ゲーセンなんて、断ればよかった。今更だけどものすごく後悔している。
なぜならあたし達は警察に連れてこられたのだ。


理由?理由はつっちーと日向のチャリの2ケツ。
顔も見たくないわが担任も駆けつけてなんだか大事になっていた。

しかもこの警察、退学後にあたしが大分荒れてた頃、週3くらいでお世話になってた場所で。
最近落ち着いてあんま来てなかったからある意味懐かしいけど。ここの常連にはもうなりたくなかったのに。


はぁ、とため息をつけば腕を引かれた。何かと思えば「行くぞ」と竜が前にいて、そのまま署内に連れて行かれた。
あれ?竜に連行されてる?あたし。


中につっちーと日向がいて、その担当の刑事がこれまた懐かしい!
名前は覚えてもないけれど、もうあたし担当だった、と言っても過言ではないくらい。
週3程度、つまり連行されるたびに、顔を合わせていたあたしの大嫌いな大嫌いな刑事。
こいつは何かと上から目線で嫌味たらしい嫌な奴。
山口と同様に、こいつの顔も見るのが嫌で仕方ない。
だんだん腹立ってきたところで、あたしの小さな殺気に気づいたのかその刑事がこっちを向いた。

「おやぁ?これはこれは。さんじゃないですかー」としらじらしく言い寄ってくる。

すると横からタケが「なに?え、?こいつと知り合い?」と聞いてくる。
あたしは返す言葉が出てこないし相手もしたくないので無言で睨むだけだ。

「あのときあんなけ世話してやったのに礼の一つも言えねえのか?」

そう言われたのだけど、べつにいやいや世話した、とでも言うのならわざわざこんなところにつれてこなくても良いし。
っていうか、世話になった覚えもない。かってにそっちが進めただけ。

「うぜえ・・。」

「おぉー近頃の若いモンは口が達者で結構ですねぇ」

そういい、最後に鼻で笑われたので腹が立ってきて、でも殴りかかるとかはしたくなくて、思いきりイスを蹴飛ばした。最近モノにあたるのは、くせになってきてる。

そんなあたしをを竜と隼人が必死で止める。


「落ち着けって!な?」
「・・・バカか」

まぁ。今回はこの2人に免じておとなしくしておこう。









とりあえず警察から出ると、山口が「ラーメンでも食いにいくか!」なんて悪魔の呪文のような言葉を言い出して。嫌な予感がする。まさか、また熊井ラーメンだったりして、

次顔を合わせてしまったら、どんな表情をすればいいのかわからない。できればもう関わりたくないのに。

「ちょ、あたし帰るわ」

「だーめ。も来るんだって!!」
日向の言葉は聞かなかったことにして、踵を返したとたん手首をつかまれた。顔が我慢できないくらいに引きつったが、日向は笑顔であたしを見てた。(もしかして、確信犯?)

しかも、ヤンクミまで居るし。
話さなければ良いんだって思って


しぶしぶ行くことにした。
どうせ会ったって、無視すればいい。すぐに帰ればいい。ただそれだけ。

「よーっし!じゃあ、いくぞ!」

さっきまで警察にいたと言うのが嘘みたいな位に高いテンションで歩き始めた。







「へいらっしゃい!」



店内に響き渡る声。ああ、忘れもしない元気な声。もちろんあたしは竜の後ろに隠れてクマと顔を直接合わさずにすんだけれど、あたしだって事に位は気づいてる。
チラっと見てみると、こおメンツに少し驚いた表情だった


「おぉ!!ヤンクミ!どうしたんだよ!」
「クマ!元気そうだな!実はな、」


2人で話してる間に,横に居た竜の影に隠れて,一番目立たない席に座った。
竜は、こんな必要以上にコソコソするあたしに気付いているのか気付いてないのか解らなかった。


,注文は?」

「チャーハン」

つっちーに聞かれて、とっさに答えてしまったチャーハン。熊井ラーメンはラーメンもおいしいけどあたしはクマの作るチャーハンが一番好きだった。まだあたしが白金にいて、みんなと仲良かったころ、みんなで食べにきてはあたし一人だけチャーハンを頬張ってた記憶がある。

ちらりと厨房のほうを見れば山口とクマがすこし真面目な顔をして話してる。
何はなしてるかすごく気になる。きっと、あたしのことだと思うから、余計に気になる。



「まさかヤンクミがの担任だったとは・・。ちょっと安心した。」
「なあクマ。、変わったと思わないか?」
「俺も、そう思ってたんだ。冷たくなっ、た。」

二人はのほうを見たが,1度も笑いも話しもしない。まわりが盛り上がってる中一人つまらなさそうに携帯をいじる。だからといってその場の空気が壊れてるわけでもない。
きっとはもとからそういうキャラで、そのポジションであることをみんなが理解しているんだろう。

でも、あの頃とは全く違うになってしまったのだろうか??










他の3Dとメールをしているときに
電話が鳴った。でも、あたしのでも隼人や日向の着うたでもない。
音をたどればそれはクマので、クマが電話に出たのを見てから視線を向けるのをやめた。


「おぉ!久しぶりじゃねえか!元気してたのかよ!」

いきなりくまの声色が明るくなった。

こんなに楽しそうな声で「久しぶり!」といえば、もうあいつらしかいない。
あたしは電話相手がわかってしまった。
ま、さか・・・。

「おうおう!うっちーも野田もいんのかよ!同窓会じゃねえか!」

笑いながら言うクマが気になった。携帯でメールを打ちながら話を聞いていると、動揺せずには居れなかった。うっちーって名前が出てきただけでも冷や冷やするのに。電話の向こうに野田も、いる。って事は必然的に電話の相手は南かも。

「え、今か?実は今よ、店にヤンクミとかも来てんだよ!」

クマの口からあたしの名前が出てしまった。なんで、あたしのこというの!
しかも、それを聞いてたのか竜が「何でが関係あるんだよ」といいたそうな目であたしのこと不思議そうにこっち見た。
その視線にはあえて気づかないフリをしてみるけれど、それにもきっと竜は気づいている。

「え?今から来るって??おぉ。全然かまわねェぜ!
おぅ!待ってるぜ!早く来いよな!」



電話を切ったクマに対してヤンクミが「なんだ!内山達くるのか〜!?」と凄くうれしそうにした。

まさか、とは思ったけれど今から来るだなんて、どうしよ。

「あぁ!慎も来るってよ!」

え、まじっすか。
なんだか一気に体中の血の気が引いた気がする。

慎が来る?
鉢合わせになったら、絶対にまずい。
うっちーや野田と会ったならまだ逃げ切れるけれど慎はそうはいかない。

逃げたって諦めずに追いかけてくる、そんな気がした。




でも、なかなか帰れそうな雰囲気にない。
早く帰らないと、慎たちに会ってしまう。

数分の間、そればかり考えて、本当にもう時間的に限界ギリギリまで来てしまった。
ちょっと盛り上がってるところ悪いんだけど、ああし、そろそろ帰らないと。
もう、ついちゃったらあたし命危ないよ。

「んー、そろそろ帰ろうかな」
「んぁ。もう帰るの〜?」


あたしの言葉に隼人がすかさず返事をする。

「うん、ちょっと疲れた。」

ふ〜ん、とでも言いたそうな顔をした後隼人も立ち上がり
「じゃ。俺こいつ送っていくわ。」
と言い出した。

「ばいにゃーん!」
「気付けてな」

各自何か言ってたと思うけどあたしはそれを1つずつ考える余裕なんてなかった。
とりあえず、早くここから離れたい。

「じゃ、行こうぜ!」

隼人がクマに挨拶してるから、あたしは先に出て行こうと入り口に向かって歩いた。

本当、はやくここから離れたいのにどうしてなかなかスムーズに行かないんだろう。
なんだかやるせない気持になってきてうつむいてため息を吐き戸を開けると思い切り人とぶつかった。

足元を見ると若そうな男の足が4人分。
あぁ遅かった。間に合わなかった。さいあくだ。



「いってぇな!!て、め・・・え?」

ものすごく聞き覚えのある、だけれどもとても懐かしい声が聞こえた。
あぁ、ちょうど下向いてたのに、バレたかも。
チラっとそっちをみれば、野田、うっちー、南は驚いている。ただ、慎だけが、冷静で。


どうしよ、



「すいません、急いでるので、それじゃあ。」


すこし低めの声でそう返して4人組とは逆のほうから隼人を振り返り、行こ、と左手で彼の服を引っ張った。

「お、おう、」
あたしの事を見てなんだか驚いてる4人組を不思議そうに見てあたしに引っ張られる隼人。

このまま、どうか、帰らせて。

そう思ったのに右手をつかまれた。
思わず振り返った先には、すこし機嫌が悪そうな、最後に見たときよりもいくらか大人びた慎がいた。



逢ってしまった


(最悪だ)(だけど、なんで嬉しいの)