「失礼します・・・。」

早速報告に来たわけだが、朽木隊長はあたし達2人で入ってきたことに眉を寄せた。
何だ急に、とでも言いたそうだ。
「あの、隊長。」
「ちょっとご報告がございまして・・・。」

「なんだ。」

この人の持つ霊圧というかオーラはすごい。
同じ部屋にいるだけで震え上がってしまいそうだ。

朽木隊長に対する免疫が少ないせいか、あたしが固まってると恋次が言ってくれた。

「俺、実はこいつと40年以上前からずっと付き合ってまして・・・その、来月結婚することになったんす。」

わかっていながらも、その言葉は嬉しくて緊張なんてすぐに解けて顔が緩む。
朽木隊長はあたし達がまさか付き合っていただなんて知らないだろうからビックリしたような表情を浮かべたのだが、

「そうか・・・めでたいな。」
そういって優しく微笑んだ。
あの朽木隊長も、こういう風に笑うことが出来るんだ!とても珍しいものが見れた。
・・・それ以上に隊長も表情に表して喜んでくれたというのが、とても嬉しかったのだ。

「はい!ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」

「幸せにな。」
「はい!勿論です!それでは、失礼しました!」
「失礼しました!」

笑顔でおもいきり頭を下げ隊首室からでて、次は十番隊に行かないといけないので隊舎を出た。

「よかったね恋次」
「あぁ、朽木隊長、喜んでくれたぜ。」

恋次にとって朽木隊長は目標なのである。
いつかあの人を超えたい。ずっとそう思って今まで必死になって頑張ってきた。
その、朽木隊長にも祝ってもらえたことが嬉しいのだ。



話してるうちに十番隊まで着いており、隊首室まで行く。

「副隊長もいるけど、まいっか。」

部屋の中の霊圧を探れば二人分合った。
松本副隊長は何かとあたしを可愛がってくれてる姉さんみたいなものだからちょうどいいかもしれない。


コンコン、とノックして「失礼します。」と声をかけて中に入る。


〜っ!」
あたしの姿を見ると、副隊長はあたしに抱きついてきた。

「ちょっと、どこ行ってたの〜!あんたいつもこの時間になったら戻ってきてるじゃない?だから蕎麦饅頭一緒に食べようと思って待ってたのにぃ〜!」

そういってあたしに頬ずりする。とんだ溺愛っぷりに呆れたのか、日番谷隊長をチラみしてみると下を向いていつも以上に眉間にしわを寄せた。


「乱菊さあん!ちょっと離れてください!」
苦笑しつつ乱菊さんから解放してもらった。


「・・・で?はともかく何で阿散井までここに居るんだよ。」

どうせろくでもない理由なんだろうと思ったのか日番谷隊長はため息を吐いて筆を進める。


「日番谷隊長、ちょっと真剣な話なんですけど、乱菊さんにも聞いてもらいたいんです。」

あたしと恋次が珍しく真剣な顔をしたので隊長は「な、なんだよ」と引き気味で筆をおいてこちらを見た。


「実は、あまり他の人には言ってなかったんですけど・・・あたしたち、学生時代からズット付き合っていまして・・・その、えーっと来月結婚することになりました・・・へへっ。」

片手で後頭部に持っていって照れたように話すあたしの言葉を聞き、固まる2人。
無意識に恋次の手を握っていたらしく、彼がきつく握り返してくれていた。


「え、ええ?ちょ、が恋次と?!」
「本気か!?」
「どういうことなのよ!!詳しく聞かせなさい!」

二人して呆気に取られたような顔をしあと思えば乱菊さんにはいつかの桃みたいにあたしの肩をガクガクと揺さぶった。
「ら、ららんぎくささん!星が飛ぶ・・・!」
「わわわ!乱菊さんが!」
あわてて恋次が止めに入り、なんとか落ち着いたが日番谷隊長も乱菊さんもいまだ信じられないという顔をした。

「え、それ、本当の本当に本当なの?」

「はい!」
「嘘言ってどうするんすか。」

二人の笑顔があまりにも幸せそうだったので、隊長副隊長の二人組は信じざるを得なかった。


「あたしてっきり恋次は十三番隊の朽木って子と付き合ってると思ってたんだけどねぇ・・・。」
「それ結構言われるんです。ルキアはただの幼馴染なんでそういった感情は一切持ち合わせてないんすよ。」

首だけあたしのほうを見て、優しく微笑みながら「それに・・・」と続ける。

「それに50年近く付き合ってるんですけど、喧嘩は何度もしました。でも今までずっと絶えずに好きなんすよね。倦怠期も一切なかったですしこいつ以外の女は考えられねぇし全く離れたくねぇし、好きすぎてヤバいんすよ、俺。」
「恋次・・・。」

そういった後、二人のほうに向きなおして
「ま、そんなこんなで結婚することになったんですよ。」
と笑った。

それには、日番谷隊長も眉間のしわを薄くして優しく微笑み、乱菊さんも嬉しそうに笑った。

「よかったじゃないの〜!幸せそうな顔しちゃってえ!このこのっ!」
そういいまたあたしに抱きついてきた。

「乱菊さん、ちょ、苦しい!」
「乱菊さん、ちょっと離れてください!」

でも、自然と笑顔になるのは今がとても幸せだから。
隣に恋次が居て、大好きな上司、部下に囲まれている。

これ以上幸せってあるんだろうか?





日番谷隊長があたしを呼び、あたし達はキャッキャ騒いでいたのをやめて隊長を見る。

「幸せにな。」

隊長は片方の口端を吊り上げ微笑み、あたしが「勿論です!」と頷くと次に阿散井、と呼んだ。


のこと、絶対幸せにしてやれよ。」
「勿論です!」
恋次が即答したところで次は乱菊さんが「のこと泣かしたらただじゃおかないわよ!」と言った。

「も、勿論ですよ!こいつ・・・は絶対、俺が幸せにするんです。」
そういって乱菊さんに抱きつかれてるあたしの手を引き後ろからぎゅっと抱きしめた。

数十年間毎日のように抱きしめられてると、いい加減ぬくもりを体で覚えてしまっている。
いつのまにかそのぬくもりを感じると落ち着くようになっていて知らず知らず求めているもの。

あたしも恋次に依存してる。


「幸せそうで何よりだ。・・・だがな、阿散井。」

隊長は急に雰囲気を変えたため、部屋中の空気自体が甘いものからなんとなく深刻なものに変わってしまった。

「な、なんすか・・・!」


「お前・・・休憩時間とっくに終わってるぞ?」

その一言に恋次は固まった。
時計を見ると休憩終了時刻よりも15分過ぎていた。


「ちょ、やべえ!おい、帰り迎えに行くから待っとけよ!それでは失礼しました!」

顔面蒼白、冷や汗だらだらの彼はそう言って瞬歩で消えていった。
朽木隊長に無言で怒りをぶつけられるのが目に見えて解る。

・・・ご愁傷様。

「では、あたしも仕事戻ります!失礼しました!」

そう言いあたしも部屋を出た。



「ね、隊長、」
「何だよ松本。お前も早く仕事に戻れよ。」
「あの二人、絶対良い夫婦になると思いません?」
「・・・あぁ、そうだな」
「だってたち、あんなに幸せそうだったんですもの。」
「あぁ、そうだな。」
「あ、そうだ!結婚式のドレス買わなくっちゃ!ってことでちょっと行ってきます!」
「まて、ちょ、おい!」
シュン!(瞬歩の音)

「まああつもとおおおお!!!」



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≒≒≒≒言い訳は良いわけ!?≒≒≒≒
桃たちいわく「40年もたってるんだもんね!」
恋次いわく「50年近く付き合ってて・・・」

つまり45年くらいってことです。
管理人的には真央霊術院3回生当たりで!

次回に短い閑話を入れて
その次に本題に入って行きたいと思います。