あ、恋次だ。 あれ?・・女の死神と歩いてる。
・・・楽しそう。


可愛げの無い女


一週間と少し前、流魂街に虚の反応が出たので、十一番隊四席であるこのあたしと、部下数名を引き連れて出て行った。
すると、なんてことだ!そしてメノス!メノス!メノスの大群!いち、にい、さん・・・7匹ですか。
あたし以外平隊員・・・しかもほぼ新入りなんですけど。大丈夫かな、あたし。



見た瞬間、背筋が凍った。ここで一角がいればうひょひょ!と喜ぶんだろうけど。

くっそ、一角にこれ譲ったらよかった。
一角も、あたしも行きたいって言うことで一緒に行けば良いんだろうけど隊長が書類の山を指して「2人はだめだ、どっちかにしろ」とかいうからじゃんけんであたしが勝って、大喜び・・・。

一寸前のあの喜びを返してほしい。
でもそんなこと言ってられないから斬魄刀を開放し、平隊員を守りながら戦った。
こんなメノスなんて平が相手できるものじゃないしね。



誰も死にもせずに負傷者も本当に少なく終わったのはいいものの、ものっそい梃子摺った。
守りながらにしても平隊員は怪我を負ってしまいすぐに気絶。
それでも更木隊かコノヤロー!!!


とかいいつつやっぱり一番怪我が酷かったのがあたしで集中攻撃をあびてしまった。
砂糖に集る蟻のように、霊圧の高いあたしに集るメノス。

拷問だ。霊圧の消せるメノス、やばいくらいすばやいメノス。
こんなの居るって聞いて無いってば。

救援を呼ぼうにも、それすらできない怒涛の攻め。そして伝令機破壊。
隊員はほぼ気絶か負傷で動けない。

あたし、死ぬんじゃね?でも強い相手に殺されるのは本望だよね!とか一人で考えながら全力を尽くしてたら、一人気の利く隊員がいたらしく救援を呼びに戻っていたみたいで一角と弓親が救援に来てくれ、生き延びたのだった。

肩から肘にかけて爪で引き裂かれてたり腹部貫通してたりで、血は大量に流れたがそこまで命に別状は無かった。
目を覚ましたのが2日前。


目を開けたときには物凄い血相した恋次が顔を覗き込んでいて
いきなり抱きしめられ少しだけ傷が開いた、とか。
目が覚めたその日は病院にいて、昨日には退院することができた。




早速退院したその足で仕事をしようと隊舎に向かっていたら恋次に叱られた。完治するまで絶対安静、って。
まあ十一番隊の仕事なんて、ほぼ稽古だもんね。

怪我も少しマシになり、書類整理ならできると思い
休んでいた分の大量の書類を隊長から預かって自宅に帰る途中だ。
あんなうるさいところで仕事してたらもうたまらなく無理!

普通の死神は隊舎に部屋がある。
けど十一番隊にはやちるを除いて女はあたし一人なので隊舎と少しはなれたところに自宅がある。
別にあたしはよかったんだけど女性死神協会の方々が猛反対で、運営資金でわざわざ・・・!せんきゅう七緒!
ついでにと言って、暇なので図書館にあった本を借りることにした。


怪我をしていない腕で書類の束を持ち本も腕に挟んで歩いているとなんだか良くわかんないけど、恋次に会いたいな、と思った。

怒られるのを承知で六番隊に向かうとナイスタイミングで会いたくて堪らない人が
隊舎から出て来たもんだから思わず笑顔になり早速話しかけようとした。


「れん!、じ?」


やっぱやめた。
部屋から出てきた恋次と一緒に女死神が出てきて、あたしの目にはとても楽しそうに映った。


何故だろうか、少しだけ距離を感じた。もちろん恋人は私。
あの子はただの6番隊の女だってわかってるんだけど、嫉妬、かな。



「ま、いいか。」


この状況で恋次のところへ行ってもなんだかお互い短気だし、あたしが嫌な態度とると思うので喧嘩になりそうだと判断し、自宅へ踵を返した。
もともとあたしは顔だって可愛くないし性格も可愛くないし。
いつ愛想つかされても仕方ないから、ね!と思いなおす。


でもあの死神は恋次のことが好きだと聞いた事がある。女性死神協会で恋バナしたときに某巨乳副隊長さんに聞いたのだ。

それにあの子はあたしと違って、小さくて可愛くて何度か話したことがあるけど性格も可愛くってどっから見ても女の子っぽい。
なんというか守ってあげたくなるようなそんなタイプだ。


やっぱあたしじゃ釣り合わないのかな、恋次に釣り合ってるところなんかあるのかな――
考えれば考えるほどネガティブになっていく。
あたし、我侭だし、男みたいだし、背も小さくないし美人じゃないし
大雑把だし女らしくも無いし、、、

可愛くも無いし、可愛いと言われたことも無い。
(腹立つ事に、あのハゲ野郎に可愛げの無い奴、と言われまくっている。)
挙げていくと日が暮れそうだ。
本当釣り合ってるところなんて身長くらいだね。
あたし乱菊よりも2cmデカいから。

部屋に入って執務に集中しようとしても筆を持つと傷が痛む。

(ちっ、まだ早かったか。)

少しあきらめて、気晴らしに先ほど借りてきた本を読むことにした。

「掠れて読みにくいな― えーっと・・?
80年ほど昔、有名な隠密組織に名を、「香」という有名な幼くして組織1腕のたつ隠密者が居た。
ある日、数人で任務先へ赴いたところ失敗。そのまま仲間を捨て消息不明になったと言う。
その少女の噂は一気に広まり、尸魂界内を散策したが現在も消息不明だった。
だが、そんな噂も今ではあまり話されなくなった、か。」

そこまで読むと書物を閉じ、ため息をついた。
そんな時、扉を叩くおとがした。
「はいー?」

「俺だ、俺。」

声を聞いた瞬間、パアッと物凄く嬉しくなって慌てて立ちあがり扉を開けて
顔を見た瞬間嬉しくなって、恋次の首に左手を回して抱きついた。

条件反射のように恋次は肩に手を回した。


、お前怪我治ってねぇのに何やってんだ?!あぁ!書類まで持ち込みやがって!」

抱きついた事に怒ってるんじゃなくて執務を始めた事にだ。(抱きついたとき嬉しそうだったし)

「いいじゃない!十一番隊の席官はこれくらいの怪我でへばらないって、ね!」

抱きしめていた腕を少し緩めてほんの少しだけ見上げる。
本当、これくらいたいしたこと無いのに、大げさなんだから。

「怪我が長引いたらどうするつもりだよ。本当。」

恋次は呆れたようにそういいため息をついてあたしを見る。
あたしは、大丈夫よ、って言う意味も込めてニコっと笑った。

腕を掴んで、中に入って!と促しドアを閉めた。

「おまえ怪我の跡残ったらどうすんだよ。」

部屋に入ると、心配そうに恋次がつぶやいたのを聞き、彼のほうを振り返って見つめる。

「傷跡残っても恋次が嫁にもらってくれるんでしょ?」
さっきの笑顔を消してあたしは恋次に聞いた。
少しだけ顔を赤くして優しく笑みをうかべて

「傷跡が残らなくてもそのつもりだぜ。」と言ってくれたので、嬉しくなって自然とにやける。

「なら良いジャン、傷物のほうが変なの寄ってこなくて」

「でもそれとこれとは別だ!無理は禁物!いいか、これは俺がやるからな!」

そう言い、あたしの変わりに筆を持ち始めた。
「ちょっ、悪いよそんなの。それくらいあたしできるから!!」

慌てて止めたものの、恋次はなかなか首を縦に振らない。

「これくらい俺に頼れって。一角さんみたいに書類ためこまねぇからちょっとくらい大丈夫だっての。」
「・・じゃ、手伝ってもらおうかな・・。」

不本意だけどそう言ったあたしに満足したようだ。


「でも、今は恋次とゆっくりしたい、な」
書類の束を整理してる恋次の背中に抱きついて腰に手を回す。

「奇遇だな、俺も実はそう思ってたぜ。」

あたしの腕を一度解いてこっちを向きぎゅっと抱きしめられた。


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