そこからは本当一瞬だった。

「サヨウナラ、ボンゴレ日本支部、源内夏依さん。」

源内夏依の目の前に立って、あの日の続きで右手を振りかざした。
「やめろ!」
「夏依ちゃん、逃げろおおっ!」



Mi chiamo arma.





外野からの源内を呼ぶ声がたまらなくうるさい。

体に振りかざした右手を突き刺した。
場所は少し変えたけどね、源内有男と全く同じところに。

「うああああ!」と源内の苦しむ声が聞こえ、急所を外してしまったことがわかった。
「夏依を棄権させろ!」
「中止だ!今すぐ中止にしろ!」
「急げ!」

危険?中止?ここまできたのに?
そんなの聞き入れるわけないじゃん。


源内は、あたしが突き刺した腕を両手で掴んで弱くなった力で最後の抵抗をする。

「なーんだ、まだ生きてたの。」

左手に鎌鼬を集めた。今から何をするのか沢田達にも伝わったみたいで必死で止めるように説得をする。
奴等の声も聞かずに源内の頭部に放った。
残念ながら、脳みそバーン!というか頭部が跡形もなく木っ端微塵になった人は即死である。


腕を源内から引き抜いて、落ちている宇宙のリングを広い自分のと合わせて完成させた。


「この勝負の勝者はとなりました」

チェルベッロの声が響き、うわああああ!と泣き叫ぶ声がたくさん聞こえてきた。



□□□


フィールドの外にですと、おつかれさーん!とベルが近寄ってきた。
「最高だったぜ!」
「そーお?ストレス解消にもならなかったけどねー!」

笑い合って右手に付いた血を振り払う。
沢田側の落ち込みようは落ち込むというよりも絶望一色。


「おい、!」

凄い剣幕でディーノがあたしに近付いてきて凄い力で腕を掴んだ。怒りで力を制御できていないようでさすがのあたしも少し痛いくて睨み返す。

「あそこまでする必要あるのかよ!同じボンゴレ内だぞ?!何で殺しちまうんだよ!!」
さらに腕を掴む力が強くなる。

「なに?あいつはあいつであたしを殺す気満々だったじゃない。もしあたしが殺されてたらディーノは源内に同じこと言えるの?」
「あぁ、言う!」
「嘘よ。」

ディーノの腕を無理矢理振り払った。なんか悪者みたいにされて超うざーい!


「あーあー、聞こえますか、特別任務データ.523 日本支部 源内夏依 抹殺 任務完了ー。」

耳を澄ましてるであろうリンピドに話しかけるように空へ向かってそう言った。
任務後の即報告はブイヨの掟だ。ついでに周りに聞こえるようにわざと。

「任務、だと?」
ディーノの顔が余計に険しくなった。

「ええ、そうよ。それも9代目勅命のね。だからあたしが殺したのも正当、あなたたちに睨まれたりうらまれたりする筋合いはこれっぽっちもないの。」
懐から死炎印つきの紙を一枚取り出してディーノに渡す。彼の方にはアルコバレーノが乗っていた。

「本物だな、これは。」
確認したアルコバレーノはディーノの肩を降りて沢田の横に行った。

「な、んで…?」

「なんでじゃないわ、ホンットとんでもない奴を仲間に入れてくれたわね。」
「お前に、お前に夏依ちゃんの何がわかるんだよ!」
「えぇ、わかる。あなた達よりもね。あいつ、ボンゴレ本部にはナイショでエストラーネオを復活させようとしてたのよ。わかるでしょ沢田。エストラーネオファミリーって、どんなファミリーか。」

骸が並盛を襲撃したのは記憶に新しい。骸と決着が付いたあと、沢田達は骸たちがエストラーネオファミリーにがどういうことをされてきたのかを知ったはずだ。
犬達の顔は既に強張っている。

「何、らって…?」


「源内親子はボンゴレに内密に昔全滅したはずのエストラーネオの研究員の生き残りを寄せ集め、人体実験ができる環境を作ろうとしていたの。もちろん源内の部屋から証拠書類は押収して本部に送り済み。後に公開されると思うわ。」

「夏依ちゃん、が?」

「えぇそうよ、あなた達が信頼してた源内夏依、が。…彼女達の目的はただ一つ。arma.01の大量復元。ボンゴレ、いやマフィア界を支配しようとしていた。」

「arma.01だと?!」
ディーノが驚きの声を上げた。
「アルマ、ウーノ…?」

山本が首をかしげ、アルコバレーノが反応した。

「聞いたことあるぞ、エストラーネオで行われていた全ての人体実験の最終目標とされた人間兵器の名前、か?」
「おいおい、たしかエストラーネオが潰れた後にarma.01の実験内容がマフィア界に流れたが…あまりにもムゴすぎる内容で、arma.01に関する資料は全て滅却されたはずだぜ?」

「そのとおり。でも、一つだけ消せなかったの。奇跡的に生き残った研究員の記憶。エストラーネオの研究員なんてろくな奴はいなくってね、彼らも少し改造されてるのよ。記憶を忘れないようにね。だからそれを頼りに作るつもりだったのよ、あいつ等は。ちなみにそのエストラーネオ研究員ももう抹殺済み。
だからこの件に関してはあたしに感謝して欲しいくらい。」


そこまで言えば沈黙が起きた。
犬達はarma.01の、arma.01であるあたしの実験内容を知っている。母世代からの度重なる受精卵実験や他の子たちの数倍以上の、思い出したくもないあの実験内容を。
うっとうしくなったのでザンザスの元に行き、屋敷に戻った。


エストラーネオの復活だなんて、あたしが居る限り…ブイヨが居る限り絶対にさせない。




次で終わり



少しいやな予感。