学校はいろいろなタイプの人が居る。 ギャルやギャル男のような人だったりおとなしい子だったり真面目だったり。 あたしはどちらでもなく、普通の中間地点。 大人しく座っているようなタイプでもなければぎゃーぎゃーわめくタイプでもない。 アクセサリーは真田がうるさいから目立つとこには一切しないけど、丸井に貰ったペアリングをネックレスに通して持っているくらい。 おしゃれに興味がないといえば嘘になるが、そんなリボンをつけたりジャラジャラするのは好きじゃない。 あー!仁王君だかっこいい!とか、真田君怖い!とか顔を見てキャーキャー言う女子にもなりたくないし、聞こえてくるだけでイラっとくる。 -HANABI- 「あそうだちゃん、聞いてくれよぃ、今日やばいんだって。」 「え、何?どうしたの?」 少し元気のない彼になんだか心配になる。 いっつもお菓子に囲まれて元気の塊!みたいなのに。 「今日両親も弟達もさ、夜親戚ん家行くらしくってさ…今日泊めてくんね?」 「は?なんで泊めないといけないの?!」 いみわかんない!というと、お願い!とポーズをされた。 「オレ、お菓子作れるけど飯つくれねえんだ!お願い!なんていうか、家に一人も怖いし!ちゃんちょうど一人暮らしだろぃ?一緒に居たいって言うか、なんていうか…。」 最後のほう自分で言って照れはじめてあたしも照れが伝染した。 なら最初から言うなとも思ったが純粋に嬉しい。 「しゃーなしで泊めてあげるよ。」 もう即答でそういうと、丸井はよっしゃ!とガッツポーズで喜んだので思わずこちらまで笑ってしまう。 「でも何もしないでね。」 にっこり微笑んで言えば顔が一気に絶望!見たいな顔に変わってしまう。 え、何するつもりだったの。ってか表情コロコロ変わるなあ…。 「ええええ!?じゃあチューも?!」 「ええ、そうよ。それがムリならジャッカルか赤也のとこに泊まりに行ってねー。」 携帯をイジりながら目もあわさずに言ってみると、なんだよそれ!と言いたげな表情を浮かべている。 「…何もしないから泊めてください。」 「…よろしい。」 テニスコートに付いてあたしは荷物を置くためにマネージャー室に入ると既に親友の直実が居た。 ちなみに着替える時間はもったいないのでジャージ登校をしている。 「おはよー。」 「おはよ!朝から丸井君と仲良しで羨ましいなあ!」 直実はあたしの幼馴染であり一番の理解者である。精市と三人で昔は遊んだりもした。 まああたしの全てを話せるかといえば嘘になるけれど、それでも凄く気があうし心許せるし、大好きな親友兼マネージャー仲間。 立海テニス部にはあたしを含め4人のマネージャーが居る。 「仲良しね…まあ、あたしと精市にはまけるけどね。」 これは少し化粧が濃い目のギャルちっくな芳乃。 芳之は精市と付き合っている。 少しつんけんしててあまり気は合わないし衝突もするほうだけど案外性格は女の子らしい部分もあって素直で根本的に嫌いじゃない。 精市もそういうところが気に入ったんだろう。 「いいなー!麻貴もはやく彼氏ほしいよー!」 こちらはこの中で一番かわいらしい麻貴という女の子。背も小さく、ふわんふわんした女の子で誰からも愛されるような感じで、なおかつ可愛いキャラだけどぶりっ子ってわけでもなく中身は案外さっぱりとした子だ。 4人で1年のときからテニス部を支えてきたので、普段そこまで仲良くなかろうが仲間意識だけはある。 しかも4人ともキャラが全然かぶっていないからおもしろいのだ。 全員着替え終わって、4人で手を重ねる。 「さあ、今日も頑張ろー!」 「「「おー!」」」 これがマネージャーの朝の始まりなのだ。 ◇◇◇ あっという間に午前の授業は終わった。 休み時間は同じクラスの直実と過ごすことが多いが、丸井や仁王が席に遊びにきて4人で話したりして過ごす。 同じテニス部、ということからか普段警戒気味の仁王だってあたしや直実には警戒心もないし、丸井も直実と案外仲良かったりする。 昼ごはんはテニス部は固まって部室でお弁当を食べているのだけどあたしは直実と弁当を持って屋上へ向かう。 皆で楽しく食べるのも悪くはないけど、やっぱりこういう屋上のほうが開放的になれてあたしは好きだ。 皆で屋上で食べればいい話なのだけど、テニス部がもし屋上で集ったら絶対ソレ目当ての人が来るからあたし達二人だけ。 おかげさまで他には人が居ないので好きにし放題。大の字になっても何も言われない最高の場所! いつも通り直実と楽しく話していると、いきなりガチャリと屋上の扉が開いたと思ったら丸井だった。 「ちゃーん、たまご焼きある?」 駆け寄ってきてあたしの弁当箱を覗いて、すかさず手でつまもうとしたので弁当箱を引っ込めた。 ちょっと、いきなりたまご焼きある?って、何?! 「え、なによ、丸井お弁当もってきてるでしょ。」 「いや…皆でたまご焼きの話しになってさ、急にすっげぇ食べたくなったんだよぃ。でもオレの弁当に入ってなくて…。」 へへへと頭をかいて笑う丸井に、なんだそれ、という。 相変わらず食いしん坊というかなんと言うか! どーせ貰うまで帰る気は無さそうだし、たまご焼きを箸で掴んで丸井の口元に持っていくと嬉しそうに食べた。 「やっぱちゃんのたまご焼きうめえー!天才的ぃ!」 さんきゅー!と言って屋上を出て行った。 褒めてもらえたのは嬉しいけど…本当にたまご焼き食べにきただけかよ。 「いいなー、仲良しで。」 「そーお?」 「うん、すっごい幸せそう!」 照れくさくて笑うしかできなかった。 |