スタジオにつくと、ヤス以外のブラストのメンバーが居た。 やっぱり、彼は来ていない。 「!お土産は!」 真っ先に飛びついてきたのはナナ。 目は輝いていて本当の猫のようにやたら擦り寄ってくる。 本当都合良いんだから! 「ちゃんとあるよ!落ちついてよ。」 3人にちゃんとお土産の、ご当地限定のキティちゃんストラップを渡した。 皆オソロだ。なんとなく仲間のしるし的な感じ! 他にも一応木彫りの変な人形とか、変な置物とか売ってたけど・・・買うこと自体が恥ずかしい気もしたし。 荷物が第一邪魔になるし、使用用途も無い。あ、ノブとかにはそういう変な奴のほうが楽しかったかもしれないけどね! チョコレートもまたありきたりだったし、ずっと身につけれるものって言えば、これしかなかった。 そんなんでも3人が喜んでるのを嬉しく思いつつあたしはさっきのことを思い出してしまう。 あの笑顔、二人のツーショット。小さく感じる孤独感。 明らかおかしいじゃん。おかしいおかしい! 「?どうした。元気無いんじゃねぇか?」 そんなあたしの様子にきづいたらしく、レンが心配してくれる。わぁ、結構珍しい! 心配してくれるのは、とてもうれしいけど・・・ましてや、ヤスの浮気現場を見たなんて言えないし。 アレを浮気と決め付けるのも良くない。 「うん、大丈夫!ただの旅行疲れだよ〜!ホテルでさ、すっげぇ騒いだの! 海泳いで、珍しく学校行事参加したからクラスメイトと余計はしゃいで!」 笑顔で言うと、ナナやレンは優しい笑顔をして、そうか、と言った。 元気なフリしておこう。みんなに心配はかけたくないから。 あたしさえ耐えれば――― 「あれ?今日ハゲは?、なんかしらねぇか?」 「ううん、わかんない!ごめんね!」 ナナが思い出したようにここにいないヤスのことで聞いてきたけど、一瞬息が詰まってどう答えれば良いのかわかんなくなった。 レイラと会ってる、なんて言えない。ヤスの立場がなくなっちゃう!口に出したら笑える自信だってない。 もう、やだ。 「何やってんだあいつは―!ハゲ!」 ナナが呆れ、あたしは苦笑した。さっきの光景がよりいっそう頭に浮かんでて、ちょっと嫌だ。 「どうしたんだろ、ね」 そんな中、ノブは黙ってるだけだった。 その日の練習が終ったが、とうとうヤスは来なかった。 あの後、二人は一体どうなったのかな、どうしたのかな。 解散してからヤスに渡せなかったお土産と荷物をまとめてスタジオから出て行こうとした。 「!!」 呼びとめられて、振り向くとあたしより少しだけ背の高いノブが笑顔で立っていてなんだか安心できた。 ノブは普段はいじられキャラで、馬鹿なんだけどあたしは一番彼を信用してる部分もある。 「一緒に帰ろうぜ。送ってく。」 「うん。ありがと。」 練習スタジオを出て、数分歩いたところで丁度見つけた自動販売機でコーヒーを買った。 温かいコーヒーが、歌って少し痛めたのどにじんわり染み込む。 「なぁ。ヤスとなんかあった?」 今まで普通の話してたのにいきなり直球で聞いてくるノブにあたしはコーヒーでむせた。 むせすぎて鼻から出るかと思ったじゃない! 「うわぁ!ごめん!でも、やっぱり何かあったんだ。」 背中をさすりながらそういうノブ。 「な!なんでそうなんの、違うよ。」 まだむせながらも必死で笑顔作ってごまかそうとしてみてもノブの目はもうごまかせないようだ。 どこか確信を持ったような、でも哀しげな笑顔が無理すんな、って顔してる。 「の様子見てればわかったよ。で、何があった?」 今度はあたしをなだめるようななんかそんな優しく微笑むノブを見て、泣きそうになった。 なんだか、一人じゃないって言ってくれてるようで、安心感、って言うのかな? 「・・小さいくせに男らしいね.」 「小さいは、余計だから。」 ははっ、と軽く笑ってあたしはノブにすべてを話せるかも、と思った。 あたしはヤスが大好きで。でもレイラが最近また現れてからヤスの態度もおかしいってこと。 不安で不安で、泣きそうになることとか。 「しかも今日来る途中にヤスとレイラが・・」 今日のこともなんか言いたくなって全部言ってた。 でも、気がついたら涙出てて。結局あたしはヤスがだいすきなのに届かないような、そんな気持ちになっていた。 「・・」 そうノブが呟くと抱きしめられた. 「ノ、ブ?」 「あんま溜め込むな?俺はの味方だからさ。」 寂しさが、なんだか吹っ飛んで行ったようだ。 そんなノブの優しさに甘えてあたしは泣きじゃくった。 今まで溜まってたのが、全部流れたようでスッキリしたけど やっぱりどこか嫌だった。 こうやって抱きしめてもらうよりも、結果的にヤスがいないと意味が無い。 本当、どうすればいいの、? 家に帰ったってお風呂に入って良い匂いの入浴剤入れてみたって寝る前のマッサージしてみたって頭の中にいるのはヤスとレイラ、で。 ズキズキと痛む頭を誰かに鈍器のようなもので殴られて割れてしまえばいいのに、とさえ思った。 人間って、弱い生き物だ!なんて偉そうに言ってみるけど、もしかしたらここまで弱いのはあたしだけかもしれない。 |