たとえ、明日の命が保障されないような人生を歩んできたけど別に後悔なんてしてなかった・
自分の将来だって親に決められていたけど別によかった。

普通と見せかけた人生に不満を持っているわけでもなかった。

父さんも母さんもあたしのことを思ってくれて、仲間思いの最高の両親だと思えるから逃げ出したいなんて一つも思ったことがなかった。

だから、初めて恋愛感情を知ったときに、あたしは葛藤の中で生まれて初めてあたしがあたしであることを後悔したんだ。


-HANABI-



朝起きて、用意をしていつもどおり待ち合わせの場所に向かう。
付き合い始めの頃に一緒に学校に行こうと一方的に言われてしまったからである。

もしあたしが行かないと馬鹿だから一生待ってそうな気もするので毎日行ってる。


待ち合わせ場所はあたしと彼の合流地点である公園の時計台の前。
そこに付いたものの奴はまだ来ない。見上げれば朝6時40分と指していた。


途中であたしの前を幼馴染である幸村精市が通っていった。
「おはよう、。まだこないのかい?」
うん、と頷けば「そう、遅刻しないようにね。」と言いさっさと朝練へ向かっていった。

昨日少し徹夜したので朝は眠たく、あくびをかみ殺すことも不可能。
来たらちょっと無視しようかな、謝っても許してやらない!昼休み何か奢らせようかしら。

色々考えながら何回目のあくびだろうか、そんなころにやっと例の待ち人が来た。

あたしを見つけると嬉しそうに走ってくる。
ていうか遅いんだから走ってこいよとか思ったのはナイショ。


「おっはよー!悪ぃ、弟がグズってさ。」
顔の前で両手を合わせてかわいい困り顔で言う。やっぱりこの人には適わない、今までの怒ってやろうとかそういう気持ち全部吹っ飛んでった。

「丸井、早く行こ?」
「あぁそうだな!」

そう言って丸井は先に歩き始めたが、「あ、」と何かを思い出して立ち止まってこちらを振り返った。

首をかしげると、こっちに歩いてきてそっとあたしの右手をとり、照れたようにへへっと笑った。
無意識に口元が緩んでしまい、ぎゅっと手を握ると彼も握り返してくれた。




「なあ、。」
「なに?」
「そろそろ名前で呼んでくんね?」

つないだ手を一旦離し、向かい合って両手を握られた。

「ブン太、って?」
「びんご!」

いいものやるよとか言って笑顔になった後、顔が一気に近付いてきて
うもできないままくちびるに温もりを感じ、ちゅ、というリップ音とともに顔が離れていった。

ちょっと!とあたしは顔を引きつらせて、照れ隠しに両手で丸井を押しのけて自分の中で最大の早歩きをした。もうブン太って呼んであげない!

いきなりのキスなんて、しかもこんな道のど真ん中で…反則だ!

「おい、まてよぃ!」



後ろであたしの名前を呼ぶ丸井を放っておいて、ちょうどあたしの少し前を歩いていた真田を見つけて彼の横まで行き「おはよう真田、一緒に行こう!」と、あたしよりいくらか背の高い真田の腕を取って早足で引っ張る。
幸村の親友でもある真田は、なんだかんだで仲良い。
他の女子は怖がってるけどあたしからすれば真面目すぎる高校生だ。

「おはよう、おい、またんか!」真田はいきなりのことで頭が付いて言ってないようで、無抵抗であたしに引っ張られている。


「ちょ、!」
あたしと真田が一緒に歩き出してすぐに、今にも泣きそうな声が後ろから聞こえてきたので振り返ると、やっぱり今にも泣きそうな顔の丸いの顔。

そんな顔しないでよ!

、丸井が呼んでいるぞ。」呆れたような顔で真田はあたしにそういうと先に行ってしまった。遅刻だけはするな!と釘を刺して。
「ごめんねー!」と後ろから叫ぶと、構わん!と言いたげに左手が少し挙げられた。
後で真田に饅頭でもあげようかな、校内での菓子の飲食などけしからん!とか怒られそうだけど、まあいいや。

後ろでしょげる丸井のほうを向いた。

「早く行こう、遅刻するよ。」

笑うあたしと、未だにすねてるような丸井。放っていくよー、といえばすぐにあたしの隣に引っ付いた。
何このこ、まじで可愛いかもしれない。