居辛くなって、走って逃げたあたし。


あーあ、せっかく竜と隼人が仲直りしたのに雰囲気・・・潰しちゃったな、悪いことしたなぁー。なんて思っていまさら少しだけ後悔してみたり、竜と隼人の次はあたしとヤンクミ?・・・あたしボロ負け確定ジャン。だっさい・・・。


怒鳴ってしまったことは悪いと思うけど。いまさら過去のことは出さないでほしかった。というよりもなんでこんなんなったのか、とか何も知らないくせに謝りもしないで平然としてるのが許せないよ!


昔は昔はーってこっちの気持ちも知らないで。あの時どんなけ淋しかったか全然解ってない!昔を思い出すと楽しかったはずのことでも嫌なことばっかりに思えてきて仕方がない。思い出すたびに悲しくってみじめなのに!


3Dにいい奴が誰一人としていなかったらあたしはヤンクミが担任になった時点でもう退学してたと思う。





商店街に入ったところで走る足をとめ、考えながら歩いた。これからどうしようか、もう家に帰ろうか、な、
「はぁ、」と深いため息をついたと同時くらいにちょうど横を通り過ぎた男集団から「・・?」とか「え?あれじゃん!」とか後ろのほうから昔飽きる程毎日聞いた声が聞こえた。


忘れもしない.その声に、一瞬金縛りがかかった気がした。
嫌な予感して、足は止めず歩きながらそーっと一瞬振り返ってその声の持ち主達の顔を見た。

顔が引きつった。



すげぇ笑顔なうっちーと野田。顔を見るのは1年半ぶり。少し大人びていて、落ち着いていて、安心したと同時にあたしの頭の中では本能的に『逃げろ』と信号が出された。

目が合ったけど、すぐ目をそらし,前を向いた。合わす顔なんて無いと思い帰ろうとしたが、久しぶりジャン!と友好的な笑みを向けてきたのであわてて逃げた。





「最初見たとき、クマの言ってたこと嘘じゃねぇかって思ってたけど、さ。」
そう、うっちーが悲しそうにつぶやく。横で野田も同意するかのよう悲しそうに無言で頷く。

「明らか変わったよな。なんか、見た目とかじゃなくって」
「今までだったら絶対飛びついてきてたのによ」
「・・俺らが何したって言うんだよ」

久しぶりに会った大事な仲間に逃げられた、という寂しさと、腹立たしさが二人を支配した。






「さいっあく」

二人が負ってこないのを確認して、また歩き出す。

逃げなきゃ良かった。絶対あの二人怒ってるよ。携帯なんて潰れてて連絡できませんでしたーって一言言えば何とか戻れたかもしれないジャン。
なのになんでチャンス逃しちゃったの?


涙があふれてきて止まらなかった。きっとこの涙は、悔し涙っていう奴かもしれない。



もう、いいや。


昔は昔、今は今。
あのときは、あたしには白金3Dっていう大切な仲間が居たという過去だ。

今は黒銀3Dっていう大切な仲間が居る。それに変わりはないから。









次の日は普通に学校に行くことにした。いつもみたいに普通に接すれば良い、よね。


そうだ。竜だって学校来てるんだ.楽しいじゃない。前みたいに戻れるんじゃない、だから、あたしが浮かない顔してたら台無しだよ、ね。



でも、昨日の怒鳴ってたこと聞かれませんように――――
事情を話せるほど精神面は強くないよ。




いつも通り教室に入ったら、隼人達の中に,竜も居た。二人は仲よさそうしていて、ニヤけそうだったけど無理に引き締めた。でも、本当に嬉しいよ。



。おはよっ」と、タケが犬みたいに来る。それがまた可愛くて。本人に言ったらぜった怒るだろうな。
「おはよー」あたしも言い返す。



いつも通り隼人の横の席に座って、今日は、話に入らずに机に突っ伏せて寝る。


暫くしたら、そんなあたしに隼人がもたれかかってきた。きっと隼人なりの気遣いなのだろう。

「隼人、まじ重たい」
も喋ろうぜ?なんか寂しい」
「!、わかったよ、だからどいて。」

隼人の言葉に少しだけ驚いて、少し微笑んで後ろを向き、皆との輪の中に入ってトランプ(ばば抜きに混じった.


「寂しい」って言ってくれたのがさりげなく嬉しかったので,トランプをする最中も、ずっともたれかかった隼人の頭をのけずにそっとしておいた。






せっかく楽しんでるのにチャイムと共にやってくるあいつのせいであたしは不愉快極まりない。「おっはよー」なんていい年こいちゃってさ。



あたしはそいつを睨んだら、目が合ってしまったので、もたれかかってる隼人には悪いけど、立ちあがり出て行こうとした.立ちあがった(隼人は少し驚いたけどすんなりどいてくれた)瞬間、5人は不思議そうな目であたしを見て「あれ?。何処行くの?」とつっちーが聞いてきたので いつものとこ、とだけ返しておいた。



教室を出たら、中から「俺も行こうっと」と、いう隼人の声で竜、ツッチー、日向、タケも立ち上がった。





屋上についた6人組。





さ、」

ボーっとしてたらタケがこう言った。なんだかきまずそうだったからか、いいたいことはなんとなく解る気がしたので、「なあに?」と聞き返した。



「あの山口って奴とどんな関係が有るの?」


あぁ、やっぱりこの質問になったか。関係、関係?昔の教え子。あたしを裏切った大人。だけど、あたしが一番好きだった大人。


「関係って・・いわれても」

結局、どれを言えばいいのかわかんないし言ったところでなにになる?ということで、答えは濁らせる事にした。



「初対面って言ってたけど、全然そうには見えないし」

「この前,昔がどうのこうの言ってたけど,昔からの知り合い?」

「山口見ると機嫌悪くなるよな。他の先公みても普通なのに」

とか、皆それぞれ口に出す。竜だって無言だが知りたそうな顔をしているし、隼人にいたっては「・・・俺らには言えないわけ?仲間なのに。」と機嫌を悪くし始めた。(たすけてー)



なんだか気が重くなってため息を吐く。
今は言えないよ。胸の辺りがモヤモヤしてるから、いえない。だから、もうちょっとまってよ。とあたしが言うと沈黙が流れた。

暫くして
「よし。がそういうなら待ってやるよ。」
と隼人が言ってつっちーも、そうだよ俺たち無理に聞こうとしねえから、と笑ってあたしの頭をくしゃっとした。
ありがとね、と一言言うと、皆はいっせいに笑顔になった。




「さっ!遊びに行きますかー!」

その場の空気を切り替えるようにタケが言ったので、皆が立ち上がった。




「ねぇ皆」


前を歩く5人に話しかけると「ん?」って顔で5人一斉にこっちを向いた。
あたしが口を開くのを待っている。


「あたしを一人にしないでね、」


そういうと、皆は顔をあわせて笑い、代表で隼人が

「あたりめぇじゃん。バカなこというな!」と笑い、タケも
「そうだよ。俺ら仲間じゃん??」



って言ってくれた。


それが本当に嬉しくて。



心の傷が少し癒えた気がした。
(安心させて、おねがいだから)