもよ。」 乱菊のその言葉に、涙ぐむ。 泣かないように我慢してたけれどなんだか2人の顔を見ると、もうだめだ。 「ななお、らんぎく・・・ううう、ひっ、うぇえ」 涙がこぼれるの我慢していたけど次からあふれてき、大声で泣いてしまった。 あわてた2人は急いであたしの部屋に移動した。 なかなか嗚咽が止まらなかったが、それでも全て話した。 話し終わるころには、何とか泣き止んだが、ひっ、ひっ、というしゃっくりのようなものが止まらない。 「例のさんとその周りの集団、ですか。」 「にしても、その平隊員たち本当許せないわ!、あんなやつ達に負けちゃだめよ!あいつに恋次取られても良いの!?」 「そうよ、私は阿散井副隊長にはが似合うと思うわ!・・・あたし達は何があっても味方だから。」 2人は微笑んであたしの頭に手を置いて髪をくしゃっとした。 二人の優しさが身に沁み、自然と涙はもう止まっていて気づけばあたしも笑っていた。 「泣き止んだらお腹もすいたでしょ?ってことで蕎麦饅頭買って来たの。もちろん食べるわよね?」 「ま、たまには仕事をサボるのは良いってことで。・・・乱菊さんはサボりすぎですけどね。」 やっぱり乱菊は仕事をサボってあたしのところまで来てくれていたらしい。 仕事に真面目な七緒まで。今頃京楽隊長が七緒を探しているのが想像ついてしまう。 「じゃ、あたしはお茶淹れてくるね!」 そういい立ち上がった。 その後はお互い愚痴や面白話で盛り上がった。 久しぶりに楽しい、と感じれたかもしれない。 □□□ 次の日から普通に仕事に行った。別れて三日目だ。 「お、久しぶりだなお転婆娘!ここで倒れんなよ。」 「大丈夫ですー!」 隊舎に入ると、偶然執務室からから出てきた一角に出くわしあたしに言う。 素直に大丈夫かとは言わないところが彼らしい。 「素直になりなよ一角。美しくないね。 気を悪くしないでね、こう見えて本当はのこと心配で心配でたまらなかったんだから。勿論僕も。」 「誰が心配するか!」 弓親が言ったことが本当だったようで顔を少し赤くして怒鳴る一角は、またまた執務室に入り自分の席へと戻っていった。 知ってるよ、偶然部屋から出てきたように見せてたけど、本当はあたしが隊舎に入ったのに気づいてわざわざ出てきてくれたって事。 「それと、目がまだ腫れてるよ。ちゃんと冷やしておきな?可愛い顔が台無しだよ。」 弓親が小さい声でそういい、ぽんぽんと頭をなでて自分の机へと向かった。 「・・・ありがと、」 小さくつぶやいたのだけど、聞こえたかどうかは解らない。 あたしも仕事しよう、と執務室に入ろうとしたときだ。 「ちゃあん!」 「ぐああ!」 次は後ろからやちるの声が聞こえてきたと思って振り向こうとしたら首が絞まった。 「ややや、やちる、くび!ギブ、ギブ!うあ、肩が、裂ける!傷、ぎゃあ!」 「おいやちる、が死にかけてんぞ。」 「うわあ!大丈夫?!」 あたしが顔真っ青にしていると救世主・更木隊長が来て、その言葉にはっとしたやちるが首から手を放して下におりた。 首締まっただけじゃなく、肩の怪我にも刺激が来た。 「ちゃん、あたし本当に心配したんだよ?」 振り返ってやちるの方を見ると、いつも笑顔の彼女から笑顔が消えていた。 今にも泣き出しそうな顔を見て、本当の本当に心配してくれていたんだと胸が痛くなった。 思えば、やちるとは虚退治に行ってから一回も会っていない。大怪我で意識がなかったときからズット。 やちるだけじゃない、隊長以外の十一番隊皆だ。 書類取りに行ったときはお昼時だから皆出て行ってていなかったし。 あたしも一角や弓親が虚退治に行って、大怪我で死に掛けて一週間目が覚めなくてしらないうちに退院して、会いに行く前にまた倒れたって聞いたら何事かと心配する。 「ごめんね、心配かけたね。」と言い頭をなでると、ぎゅっとあたしに抱きついた。 もう心配かけないから、と言うと、ぱあっと明るい笑顔を見せたやちるはいつもの特等席・・・隊長の背中に戻っていった。 ソレを見て、あたしも机で書類整理に向かった。 「居る〜?」 「乱菊!」 「もうお昼だし、ご飯行っこー!」 集中していたせいで気づかなかったがもうお昼時だった。 一角は既に隊舎を出ているらしく部屋には居なかった。弓親はあたしが居ないときに非番返上で書類をやっていたために非番。 大量にあった書類の数もほぼ終わりに近く、あと少しで今日の分も終われそうだ。 「そうだね、お腹すいたし!早く行こう!」 書類をまとめて飛ばないように錘を置き、一緒に隊舎を出た。 ちょっとまて! そういえば一番気まずいのはお昼だ。 各隊お昼ご飯の時間が同じ。食堂も1つ。 会う確率なんて半端泣く高いんだって。 がやがやとしている食堂内に入るとすぐに赤い髪を見つけた。 彼は吉良をつれている。 そして、前まであたしが居た場所には、。 楽しそうに話しているではないか。 複雑な想いで空いてる席を探していると、ちょうど恋次から離れたところに一角を見つけそこに入れてもらうことになった。 乱菊にまで気を使わせてしまって、本当に申し訳ない気持でいっぱいだ。 「本当、お前は馬鹿だよなー。どうやったらそんなに傷開くんだよ。」 既に一角は食べ終わっていたらしく爪楊枝を加えながらあたしに聞いてきた。 まさか、ソレを聞かれるとは思わなくて目が泳いだ。 乱菊もほんの少し霊圧が揺らいだ気がした。 「こけちゃってさ!」 えへ、と笑うと「どんくせえ」と一角が呆れた。 ごまかしきれていれば良いんだけど。 とりあえず、笑顔でいなきゃ、悲しい顔を見せないように。 周りに心配かけちゃいけないもんね。 ご飯を食べ終わり、十番隊隊舎前で乱菊と別れ、一角と2人で隊舎へと歩いていた。 「あ〜あ、本当元気で良かったぜ。もっと落ち込んでるか思ってたのに。」 きっと、恋次との事を言ってるんだろう。 ココはとりあえず笑っておこう。 「まあね、」 「それだけ笑えてたら大丈夫だ。」 本当は、心から笑えてないことくらい彼にはお見通しなんだろう。 けれど、今はソレで良いのだ。 どうしても気になってることがあり、あたしは立ち止まった。 「ねぇ一角。あたしってそんなに可愛げない女?」 「あ?あぁ、やっと気付いたのか。」 その問いに、一角は数歩あるいて立ち止まり、そのまま一角は笑うが、こっちを振り向いた瞬間その笑顔は消えた。 多分、あたしが泣きそうな顔をしていたからだと思う。 「ちょ、お前泣くなよ!冗談だって!」 「・・・なんかさ、いろんな人から可愛げの無い女って言われたり 恋次とつりあって無いって言われたりして。 凄く自分に自信無くなって! あたしもう恋次一緒にいたらいけないんじゃないかなって思うようになって! だって、平の死神にまで影でそういわれてたんだよ!? じゃあなんかいろんな気持ちがごちゃごちゃになって、、別れて正解だったのかな? もうどうかもわからないよ。」 一角はのことを、可愛げ無い、我侭女、どんくさいなどいろいろ言ってきたがもちろん冗談のつもりだった。 むしろ、からかい遊び相手としてのことを気に入ってたのだから。 それがを追い詰めていたなんて。 罪悪感がこみあげる。。 「、」 「もうあたしはどうしたら良いのかわかんないよ、恋次に酷いこと言っちゃった。 でも、もう顔合わせられない・・!」 一角は、慰めるように抱きしめ、背中をぽんぽんと叩いた。 「、本当馬鹿だ。確かに馬鹿でまぬけでどじで頭は悪いけどよ、十一番隊らしく喧嘩や虚退治でのお前は見違えるほど頭がキレる。 ちゃんとお前ぇには副隊長と比べて色気もあるし、松本と比べて可愛げもあるぜ。 からかいがいもあるし、十分面白い。普段は勇ましいが、着飾ればそこらの女より十分綺麗だ。 ・・・なんつうか、悪かったな。」 なんちゅう例え方だ、と突っ込みたい気分になったけど、やっぱりこういう素直じゃないのが一角らしく嬉しく思った。 「・・・ありがと!だいぶ元気でたよ。隊舎もどろっか!つるリン!」 にこりと笑って彼の腕からスルリと抜け、走ると「そのあだ名やめろやああ!」と追いかけてきた。 少しの間だけ、嫌なことを忘れることが出来そうだ。 仲間って、良いな。 その日雛森ちゃんから聞いた。 恋次がの告白を承諾した、と。 Next |