屋上の扉を開けると
「1時だよ!3C女子全員集合!!」状態だった。


うっわー本当にカとちゃんみたいな奴居るよ!!



ずっこけ三人組を中心に、あたしを取り囲むように輪になる女子たち。
皆であたしを睨み付け、なぜか勝ち誇った顔をしてます。




まさに、逆ハーレム状態☆


素敵!!



「で?、C組がこんな集まって。何か文化祭の練習?あ、あたしを主役にしたいってオファー?」

別に、動揺すらしないので、冗談を言う余裕すらある。
でも、あたしがそういうと皆がくすくすと笑った。


「余裕あるとか、かなりうけるー!」

ねぇ、皆ー!と、ズッコケ三人組リーダーっぽい人・・・確か、道田と言ったっけ?

道田が言うと、皆がいやみったらしく笑った。
何がうけるのか、良くわからない。

これだけでおもしろいなら、お笑い番組とか必要なくね?

「ってか、早くしてくれない?こんなのつまんなーい。」


あたしは制服のポケットに手を突っ込み、壁にもたれた。


「そうやって偉そうにしてられんのも、今のうちだし」

道田のグループの・・・山口?が、そーっと屋上の鍵を閉めた。

「あんたさ、本当なんなの?なにが不良なのよ。」
「そうよそうよ!桜中学の頭は、ミッチーなんだから!」

ミッチー?道他のあだ名?
うっわー!芸能人の及川氏かとおもったー!

「どうせ、弱いくせに!」
「男ばっかり連れてサー。男好きもいいとこじゃん!」
「その顔でぶりっ子ばっかしてんじゃないの?本当きもーい!」
「不良気取りとか、マジやめてくんない?うーざーい!」

口々にあたしはそう言われる。
屋上は、もはやあたしの悪口で100ヘルツ!!!

どうして、あたしはこんな奴らに言われないといけないのだろうか。
あたしからすれば、あんたらのほうが不良気取りだ。



「あっはは!!あほらしい。」

あたしは笑った。
だけど、奴らの悪口はとまらない!

「てめぇ、むかつくんだよ。いつもいつも!3C全員お前のこと嫌いなんだよ!」
「本当、笑ってられるのも今のうちだしねー!病院行きなっても知らないしー」


病院行き?あたしは、少し眉をひそめた。
あぁ、なるほど。

3Cには空手部 元キャプテン、元副キャプテンがいたっけ。
独特の雰囲気を出しながらも二人並んで立っていた。

厳ついオーラであたしをにらむ。そういえば、こいつら結構空手強かったんだっけ。

「ちょっと、あたしたちの力、見せてあげようと思ってね、あんたを呼んだの。」



そういわれてあたしの心臓が早くなった。
喧嘩?もしかして殴り合い?

―――超楽しそう!!


喧嘩好きのあたしは、ものすごく性質が悪いことを自覚してる。
喧嘩において、人を殴ることが楽しくて楽しくて、快感で仕方が無い。
血を見るのが・・・殴るときの拳のいたみ、感触・・・すべてが楽しくて楽しくて仕方が無い!!

ストレス発散にもなるし、楽しくて欲求も満たされる。
だから、いっつも喧嘩モードに入ったときは気が狂ったように相手を殴り続ける。

本当、喧嘩モードに入ったときのあたしは悪魔のよう。気絶しようがなんだろうが、気の済むまで。
途中で、いつも隼人たちに止められて正気に戻るけど。
兄貴にだって、慎ちゃんにだって「狂女だ!」といわれる。

だって、楽しくて楽しくて、仕方が無いんだから!
いわゆる、究極のドドドドドドドドドドドSなのだ。

ーーーえ、違う?

今では荒高の男子大群を思い切りやることくらいで
やっと欲求満たされるくらいなのにさー。

ましてやこんな奴らの相手であたしの欲求は満たされるわけ無いのよ!!


ま、最近喧嘩してないし欲求不満だったし、別にいいや。

(本当さ、前々から思ってたわけ。喧嘩なんて、話し合いで解決しないで、殴り合いで解決しようよ!)

あたしは、もしかしたらなるかもしれない殴り合いにワクワクしてた。


本当おなかにすいてつらいときは、何だって食べられる。
だから、いま喧嘩的欲求ではお腹がすきすぎてるから。
こいつらでも、少しは満たされるだろう。

でもなー、学校だし、ここ。


場所などを弁える能力は、あたしにだってある。
こんなとこでいつものようにしたら教育委員会、PTA大問題だろう。


(仕方ないなぁーーー)


手加減しよう!



「ってことは、あたしをボッコボコにするってこと?」

あたしが、そういうと、「物分り良いねー、馬鹿なくせに」と返ってきた。
ってことは、やっぱり、あたしの望むとおりになる?

「先生にチクッたら、もっと、つぶすから、」

C組の名前は知らないけど顔を見たことのある猫目の女がそう言ってあたしのほうに近づいてきた。
たしか、こいつは道田と中が良いと思う。自称ヤンキーの道田と仲良いから、自分もヤンキーと思い込んでる、かわいそうな子。

「あたしは、絶対に言わないよ。絶対に。これは約束する。
だからさ、そっちも、先生に絶対に言わないでね、」あたしがいうと、首を傾げやがった。

手加減といっても、格が違うし、どうしようもない。むしろ、手加減ができないかもしれない。
向こうの限界を探って もうちょっといける?もうちょっといける?と強めてしまうかもしれないし。

だから、もし手加減したとして・・・それでも向こうにとってはボッコボコかもしれない。
無事にできる自信が無い。

「何わけのわかんねぇこといってんだよ!」
名前の知らない猫目の女子はあたしのまん前まで来て胸倉をつかんだ。

「まずは、弱小の3Bと、3Cの女の格の違いについて教えてあげるし。
あんたなんか、ミッチーじゃなくても十分。」

どうやら、ここからが楽しくなりそう!

だけど、さっきおなかすいたときは何でも食べれるとはいったけど。
ぜんぜん血が騒がない。楽しいと思えない。

つまんないのー。C組の下っ端なんか。
道田でもつまんないとおもうのにー。

いつもの遊び相手が、焼肉定食だとしたら
このこたちは全部集まって米一粒って感じ。ぜんぜん足らない。


だって、知ってるもん。
道田でさえ、しょうむ無い喧嘩ばっかりして気取ってるってこと。
中学生の女子ばっかり相手にしてるから、強くない。
けど、それは自分でいい気になって自分は強いって思い込んでて。

弱いものいじめでいい気になってるだけの、ただの・・・


哀れ。


そして、その女子はおもいきり腕を振り上げてあたしをグーで殴ろうとした。
奴の拳を見て、少しながら分析をした。

つまんない、つまんない、つまんない。

あたしにしては、荒高の渋谷のスローモーションでも見ているようだ。
遅い、遅すぎる。


こんな、よわっちーのに手出したら、余計おなかがすくじゃん!
もう、少し脅す程度にしようかしら??Oh!Yes!


顔に当たる直前で手で振り払い奴のパンチは違うほうへ流れた。


「つまんない。」

あたしはそう言って、そいつの腕を取りひねりあげて背中を軽く蹴飛ばした。
哀れむ目でそいつの崩れていく姿を見た。

「あーあ、つまんなぁい。喧嘩ってさ、お祭りじゃないの?」

あたしは、道田に視線を向け、にやっと笑って言う。
もちろんわざとこういう笑顔を作ったんだけど。

「血祭り、って言う。」

あたしの笑顔を見て、全員がひるんだ気がした。

「ねぇ、あたしはあんたたちみたいに強がって、とか、格好付けたいから喧嘩するんじゃないの。
あたしはね、

ただ、人を殴るのが快感で楽しいから、喧嘩するのよ!だからさ、
もっと、血を見ようよ!ねーえ!」

わざと言葉を選び、そう言って、ちょうどあたしに襲い掛かってきていた3Cの他のメンバーに
あたしが与えるのは綺麗なゆるい右ストレート。

うーん、手加減したのになぁ。鼻血吹いちゃった。
これじゃあ脅しにならないって?

しーらない。
あたしなりの手加減、優しさ。


キーーンコーーン・・・




ピリピリした雰囲気の中、チャイムが鳴ってしまう。

「じゃ!またよろしく!」

やっと終わった、とホッとしてあたしが後ろを向いて、屋上を出ようとしたら・・・。

「っ・・!」


後ろから誰かに思い切り蹴飛ばされて、一瞬だけ呼吸が止まった気がした。
これは、とび蹴りというものか・・・!



ふらついて、壁に突撃し、顔が壁ですりむける。
あわてて振り向いたら空手部元キャプテン。

「てめぇ!あたしに勝てるとおもってんのかぁ?」

チャイムが鳴り終わったのにもかかわらず喧嘩を売られた。
こいつら、授業はいいのか??

いきなりの不意打ちで、あたしの中の何かが切れた気がした。


「知ってた?」

あたしは、自然とさっきのような笑顔になる。
なんだか腹が立って、こいつには脅し程度じゃすまなさそう!


「君のような教科書通りの空手がさ、先生に教えてもらった通りの正統派格闘技なんかじゃあ」

そいつに向かって一歩近づいた。
すると、向こうは次にあたしの胸倉をつかもうとする。
何か技をかけようとでもするのかな?それは柔道か?



「あたしみたいなオリジナルで卑怯な自由主義には、かなわないって。」

手を避けてつかんで小さくひねった後
空手部元キャプテンには、少し力を出して綺麗な右ストレートをかましておいた。
こんなゆるいパンチであっけなく半落ちしている奴を見て苛立ちがとまんない。

こんなんで半分気を失いかけるなんて!!

本当、つまんない。

「あーあ、本気出したかったな。」

さっさと帰ろうと思ってドアを開けようとしたけど、そういえばさっき閉められたんだった!
最後に、道田のほうをもう一回振り向く。

「・・・顔面歪みたいなら、いつでも呼べば?
あんたらの彼氏高校生だって?別につれてきても良いし。病院送りにしてあげるから。
ってか、君たちのようなヘボい愚民はぬいぐるみでも相手しとけば?
あんたらみたいなよわっちいのにやられる他校生がかわいそう。

で、いってたとおり、先生にちくったら、逆に次こそ血祭り。
じゃ!」


屋上のドアを蹴り破るように足で開けチャイムが鳴って5分経った頃。
道田率いるC組の悔しそうな顔を脳裏に焼きつけようやく屋上を出た。



ドアを蹴り破るので、少しすっきり!
うーん、ドアが今日一番の難敵かもね!






□□□


少し乱暴に教室の扉を開くとみんなの視線が集中した。社会の授業だったらしく、C組担任北先生が教壇に立って、ものすごい目であたしを見ていた。(な、なに!)
そういえば、この先生はあいつ等の担任。なんだか敵対心沸いてきて授業ぶち壊してやりたくなった。

「く、熊井ぃ!」

「遅れてすいませーん。っていうか、あたし悪くないですよー。」

そう言って席に着く。顔は笑って見せるけどあからさまに目は笑ってなく、心底穏やかじゃなさそうなあたしの表情に教室が凍りついた気がした。あたしをできるだけ怒らせないように、と誰も目をあわさない。そんな怖がらなくても。

「お、おい、なにがあった?」

北先生は、一度咳払いをしてさぁ続きを進めるぞ、とか言って授業に戻った。ソレを見届けた後、伸太郎が後ろを向いて心なしか顔を引きつらせながら小さくあたしに聞く。伸太郎をはじめあたしと仲いい人は皆、あたしの恐ろしさを知っているからね。(え?3B皆知ってるって?)

「屋上呼ばれたから、3Cの女子と逆ハーレムしてた。本当の本当につまんなかった!」
「なぁ、顔・・・」

少しひりひりするほほに視線を感じる。あぁ、これか。思い出すだけでなんか屈辱的!まぁ、ちょっとしたかすり傷なんだけどそれでも顔に傷をつけたあいつらは、絶対に死刑。いつか機会があればいつかの荒高の渋谷みたいにしてやる。

「あぁ、後ろから空手部元キャプテンに不意打ちされて、屋上の壁と思い切りちゅうした。」

あたしがそういうと、伸太郎の顔が余計に顔が崩れてしまった。(あ、その顔も面白い!)

、まさか負けたわけじゃねぇよな?」

後ろから少し心配そうに話しかけてきたのはソンと直明。(+高木も少し)
負ける?あたしがぜったいありえない!

「あっはは!まさか!空手部キャプテン半落ちさせてきちゃった!そんで屋上の扉、蹴り破ってきちゃった!」

あたしが笑いながら言うと周りがドン引いた気がした。いや、何?その反応!!ちょっと悲しいよー。っていうか、あれはどっちかっちゅうと正当防衛だよね!うん。あたしは悪くない!あくまでもプラス思考!ポジティブ万歳!!

「ま、気にしない!」

あたしはそう言って皆に前を向かせた。来た先生の顔が、少しだけ引きつってたのはきっと見間違えじゃないはず!!
そういえば、なかなかC組女子が帰ってこない。時計にちらりと目をやってみるとあれから20分が経ってる気がする。おかしいなぁ。


(気にすることないか)

そう自己完結することにしてノートも取らずにシャーペンを指で回していた。









ーー!」
「うっわ!何よ!」

授業が終わった瞬間真佐人が座ってるあたしに飛びついてきた。
しかもいきなりだったし、あたしの体勢が少し後ろ向き賭けだったために
椅子から落ちそうになってしまった。
ただでさえ不機嫌だったので、思わず「このくそチビ!!」って怒りそうになったけど
その前に「、痛くない?大丈夫?」ってうるうるした
可愛い目であたしを心配してくれるもんだから
ついあたしは不機嫌さぶっ飛んで幸せ気分になって真佐人に抱きついた。

「何よ、この可愛い小動物は!!」

ぎゅう、と抱きしめると真佐人は少しだけ「苦しい!」と言ってたけど、そんなの気にしてられるか!

「ちょ、真佐人!から離れろよ!」
周りの男子が必死で、真佐人は強制的にあたしと離されることになった。

「で、何で昼休み呼び出されたんだよ。」

直明が頬杖付きながら後ろから聞いてきた。
なんだか周りの皆も聞きたそうだ。
だって関係ない奴等は関係ない奴らで勝手に話してるけどさりげなくこっちに聞き耳たててんのバレてんぞー!まぁいいけど。

「あれよ、女の醜い嫉妬ってや『ピンポンパンポーン

3年B組〜熊井さん。職員室まですぐに来なさい。』

あたしが話してるところで放送が入った。しかも何?あたしですか?何かしたっけ?チャリ通したの、バレタ!?それとも、仲の悪い兄貴の因縁かしら?!
まぁ、とりあえず行ってみようかな。もしかするとあたしのスター性を理解した芸能プロダクションからかもしれないし!


「じゃ、ちょっくら行ってくるわ!」




あたしは変な期待を胸に教室を飛び出した。