「単刀直入に言う、俺のバンドで歌ってくれ」

そう言われたのに困った。
いくらヤスの願いでも、あたしは・・。


「でも・・。あ、あたしみたいな音痴が入っ「お前じゃねぇとダメなんだよ」

言いきる前にヤスが言った。

の声が、今のボーカルの声にすごくあっている。
しかいないんだよ。」

そこまで言いきられても・・、と俯いてしまう。
少し沈黙したあとあたしは顔を上げてヤスを目をサングラス越しに見た。



「あたしやってみる。」



あたしは歌なんて興味が無かったけど、(むしろスポーツッ子)
直感で入らないといけないような気がした。

バンドの名前は ブラスト だったっけ?


とりあえずあたしは、ブラストに入った。

ボール触って突き指ばっかりしてた日々が、今では学校なんかよりも、唄う毎日。
非常に名残惜しかったけどバスケ部も退部した。
やる事は中途半端は嫌だから。

後輩にもかなり止められたけど、仕方ない。



そして、ナナとも会って、皆で練習のときに皆の絆が凄い深いとすぐにわかった。
不安が募る。

新人一人が、団体に入ることはすごく不安で仕方ない。

――――あたしはココに居ても良いの?




悩みをヤスに話すと
「大丈夫だって。すぐ慣れるさ」

と言って頭をぽんぽんと軽く叩いた。
だからと言ってすぐになれるわけじゃない。


いまさらやっぱやめる!とか言っても、呪われそうだし
後には戻れないから場違いかもしれないけど、頑張ろう。


それから、小さなライブを開き、ファンからブーイングを受けないかすごく心配だったんだけど
あたしの歌はナナにも負けないくらいに上手かった(らしい)
ブラストのファンは、初心者がココまで出来るならナナを超すって言われて
あたしのブラスト入りを歓迎してくれた。





ヤスは、悩みも何でも聞いてくれて、会うたびに好きになって
今ではもう大好きだった。

仲間として?ううん。男性として。バンド入って良かったと思う毎日だ。
決して、恋愛するためにバンドに入ったわけじゃないけど、好きなものは好き。

いてもたっても居られずに告白した。
勿論ダメもとで。フラれると覚悟したが返って来た言葉は意外で

「俺の傍に居ろ」
と優しい笑顔であたしを抱きしめてくれた。

だめもとで告白したのにOKしてもらえて。
うれしくてうれしくて涙が出た。抱き着いて。こんな幸せで良いのかと思った。

唄うことが楽しい。ヤスがいて皆が居て仲間が居て。
だんだん状況にもなれてきた。


。あたしはココをこうやって唄うから、はアドリブでなんか入れてくれ」

「オッケイ!ナナ!」


練習のときはナナと打ち合わせしたりレンと絡んだり
ノブをからかったり楽しい。本当に。



 このときは、人生最高に幸せでした。



ヤスとは、デートも何回もしたしヤスの家に行ってご飯作ってあげたり毎日毎日が幸せで。
ブラストの中でも公認だった.
好きな人と、一緒にいられるって、幸せなことだと思う。


「おいー!お前等!あんまイチャイチャすんな!」


とナナから笑いながら注意を受けたりしたりして。

「ナナだってレンとイチャイチャしてるじゃん!」
とか言い返して楽しかったよなー。




ずっと変わらずヤスが大好きだった。

そんなときにあたしに敵が現れた.
歌い手としてのライバル意識しか燃やさなかったトラネスのレイラの存在.

どうやら最近ヤスのことを気に入ってるらしい。
最近妙にヤスにくっついてる。頭ペチペチ叩いたり。やたら絡んでたり。
嫉妬って言うのか知らないけど。

いい加減にして!!と叫びたかった。

あたしの存在わかってるか?本当!

重要危険人物として、あたしの中でブラックリストに載せられた。




数数間が経ち、相変わらず彼女はあたしを怒らせていた。
驚いたことにいつの間にか修学旅行の時期になっていた。

あまり学校にも行ってなかったので気づくはずも無い。

久しぶりに学校に行ったら「あさってから修学旅行だよー」と言われたときはど肝を抜かれた。

あたしは修学旅行のために1週間海外に行くことになった。
初海外!!初飛行機!初ハワイ!

修学旅行前日に、練習に行った。

「お土産ヨロシク。気をつけて行けよ」


「まかせて!行って来ます!」


この1週間はあたしもだけど、レイラが修学旅行でヤスに会えないから、何と無く安心はしてた。
変な事されないしね!さすがに国際電話とかしないと思うし。

ハワイは、海が綺麗で暖かくて・・。
行って正解だと思った。


さすがに悪い事はしなかった、というよりもバレなかった。というほうが正しいか。




帰って来て、次の日の練習は勿論参加!話を聞かせたかったのだ。
本当に楽しかった、と!

お土産を持って練習場まで行く途中に通りかかった喫茶店に見覚えのあるスキンヘッドが見えた。
スキンヘッドでサングラスなんて、サンプラザ中野とヤスしか見覚えが無い。

きっと後者のヤスだろう。
どうしたんだろう?と思ってそばまでいき、ガラス越しに声をかけようとしたが、足は止まった。

「あ、れ・・ヤ・・・ス・・?」


思わず持っていた荷物を落しそうになりながらも見ていた。
気づかれないうちに、その場を去ろうとしてもどうしても足が動かない。

心の中では変な動揺が起こってる。

早く行かなきゃ、


ヤスが楽しそうに笑ってる。ヤスが、ソバージュのロングヘア―の知らない女の人と笑ってる。
ううん、知らない人じゃなくてあれは

――――レイラだ。

なんで、いるの?
本当、なんなわけ?

だけど・・・だけど、

(ヤス・・・幸せそうだなぁ。)


ヤスはあんなに笑顔が柔らかかったっけ.
幸せそうな笑顔は見たこと無い。


(幸せそう?ううん。見間違い。あたし疲れてるんだよ.)


ヤスは、あたしを好きで居てくれてる.浮気なんかしてないよ・・ね?
うん。ヤスを信じよう・・でも不安だけが心に残る。


早足でその場を去った。
信じてみるって思ってもやっぱり変な感情が心に残る。



どうして、よりによってレイラなの?
あたしの、一番のライバルじゃん!

絶対、絶対許さないんだから。