朝、いつも通り教室について、いろいろな子とおはようの挨拶を交わした後。
自分の席に着いて、誰のところへも行かずに机に突っ伏した。
朝から元気が出ないから。
(やっぱり朝ご飯食べたら良かった!!!)
ふと顔だけ上げてみると、楽しそうに島健と話ながらパンをかじる伸太郎の姿。
しかも、あたしの好きなクリームパン。
「伸太郎、伸太郎さ―ん」
突っ伏しながら伸太郎の椅子を叩く。
「あ?なんだよ。」
パンを頬張ってうまくしゃべれてないが、そんなことどうだって良い。
「よければ、そのパンあたしに恵んで・・くれると嬉しかったりするんだけど。」
と、伸太郎を見つめてみると・・。
「やぁだよ。これは俺の大事な朝飯!」
・・・やっぱりか・・。
こうなったら最終手段。
「あたしの家のラーメン食べたくない?」
そう言うと伸太郎の動きが止まって。
食いてぇ!と目を輝かせた。
「パン、チョーダイ!!」
と強請ると次はくれた。
「で!いつ食わせてくれんだよ!?」
とまだ目を輝かせてる伸太郎。
あたしの言葉の裏を知らないからか、目はまだ輝いてるように思える。
もらったパンを全部飲み込んでから普通の表情をして。
「へ?何が?」
と言った。いや、少しあたしはにやけてたかもしれない。
「え?今度ただで食わせてくれんだろ?おまえん家のラーメン!」
「いいや?あ、食べに来てくれるんなら大歓迎だよ、兄貴も喜ぶと思うし!」
そう言って持っていた自分のカフェオレを飲みながらそう言った。
伸太郎は一気に顔を引きつらせた。
「馬鹿だねェ。奢るって一言もいってないよ?」
ニヤっと笑うと、あっちゃー!と叫んだ。
この野郎!とあたしのほっぺたを引っ張ってくる伸太郎!
頼む、やめてくれ。悪い顔がこれ以上崩れるのはごめんだ。
しかも、隣の席の舞子なんか 似合ってる!ってくすくす笑ってる。
「はーい、皆さんおはようございま−す。」
チャイムが鳴って金八先生が入ってきた。
少し癒される気がするのはあたしだけだろうか。
なんだか、ドラえもんを見てる気になって。いや、そんなあからさまに可愛いというわけではない。
っていうか、声が変わったあのドラえもんはどうなの?
前の大山氏の声で育ってきたあたしにはものすごくショッキングな出来事だった、けど。
個人的には、ドラえもんはしっかりしたキャラで居てほしかった!!戻ってこーい!元祖ドラちゃーん!
いや、つい語ってしまった!!あたしは失礼という言葉をあまり知らない!
ボーっとして金八先生を見てると、何やら手に小さな機械のようなものを持ってた。
これが何かわかりますカー?と言われても、全く・・・。
(何?あれ。)
でも、誰かが 補聴器?といったとき。
もしかして、ソンの弟・・・。補聴器つけてた、ヨネ・・
まって!!
ソン=弟思い=弟がいじめられた=ソンがキレるかもしれない。
=ヤバイ
そこらの若手みたいに
「キレてる?」
「キレてないですよ」
って丸くおさまりそうではない。
恐る恐る後ろを見ると・・・。
ソンはものすごい血相で立ちあがって教室を出た。
(あ−−−−!!助けて!長州●力!!)
でも、気づいたときにはあたしも立ちあがっててソンを止めるために出ていった。
「!待ちなさい!」
そんなあたしを金八先生は止めたけど、聞こえないフリ!
あたしに続いて伸太郎達も飛び出してきたみたいで。
□□□
あたしが着いたときには、下級生の生徒約一名。
すでに可哀相なことになってた。
「ソン!!ちょっと!!」
慌てて止めに入るけど、我を失ってルソンには声も届かない。
本当なら気絶して止めさせることもできるが・・(あたしの高校生&社会人のお友達伝授)
ここは学校。無理ですかー。
真佐人達も駆けつけてきて止めようとしたけどその場で立ち尽くしてた。
「ソン!落ち着いて!!」
あたしがそう言って手をつかんだけど・・。
思いきり振りほどかれて後ろにある机の塊のところに見事背中からダイブした。
少し痛くて声も出なかった。
「!大丈夫?!」
真佐人が慌ててあたしのところへやってきた。
その顔はものすごく驚いていて、少し面白かった。
「だ、いじょうぶ。」
その後、クラス全体を見渡してみる。
ふと目が合った男子生徒二人。
・・・なんかにやけてるように見えたのは勘違いだろうか。
「・・・・。」
「?」
再度声をかけられて我に返って頷く。
あの二人。何処かで見た気がする。前も誰かをいじめてたような・・・
あたしが考えてる間に事は終わったらしく、立ちあがろうと思って上を向くとソンと目が合った。
「あ、!ごめん!!」
さっきの真佐人と同じように慌ててこっちに駆け寄ってきて、しゃがみこんで肩を掴んだ。
「あ?あぁ、大丈夫大丈夫。」
日ごろから兄貴とか隼人とか慎とか。
あの喧嘩馬鹿達とつるんでるせいか、喧嘩に巻き込まれることも多々あって。
別にこれくらいは本当にたいした事無いと思った。
みんな教室に戻りなさい!という先生の呼びかけで、戻ろうと思ったとき。
いつのまにかいた、丸山しゅうがさっきあたしが目をつけてた二人組に話しかけてた。
そのまま二人をつれて出ていったのを見て。あたしは教室に行く進路を変えて後をついていった。
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