今日は1年でただ一度だけのあたしの誕生日で。目の前には付き合って半年になるブン太が紙切れを持ってニカっと笑って立っている。(え、何?)(その紙ってまさか作文用紙?)も、もしかしてその作文用紙が誕生日プレゼントなわけ!?何?国語力がないあたしに「作文書け!そして作文能力を高めろ!それが俺の誕生日プレゼントだ!」って奴?(プレゼントじゃなくって、それ嫌がらせ。)いや、あたし作文用紙だったら・・・お菓子とかの方がうれしいよ!10円のチロルとかの方が、うれしい! あたしはしかめっ面しながらブン太の様子を見ていた。するとブン太は、一度深呼吸をして作文用紙を広げた。え、何!!あれ何か書いてる?不思議に思いながらも黙ってることにした。 「え、ねぇブ「ちょっと黙っててね。」 ブン太はあたしの声をさえぎって、少し緊張しながらあたしに言った。そして作文を読む態勢に入る。え、何!作文発表会なわけ!?あたし先生になるほどえらくないよ!それとも、あれか!自分の作文が素敵で作文下手なあたしに対する嫌がらせ・・・だったらおこるよ!ぷんすか! とりあえず、聞いてみることにした。 「『親愛なるへ』 」 え、何それ!あたしについての作文!?ええええ!ちょ、なんだか手紙みたいじゃない!それは驚くよ!!なんだろ、なんだろ! 「俺、初めてまともに心から作文用紙を使って文字書いたと思います。だって今日は、の誕生日だし特別です。あ、本当は、おんなのこだし指輪とかアクセサリーとかよかったんだろうなぁって、指輪とかだったらもっともっとの喜ぶが見れたんだろうなぁって考えたけど俺の財布には残念ながら、にひゃくごじゅうきゅうえんしか入っていません。テニス部に相談しても変なものばっかり言うし、からかってくるのです。なので、結局照れくさいけど俺の気持ちを手紙にして送ろうと思いました。でも俺は手紙を書くものと言えばノートの切れ端しかなくて、他は広告の後ろか、なんか趣味の悪いお葬式用の封筒みたいなのくらいです。御霊前と書いてたけどは御霊前さんじゃないので違うと思いました。何かないかと漁ってたとこで、昔夏休みに使った作文用紙がキレイなまま出てきたのでそれで書こうと思います。 まず、。誕生日おめでとう、生まれてきてくれてありがとう。この思いが一番大きいです。次にのお父さんとお母さんもありがとう。のお父さんとお母さんが偶然出会って、二人が結婚して、二人がたまたま気分的に選んだ日に生でせっくすしてくれて、その日そのとき出た大量ぶんの1の精子がその時たまたま卵子に入ってくれたおかげで、今、が居ます。俺の大好きなが目の前に居ます。と、ちゅうもいっぱいできるんです。今、幸せで仕方ありません。もし、のお父さんとお母さんが気分的に選んだその日が1日1分1秒でもずれて、せっくすしたとして、その時違う精子が入っていたら、はじゃなかったと思うと、俺は誰とちゅうしてるんでしょうか。 俺たちは、赤也がセッティングした合コンで隣同士になってそこから付き合いだしたって言う、なんだか聞き心地はちょっと悪い出会い方をしたけど、今思ってみればあの時ちょっと乗り気じゃなかった合コンに参加してよかったと本当に思います。本当は、幸村君ものこと狙ってたらしいけど、はこんな俺を選んでくれました。俺なんかより隼人の方が目立ってかっこいいし雰囲気もいいのに、俺を選んでくれました。こんなチビで、甘いモンばっかり食べて、女顔だし、パーフェクトボディーでもないし、甘ったれだし…なのに、俺を選んでくれてすごく、すごくしあわせです。のこと考えてるだけで、凄く幸せです。こんな幸せな気持ちにしてくれる、もう一回言うけど生まれてきてくれてありがとう。俺、今までに幸せにしてもらったし、これからは俺がもっともっと幸せにします。多分俺のわがままのせいでを傷つけてしまったり、喧嘩して泣かせてしまうかもしれません。だけど、が大好きです、絶対の絶対に。 俺が立海を卒業して、大学も卒業して、ちゃんと就職したら、結婚してください。俺の子供、3人くらい生んでください。ずっと隣歩いてください。 とにかく、俺は、がだいすきでだいすきで、だいすきで仕方ないです。 丸井ブン太」 ブン太は、そこまで読み終えると、大きく息を吐いて作文用紙を閉じてあたしと目が合った。待って、こっち見ないで、あたし絶対変な顔してるから!もう、本当にすっごい、すっごいうれしくって、ちょっと卑猥的な部分とか、言葉おかしかったりする部分もあるけど(ご霊前って!)本当にうれしくって指輪なんかよりもすっごいうれしくってブン太に抱きついた。ブン太は少しあわてたけどゆっくりそぉっと背中に腕を回して徐々にきつく抱きしめてくれた。 ごめんね、ブン太!!そんなすばらしい手紙をただの紙切れとか入っちゃって!!10円のチロルチョコの方が良いって思って、本当にごめんなさい!! 「だいすき、だいすき、あたしだって、だあいすき!!」 あたしがそういうと、ブン太は耳元で小さく「よかった、俺も」と呟いた。 ![]() |