『はじめてーのーちゅうー(うふふっ!)、きみとちゅうー!あうぃぎーびゅおーまいま、』 ここまで着信音が鳴ったところで、目が覚めた。目を瞑ったまま携帯をとり通話ボタンを押し耳に当てた。 「・・・はい、誰?」 「もしもし?俺だよ俺!」 電話の向こうは男の声。多分、若いと思う。 もしかして・・・もしか、して・・・。 「は?いまどきオレオレ詐欺?助けて祖母ちゃん!とか言おうと思っても無駄だってば、あたし孫居ないし。まだ17だし!ちなみに母さんも兄貴も妹も弟も全員事故って無いし健全だから!っつーか兄貴事故っても今の時代はアロエでなんでも治るんだよばーか!誰が100万振り込むか!一昨日きやがれええ!金の援助ほしいのはこっちじゃぼけええ!もうさ、一人でヤってるとこくらい見てあげるからさ、5万よこせよヴぉけ!」 あたしがそう力なく怒鳴ると 「はあ!?お前馬鹿か!俺だよ、若菜だよ!誰と勘違いしてんだてめえ!」 「は?ワカ菜?なんのサラダに入ってんだおめえは!和風ドレッシングが合う系統の大根と混ざった感じのサラダかこの野郎!菊菜の友達か?!あたしサラダからワカ菜とか除けた覚えないって!ワカ菜の精よ、怒りを沈めたまえ・・・」 それだけ言ってあたしはまた寝そうになったところで電話の声が変わった。 「オイ、?寝ぼけてんじゃねえよ、起きろよ。」 「次はだあれ?・・・ほうれん草さんですか?」 「馬鹿かよおめえは!俺だよ俺!安仁屋だ!」 「あー、そういえばそんなやつ知ってるかも・・・。何?安仁屋が事故ったから振り込めって?無理無理ーだってあいつきっとゴキブリ並みの生命力だから水に浸しておけば治るって・・・じゃ、おやすみ・・・」 「いや、(もうどうでもいいや)お前今日学校こねえのか?もう昼休み始まんだけど。」 「あ゙、」 あたし、覚醒。 愛心★R かなりの低血圧なんですよねあたし!だからね、かなり寝ぼけてて本当にオレオレ詐欺とワカ菜の精から電話かかってきたって思ったんだ! っつーかワカ菜って何の種類だコラ!(まずそう・・・。) それよりも、安仁屋が言うまで気づかなかった!あたし昨日転校して新しい学校いったんだっけ! っつーか転校二日目で遅刻とカありッすか!ないっすよね! 「忘れてた!今から行く!」 「おう、屋上に居ると思うから待ってンぜ。」 そういわれて電話を切った。 制服に着替えて髪型セットしてあわてて1階までダッシュで駆け降りた。 すると、キッチンでパジャマで優雅に朝食をとりやがる我、弟と妹が居た。 「ちょちょちょ、何のんきにしてるわけ!?学校は!?」 「いや、その言葉そのまんま姉に返すよ。」 「俺も。まあのことだしまた寝坊だろ?俺らは学校創立記念日だから。」 「ありえねええ!」 あたしには兄貴のほかに中学生の弟と妹がいる。 懐かしき我母校、桜中学に通うのは4月から中3になった弟・優輝と、新入生の妹・輝羅。 優輝は坊主で剃り込みを派手に入れてて学年で1番ヤンチャ。前に中学の時の先生に会ったときに「お前の弟なんとかならんか、3年前のお前が蘇ったみたいで・・・助けてくれ」といわれた。 妹、輝羅は半年前までおとなしかったのに、最近あらゆるところにピアスを開けだし、鼻に口に舌にに耳にへそに(・・・)あたしでさえ耳とへそと鼻と・・・ってあんま変わんないジャン!まあ髪型は3年前のあたしを思い出させるような茶髪に紫色のメッシュを入れてる。 先生いわく、「本気でお前が蘇ったと思った」らしい。 兄貴やあたしが歩んできたヤンチャ道を同じように辿ろうとしてる。熊井家4兄弟姉妹、全員ヤンチャとか、もう熊井家はロクでもねえな! でもでも、ちゃんとうちらは家族愛がすごいんだから大丈夫。 「ねねねぼうだなんて!オレオレ詐欺を相手してたらこんな時間になっただけよ!」 テーブルに座り、急いで化粧をする。あー、ラインいがんだ!くそっ! 「は?オレオレ詐欺?」 「相手も馬鹿だね!姉にかけるなんて!」 「本当それ!にかけてもきっと話し通じないぜきっと。」 「・・・まあそのオレオレ詐欺は結局友達のいたずらだったんだけどさ」 「なんだよそれ!」 のんきに会話してたら、あたしが居るってことに気づいたのか店から兄貴が顔出して「早く学校行け!」と怒られたのであわてて玄関を飛び出した。 □□□ 「おっはー!」 屋上のドアを勢いよく開け、屋上に勢いよく飛び出して両手を上に広げてあげて、両足を開いたポーズを決めたらシーンとした。うわ、タバコくせっ! 「・・・いや、おはようじゃねえし。」 アニが顔を引きつらせながらそういう。 「あたしにとったら素晴らしいくらいおはようだって!あ、そうそう、若旦那-!さっき電話ごめんね!ワカ菜の精ってなんやねん!的な感じで許してね!」 湯船(やっぱてつにゃんって呼びにくいことに気が付いた)と桧山とセッキーと岡田と一緒に居る若菜を見てとっさに謝った。 んー・・・。 「そんで、やっぱ皆のこと普通に呼ぶわ!しょうみ、呼びにくい。」 「おう、もう是非そうしてくれ!皆きっと大歓迎だし!」 桧山が超笑顔であたしにそういう。 「でもセッキーだけはセッキーって呼ぶから!」 セッキーの嫌そうな顔は見なかったことにしてそういってあたしもかばんからタバコを出し、湯船の横に腰を下ろすと火をつけた。 「あ、もタバコ吸うんだ?」 横の机に寝そべってなぜかストップウォッチを眺めてる岡田がそういうと周りがあたしに注目した。 「うん、まあね。それはそれはもうずいぶんと昔。つまりロングロングタイムアゴー?ってかんじ。」 「へーえ!何吸ってんだにゃーん?」 「アイシーン。あえて言うならスーパークーリングメンソールだから!」 「なんだそりゃ?きいたこと無いんだけど。」 桧山はそういってあたしのタバコのパッケージを見た。 「コンビニには置いてるよ!・・・名前良くない?アイシーンってさ漢字にしたら絶対、愛する心・・・愛心ってかいてアイシーンだと思うんだよね!」 「それ、お前の思い込みだろ。」 新庄の一言でシーンとした。 「新庄のマルメンとかさ、漢字にしたら丸面だし!なんだか漢字にしたら、丸顔っぽいね!」 「俺、マルメンじゃなくてこれからマルボロのメンソールライトってちゃんとって呼ぶわ。」 さては新庄、ちょっと丸顔ってこと気にしてるな! 「マルボロはマルボロで漢字にしたら丸簿露・・・?面剃来人」 「逆にそれ正露丸みたい。正露丸で顔剃ってる人が来る、みたいな」 「・・・。」 「ちなみに桧山のCOOLは来!の一文字で!」 「・・・。」 また屋上がシーンとなったところで、岡田が飛び起きた。 「おーし時間だ!そろそろカウントダウンはじめっぞ!」 そういうと、若菜、桧山、湯船、岡田は「5!4!3!2!1!」とカウントダウンし始めて、この生き生きとした4人の顔が怖くって新庄の横でそれを見守ることにした。ちなみにセッキーは面倒くさそう。何故? ゼロ!と言う直前で少し遅れて屋上の扉が開き「あ゙!」と言いながらパンを抱えたミコちゃんが! しかもここまで来た瞬間滑り込んでパンをぶちまけた。 「アウトー!御子柴のおーごりー!」 「ちょ!ミコちゃん大丈夫!?」 と皆でへらへら笑っててあたしはミコちゃんを起こそうと思い、彼の腕に触れようとした瞬間にまた屋上の扉が開いた。 「火事はー!火事はどこだー!」 皆が川藤の姿を確認するとミコちゃんはあわてて飛び起き、あたしはそのミコちゃんにビックリして思わず新庄にしがみついた。(無視してタバコ吸い続けてるぜこのやろう!) もう皆、川藤を見て口あんぐり開けて固まってる。 「え・・・火事は?」 川藤が湯船たちをガン見してることに気づいたミコちゃんが「皆!」とタバコ消せ!の合図をするとタバコを吸ってた湯船と若菜と桧山はあわてて消し、みんなで煙を消そうと必死であおいでた。 「馬鹿、安仁屋!っつーかも!」 実は、タバコを消してないあたしとアニを見て若菜が走ってきて消させようとしたけど新庄が若菜を軽く突き飛ばした。 「っつーか、お前もいつまで新庄にくっついてんだよ。」 川藤が防空頭巾?見たいなのを外してる間にアニがあたしを見てそういう。 そういえば、と上を見ると新庄はあたしを見ずにまた別の方向を見てた。ちょっと位目を合わせやがれ! あ、忘れてた!とつぶやいて学ランから手を放して若菜の横に立ち、なんとなく無言の川藤とアニを見つつ、首の骨を鳴らした。タバコをくわえたままあくびをしたら咽て若菜に頭を叩かれてしまった! 少し若菜を睨んで目線を安仁屋と川藤に戻すと川藤がアニの手首を掴んでるとこだった。(っつーかあのズボン何!?)(今気づいたんだけど!) 「二十歳未満は喫煙禁止だぞ、消せ。お前もだ、熊井。」 安仁屋に向けてた視線をあたしにも移してそういう。少し川藤と目線を合わせたまま沈黙があって最後に一度だけタバコを吸い口を開く。 「あ、まじで?喫煙って10歳未満禁止と思ってたー。」 川藤にそういい、足元にタバコを落とし足で火を消した。 後ろから安堵のため息が聞こえたのはきっとあたしのことだから変なこと言って乱闘にでも発展させるのかと思ってたからなのかなあ?失礼な! 少し若菜たちに睨みを聞かせるとアニ方面からバキっと音がしてあわててみると地面にひれ伏せた川藤。 「ままままままじでか!!」 「な、な、なぐった!」 アニの右手が震えてる。もしかして、川藤怪力?とか思ってるうちに新庄がアニに「来い、」といって屋上を出て行き若菜がアニをつれて行く。 あたしが唖然としてると岡田があたしの腕を引っ張って屋上から逃げようと走った。 パンはどうすんの! (馬鹿か!今はそんなのどうだって良いよ!)(よくないよ!パン!)(後で買ってやるから我慢しろ!) |