「見事寝坊したぜ!Hey!」

9時とちょっと過ぎを表示してる携帯を握り締めて、朝からいきなりのハイテンション。


今日からあたしは先生の手違いで(これ重要)四天宝寺中学に交換学生として新しい学校に通うことになってしまった。
ちなみにあの話の後もう制服は用意されてるわわっけわからへん。
ほんでその週はそのまま桜中学に通って、その翌週の月曜である今日から通うことになってん。

四天宝寺ってすっげえ名前。
よんてんたからでらって書くねんて、ほんま変な名前。
桜中学もあれはあれで普通すぎる名前と思うけどな。


まあ、もうなってしまったからには仕方ない!心機一転頑張ろうと思ったのになにこの有様。
しょっぱなから出鼻くじかれてしもた。
ある意味転校生みたいなもんやろ!編入生?どっちでもええわい!


とりあえずわかることは初日完全遅刻って言うことだけ。
まあ迷ったよすんまへんでしたーってことで良いか。


「おい兄貴!なんで起こしてくれへんかったん!」
「いや、起こしたのに起きひんかった。」
「そうか!すまん!」

一回まで降りて、仕込みをしてる兄貴に言うと結局あたしの100%二度寝。
ちなみにあたしの家はラーメン屋でそこそこ繁盛してます、あざーっす!
どーでもええけど兄貴元ヤンで体格ごっついわ。
絶対あたしの栄養分取られてる気がするもん、だからあたし今日起きられへんかってん。



ほんで、そんな兄貴のお陰であたしは普通の生活してるだけでヤンキー呼ばわり。
普通のいたいけな少女やのに、髪の毛茶色くてメッシュはいってるだけでヤンキー呼ばわりやで、世間の目は冷たいなあ。
あと目つきやな、一昨年死んだおとんに似て細い釣り目やから人相悪いんも原因やな。
妹と弟はおかんに似てぱっちり二重や。
遺伝子ってホンマ怖いなあ。


まあなああたしがいた桜中学の頭はあたしやし、牛耳ってたのは間違いない。
校区は縄張りやわ、四天宝寺にいようとも。

ちなみに今回の交換学生事件はクラスメートに「お前ほんま漫画やな!」と言われた。
漫画じゃない、まじリアルってゆう。
なんであたしが態井さん(ざまいって読む)と間違えられなあかんねんろ。
理不尽すぎて涙出るわ。

・・・ってこんなことゆうてる場合じゃない!

「いってきまあああす!!」

あたしは慌てていまどきの言葉で言う「ギザかわゆす〜!」「鬼萌!」な妹と弟に挨拶をしてギザもくそもない母さんにも挨拶をして四天宝寺までチャリをぶっ飛ばした。


ぶっ飛ばしたんはええねんけど・・・四天宝寺とやらがどこかわけわからんかったから人に聞いてたどり着いたのが寺みたいな中学。
おいおいまじかよ、何、あたしに修行僧になれって?
あたしには修行がたりひんから出直せって?
おいおいそりゃないぜ!

しかも案外近くてすぐについた。これなら2時間目までには間に合うやろな。



チャリ置き場に停めて、早速校舎に入る。
着慣れない制服に真新しいかばんのおかげで新入生と間違えかけられて派手な髪型のせいでおもっきり目立った。
前髪シュシュでくくって上げてるちょんまげは、あたしのシンボルみたいなもんや!これなかったらな、あたし度80%の未完成やねん。


職員室について恐る恐る教頭らしき人物に挨拶に行き自己紹介をした。
髪の色とかいきなり遅刻したことについて何か言ってるのを適当に聞き流していると、担任が来たようでまた挨拶。

「お前が今日から俺の生徒になる熊井か!よろしく!俺は体育担当の松岡修司や!よろしくな!」
「は、はあ・・・。」

こいつ今よろしくって二回ゆったよな?ゆったよな?とか思ってると教頭が「先生二回もよろしくいらんで!」と突っ込んで周りが笑った。

なんなんこの学校、帰りたいんやけど。
しかも何か熱血やし松岡修司って名前やし体育やし絶対こいつのあだな修造やろ!
夢に向かって頑張るぞ!俺について来い!とか言いそう。


「熊井!お前も俺と一緒に夢に向かって頑張ろうな!よし、丁度1〜2時間目はHRや!これから2時間目になるけど紹介するから早速教室に向かうで!俺についてこい!」

ゆったよこいつ!若干せりふ違うけど!なんか痛い!

「あは、ははは・・・。」
あたしは顔を引きつらせながら笑い、返事するしかなかった。

松岡先生はクラス名簿を持ち職員室から出て行ったのであたしも着いていく。
ちょちょまって!いよいよクラス行くの緊張するねんけど・・・。

どどどどうしよ!

良い奴いるかなあ、できれば真面目ちゃんばっかじゃなくて同類っぽい人いてくれたら良いのに・・・。
今のところ今日すれ違った生徒全員あたしと違うにおいがする。
小説に埋もれてそうな。



「熊井!ちなみにお前は3年2組だ!良い奴ばかりだ、安心しろよ!」
にくみっすか!ある意味B組みたいなもんだけど、クラスが数字なの新鮮!



早速2組についてあたしが深呼吸しようとしてると松岡が「よし、じゃあ入るぞ!」といい、反応する前にソッコー開けてあたしを強引に引っ張って中に入っていった。
深呼吸してるときに不意打ちとか、心の準備、まだ!

「ちょちょ、こけるって!」
「おお!すまん。」
松岡はまたいきなり手を離したから本気こけそうなった。
こいつKY・・・ぜったいKYやわ。

「大丈夫ですけど・・・。」
「そうか、悪気はなかったんだ!」
「わかった、わかったから大声出すな!」
「あん、すまん!」

何この人、謝るん趣味かよ。
オレオレ詐欺に引っかかりそう・・・。


「いや・・・先生ソレ誰。」

松岡があたしに謝りまくってるとクラスの子がそう言った。
そうだ、あたしは交換学生!楽しい高校生活を送るにはどんな人間がいるか、そして第一印象が肝心だ。
クラスを見渡せばまあまあよさそうな人だらけ!
一人だけすっげー不良がいる。なんかいかにも罰ゲームは釘バットでケツバットしまーす的な。
あいつとは友達ムリそう、なんか敵意むき出しというかこえええええ!
でもなんかこの釘バット少年はキャラが濃いからケインって呼ぼうかな。(ケイン=濃すぎ)

それ以外はまともで、男前やかわいこちゃんも発見!

「なんや松ちゃん。その子がゆうてた交換学生か?」

手に包帯を巻いた超イケメンな男子がそういった。
ちょ、まって!うちの中学にはいなかった美男ではないか!

「そうや、皆仲良うしたってな。ほら、熊井からも一言言っときー。」
「え、ああ。桜中学から交換学生としてきました熊井です、よろぴく!好きに呼んでええけどクマって呼んだら頚動脈締めるから!クマちゃんって呼んでも延髄斬りかますから注意してな!あ、じゃあどう呼べば良いかってことやねんけどでもちゃんでも嬢でもほんまなんでもいいから!」


怖がられないようにちゃんとウインクまでつけたのに、なんで。なんで皆引いてるん。



「くーまちゃん」

ええ!さっそくナメられてしもた?!
声のほうを見るとなんかさっきの手に包帯巻いてる男子の前の席の茶髪のショートカットの男子がニヤニヤしながらあたしをそう呼ぶ。
やられた、いきなり初日からナメられた。この熊井様が・・・。

「あんた名前なんてゆうん?」
ニコニコしながら彼に名前を問うた。


「忍足謙也ー。」

おしたりけんやおしたりけんや・・・
「よおし覚えた!」
あたしは笑顔でそう言ってかばんから手を離してその場に落とした。
そして笑顔をフッと消し、忍足謙也のところまで助走程度に向かって走り忍足に向かってジャンプをして足を伸ばした。

「え?えええええ?」

驚きで顔をむちゃくちゃ引きつらせているこいつの顔は最高!

周りの皆もケイン君も松岡も包帯の男前君もあたしの行動にめちゃくちゃ驚いている。




まあまあ忍足さんよ。クマちゃんって呼んだことは

「死んで償え!!」
(謙也ああ!大丈夫か!!!)
(ま、まじで延髄斬りしやがったよあの女!!)