着いた場所は屋上だった。




しゅうは、携帯の画面を二人に見せていた。
どうやら・・。いじめてるときの現場をカメラで撮ったのだろうか。

それでもしらばっくれてる1年生。なかなか根性あるな、こいつ。



そこにあたしが入っていった。

しゅうも、二人も少し驚いてるようだった。

「やっぱりあんたたちか・・あたしの大事な友達の可愛い弟、よくもいじめてくれたじゃん?
補聴器潰すとか、人間として最悪とおもわない?3年B組敵に回す?それとも・・謝る?」

二人を少し鼻で笑い見下げた。
それでも謝ろうとしない。しゅうは横で見てるだけだ。

「敵に回すなら・・二度と笑えないくらい顔歪ませてあげれるけどー・・」

あたしがすこしだるそうに言うが、それでも反発してきた。
なんなんだこの1年生は??

「あ、女と思ってなめてるでしょう?
これでも兄貴といっしょに行動したりしてたから喧嘩は強いんだから。
熊井輝夫って言う、ね。」

熊井と書かれた名札を引っ張り、強調して見せ付けた。
それを見た二人はギョッとした顔をした。


桜中学と黒銀は、ここから結構近い。白金は既に閉校となってしまってるけど
兄貴の熊井輝夫を含め慎達が率いる白金3Dの名は伝説としていまだに健在だ。
現役高校生の隼人達もまた不良で有名で、怖がられている。

でも、ここの中学の奴ら、少なくとも3Bは名前を怖がってるだけで実物の顔を見たことは無いらしい。
だからあたしの家にラーメン食べにきたクラスメイトも気づいてないし。

あたしが熊井輝夫の妹ってことも知らない。苗字が熊井って言うことも気にもしてないようだ。
いや、別に隠してるわけではなくて、言う必要が無いから言ってないだけで。

まさかあの熊井輝夫の妹だなんて誰もが思わないだろう。多分言ったら驚かれる。
それほど兄は有名なのだ。(兄貴は別にそんなに喧嘩は強くないんだけど)

たまに慎達や隼人達が会話に出てくるんだけど
伝説の人物のように語られる隼人や兄貴がなんか変な感じで可笑しくて。
隼人達を怖いといってる皆を観てるのが楽しくて!
全然怖くないのになーと思ってしまう。(むしろ馬鹿!)


さっきの二人はビビりきってしまい、逃げ出してしまった。
まぁ、これで悪いことはしなくなるだろう。

「そんなに兄貴怖いかなぁ―。」
1年の逃げていく背を見つめて言った。

後ろを振り返ると太陽がまぶしいのか目を細めながらあたしを見ているしゅうがいた。
「兄貴のことは黙っててね」

口に人差し指を当ててそう言った。
「熊井の妹」という理由だけで喧嘩を売られたこともあった。しかも高校生に。
それでもぶちのめしてやったが。
熊井の妹ってだけで特別な目で見られるのはどうも納得がいかないのだ。
あたしはあたし。どう考えてもあたしでしかない。

「解ってる。」
しゅうはそれだけ言って屋上から出ていった。


□□□



教室に戻ると早速何をしてたのか聞かれて。

「下級生脅してた」

と笑った。

少しだけ周りが凍りついたけど前では学級委員二人が話しを進めてた。

なんかよくわからないけど・・スペシャルオリンピックスに
うちのクラスも何らかのかたちで参加できないだろうかと提案してた。

そういえばヤヨがどうたらこうたら。


あたしこう見えて、冷めた人間だから仲良いこの話しか聞かないのよ。
まぁ、なるようにしてくれ。着いていくから、って感じで。

金八先生が、2006年の2月から長野で開催されるとか色々話してた。
それに、数人関心を示していたが、あたしは隠れて携帯を弄って
放課後隼人達と遊ぶ約束を取り付けた。会うのは2週間ぶり、か。

まぁ、あたしはそれほど興味も持たなかった、けど。
よくわからないもん。
普通のオリンピックでも良くわからないのに。
でも、体育の日が東京オリンピックの日なのかということや
なぜ10月10日に開かれたかと言うと一番晴れ率が高いからと言うことは知っている。
いや、本当かは知らないけど。

取りあえず今日も授業が終わり、あくびした。
もちろん、昼ご飯はちゃんと皆に分けてもらって、何とか生還!

帰り際もちっちゃいチョンマゲに付きまとわれたが何とか振り切って
通学路とは正反対の道を通り学校の近くの商店街の前にある公園に行った。

あたしがついたころには既に人が居た。制服をだらしなく着た5人組。
一人はアヒルの乗り物でギコギコしてて、もう一人はその横の乗り物にもたれかかってる。
そしてあと3人はチビっこと一緒に遊んでる。

そっちのほうに歩みを進めていくとチビっこにほとんど溶けこんでたタケがこちらに気づいた。

「あ、来た!」
そう大きい声で言った。
最初はかわいらしいからタケちゃんって呼んでたけど、
やっぱり年上かなんかでのポリシーかなんかでチャン付けはなんか嫌らしく
「タケにして」といわれてタケって呼んでる。

残りの4人が振り返ってあたしを見ると、笑顔で手を振ってくれた。
隼人は、乗り物のって両手を離して思いきり手を振ってたので、落ちそうになってた。

「お久――」

2週間ぶりにみんなと会って嬉しくなった。

小走りで皆の元に行った。
スピードの制御が利かなくて思わず竜に突進してしまった。

「あ、ごめん」

苦笑すると、竜は普通に笑ってた。
「ドジ」

と一言だけ残して。
あたしは苦笑しながら顔を引きつらせた。

「とりあえず、どっかいかねぇ?」

日向がそう言ったので、そこらへんをぶらぶらすることに。
・・といっても行く先は、ビリヤードと決まっているんだけど。

この6人が集まったら、ゲーセンかカラオケしかない。
カラオケはこの前に行ったから今日はゲーセン、ビリヤードだ。




□□□



コーン


「よっしゃー」

あたしがガッツポーズをした。
そして横でガッカリしてる隼人。

何があったのかと言うと・・・。
ゲーセンまで歩いてる途中に隼人があたしに勝負しようと言ってきたので、あたしは了承した。
負けたほうが100円!という単純な賭けだ。
でも、その勝負に勝ったので、100円もらった。
100円ぐらいどうって事無いんだけど隼人はすごく落ち込んで・・。



もちろん、許すはず無くあたしは100円もらっておいた。

(これで明日うまい棒9本買おう。)

ひそかににやけた。
ま、どうもテリヤキバーガー味とココア味が苦手なんだけど。




とりあえず、ゲーセンから出た。

「あー、なんか腹減った!」
「俺も―!」

タケと日向が腹をさすりながらそう言ってた。

「じゃあ、家来る??」
家来る?と言うのは勿論ラーメン屋のことで。
あたしの手作り料理食わせるくらいだったら兄貴に任せれば良い、という結果。

「そうしよっか。」
「そだな!熊井サンとしゃべりてぇし!」

と、即決定。
あー、単純。



皆で騒ぎながら熊井家へ。
そんなときだった。

「何してんだ?あいつら。」

つっちーが何かを発見した。
そこは、学校の近くの商店街。今日あたしが公園に行くときに通ったとこだ。
どっかの店のシャッターの前にぐったりと座り込んでる人が二人居て。

「ここらへんってホームレスって居ないはずなんだけどなぁ」

あたしがそう言うと皆首を傾げた。でも、どう見てもホームレスには見えないんだけど。
とりあえず、寝ているようにも見えた。

無意識に皆でその二人に近づいていった。好奇心ていうやつか。
別にあたしらに怖いものなんて無いしね。(虫は怖いけど)
近くまで行くと、その二人はぐったりとしていて、手には缶ジュースを持っているようだった、が。

「何か、臭うね・・」

タケが、皆が顔を歪めた。
そう言えば、マジックペンのような臭いがする、

「・・これってシンナーじゃん」

竜がそう言うと、まじかよ!と騒いだ。
こんなところでシンナーって・・・ばれたらヤバイぞー。

ヨダレたれてるし。

「キモイ。」

あたしがそう言うと隼人は 
「こいつらまだ中学生じゃねェノ?」
と言った。

中学生??ここらへんは全員桜中学だ。
もちろん、あたしは知るはずも無いけどドキっとした。

「っぽいな、まだ幼ぇし。この顔しらねぇ?」

暗くて良く見えないが、携帯のライトで照らしてみると・・・。
違う意味で顔が引きつった。

「ちょっ!こいつら・・!!同じクラスの奴!!」

あたしが慌ててそう言うト まじ!?と皆驚いてた。
良く見ると、孝太郎と和晃だ。
え、こいつら・・他だのゲームオタクだと思ったら・・正気なのか??

警察に言うわけにもいかないし放っておくわけにもいかない。
とりあえず、途方にくれた。


「なにやってんだい!」

戸惑っていると後ろから声がかかった。それも、聞き覚えの在る声が聞こえた。
スーパーさくらの明子さんだ。
(ヤバイなぁ・・)

「って・・か!何やってんだ?!そんな厳つい兄ちゃん達と・・って!
何してんだい!集団暴行・・・?!
まさかそんなことをするなんて・・!見そこなったぞ!」

やっぱり、そう言う風に見えるのか。隼人達が厳つい兄ちゃんって言うのもまた面白いけど。
まさか集団暴行してると思われるとは。

「違うってば!あたしが、クラスメートいきなり殴るわけ無いでしょ!?
よくみてよ!孝太郎と和晃!!
この友達と歩いてたら、人いてさ、どうしたんだろうと思ったら・・。
シンナー吸ってラリってる和晃と孝太郎が居たの!それよりも、先生に連絡してよ!」

あたしがそう言うと、あわてて明子さんは電話をしに行った。
本当、賑やかなおばチャンだなぁ・・。

明子さんを見た後、もう一度この問題児二人を見下ろしてため息ついた。

「・・何でまたこいつらが・・。」

あたしはその場であきれた。
隼人達は別に気にしてないようだった。何時も通りツッチー達はじゃれ合っているし。

「大丈夫か?」

本当にこっちの事を考えてくれてるのは竜だけだ。
「うん、あたしがラリってるわけじゃないしこいつら別に仲良くないし。」

そうだ、別に仲良くも無いから大丈夫だ。
ただ、同じクラス。


しばらくすると、先生やみまわりたいの人が来て。
坂本先生はあたしと一緒に居た隼人達を見て一瞬顔を歪めた。
やっぱり、自分の生徒がヤンキーの高校生と仲良くしてることにびっくりしているのか。


「あー、!もう帰りなさい」

何もしないで突っ立ってるとと言われてしまったので、その場から立ち去ることに。
なんか、「このことは内緒に!」だそうで。別に言いふらす気も無いし、どうでも良かった。

「じゃ、さよならー」


そう言って隼人達と気を取り直して熊井ラーメンへ向かった。


ヤンクミの話とか、学校の話とか、いろんな思い出とか。
兄貴交えていろいろ話して、面白かった。


だけどやっぱり、クラスメイトの事があって心から楽しめなかった。